「時薬(ときぐすり)」という言葉、聞いたことはありますか?
つらかった心の痛みや、なかなか言葉にできない感情を、時間が少しずつやわらげてくれる――
そんな意味を持つ言葉です。
似たような表現で「日にち薬(ひにちぐすり)」という言い方もありますが、
とくに心の傷には「時薬」と言われることが多いように思います。
なんだか、響きがよいですよね。
しかし、この「時薬」、すぐには効いてくれません。とてももどかしいものでもあります。
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しんどかった出来事を、心の奥でずっと考えていると…私たちは気づかぬうちに、過去に縛られてしまいます。
未来に向かって一歩を踏み出す力さえ、奪われてしまうことも。
「今」を生きているはずなのに、
心が「過去のつらさ」にとらわれてしまって、
今この瞬間さえ、マイナスの感情に占領されてしまうのです。
それって、ほんとうにもったいないなあ、と私は思います。特に年齢を重ねて、生きている時間の貴重さを感じるほどに。
実は今日、私はある場面に立ち会いました。
10年ぶりくらいに再会した2人が、言葉を交わしている場面です。
ある時期、関係がこじれてしまってしまい、全く会うこともなくなっていたのです。
思いがけず再会した2人は、意外なことに自然に会話をして、少しずつ少しずつ、距離が縮まっていくのを感じました。
なんとも言えない、不思議な空気が流れていました。
「あぁ、こんな日が来るんだなぁ」
静かに、でも確かに――「時薬」が効いていたのかもしれません。
一方で、こんな方も知っています。
10年前の出来事で、心が傷つき、いまだに癒えないまま。ずっと同じつらさや出来事を繰り返し語っている方。
そのたびに心が過去に戻り、
今という時間まで、悲しみに包まれてしまっているように見えます。
何とかしてあげたくても、どうにもできない。
それもまた、とても残念で、今という時間が、
「やっぱりもったいないなあ…」と思います。
「時薬」は、ただ時間が経てば自然に効く…というものではないのかもしれません。
少しでも早く効かせるためには、
―「今に集中すること」。
過去に引っ張られず、未来を不安がらず、
「今、私はどうしたい?」
そんなふうに、“今”を丁寧に感じてみること。
そしてもうひとつ。
無理に前向きな言葉にしようとしなくていいので、せめて“中間の言葉”を使ってみてほしいのです。
たとえば――
「なんとかなる」「大丈夫かも」
そんな、ふわっとした“フラットな言葉”でもいいんです。
マイナスに引っ張られないことがポイントです。
時薬――
それは、その人の「時の進み方」によって、最適なタイミングで効いてくるのかもしれません。
早く前を向ける人もいれば、ゆっくり時間がかかる人もいる。
どちらが良いとか悪いとかではなく、
「その人のペースで進めばいい」のです。
だからこそ、もし今、しんどいなあと感じている方がいたら、
「こんな日が来るなんて!」って、思う日がくるよと。



