中間講評の際、同じ油類でも特性よって用途を分けるべきだという指導を受けた。

また、同様に同じ膠でもゼリー強度の違いによって使用目的が変わることにも言及があった。

私はこの話を受けて、「同じ樹脂と分類される素材にも、同様の視点が当てはまるのではないか」と考え、調査を試みた。

 

アロマテラピーの世界には、防腐効果を持つ芳香植物が多く存在する。

なかでもスパイクラベンダー油は精油でありながら、油彩画の揮発性溶剤としても古くから利用されてきており、

画材と芳香素材の協会が曖昧なところがある。

今回焦点を当てたのは、天然樹脂のなかには、

キリストの三賢者の贈り物として知られる「フランキンセンス(乳香、カンラン科ボスウェリア属の樹木)と

ミルラ(没薬、カンラン科ミルラノキの樹脂)」がある。

アラビアゴムと同じ天然樹脂のように植物展色材に応用できないか調べてみた。

 



アラビアゴム(アカシア樹脂)は多糖類が主成分とし水と親和性があり

水を吸って膨らみ粘度を持ち絵画の展色材として古くから活用されてきた。

 

一方、ミルラは、セスキテルペン炭化水素類(フラノオイデスマ-1,3-ジエン、クルゼレン、リンデストレン)や

樹脂アルコールが含み、水と親和性がなく、アルコールや揮発性溶剤に部分的に溶ける性質を持つ。

つまり、「どちらも天然樹脂である」という分類は共有していても、

化学構造も用途もまったく異なるということが分かる。

 

これは、中間講評にて椿油とえごま油がヨウ素価の違いにより

箔あかしに使用する際には注意が必要という指導と同様の、

「同じカテゴリに属するからといって、画材として同等に扱えるわけではない」という、

基礎的かつ重要な事実を改めて確認した。

 

私がミルラに注目したのは、

アロマテラピーの研究過程で手に入れた素材を画材に転用できないかと考えたことが発端である。

ミルラは、古代に防腐剤としてミイラ保存に使用された実績はあるが、

これは芳香成分による抗菌によるもので、展色材としては不向きだということが分かった。

 

ミルラを使用したい場合は、

アルコール抽出によるチンクチャー(チンキ)を作成し、

既存の展色材に数滴添加する方法でアプローチするのが面白いかもしれない。

こうした芳香植物の知識と絵画材料の融合には、まだ見ぬ表現可能性が秘められている。

それらを繋ぐ接点としての芳香植物の活用は、今後さらに研究を深めていきたいテーマである。