『バーニー・サンダース氏 (Bernard “Barnie” Sanders)』
『サンダース氏」の記事は、『ペトラ』の記事から続いています。
2016-06-14 11:43:43
『幻の旅路』を読む 第3章-8 スペイン・ペトラ
テーマ:素人学者さん 『幻の旅路』を読む)
このような社会の貧困の格差、不平等さに対して、とても敏感に反応し、今回アメリカの大統領選挙の際にそんな社会を改革しようとスローガンに掲げた人物がいます。
民主党候補者のバーニー・サンダース氏です。
彼はバーモント州バーリントンの市長に選ばれ、その後、下院議員を経て、上院議員に選ばれます。
彼は、元々は無所属ですが、今回は民主党で出馬しました。
ボサボサの白髪を風にまかせて熱意ある演説をしている74歳のおじいさんです。
夜のトークショーで、司会者に一番大切なものは何ですかと聞かれたら「7人の孫たちだよ」と目を細めて答えていました。
彼の両親は、ナチを逃れてアメリカに移民してきたユダヤ系ホーランド人です。
ニューヨーク・ブルックリンの狭い貸しアパートに家族4人が住んでいたそうです。
大金持ちのうちに生まれ育った共和党大統領候補のトランプ氏とは対照的です。
私はサンダース氏の名前をいままで聞いたことがなかったのですが、クリントン氏との討論会で彼の真摯(しんし)な、そして過大表現をしない端的なわかりやすい話し方にとても感銘を受けました。
彼がいままでどんな活動をしていたか、バーリントン市長時代にどんな活躍をしていたか、なにせ遠く離れた東海岸のことですからまったく知りませんでした。
経歴を見てみたら、彼は市長になる前に、大工さんや映画を作ったり、書物をしたりしています。
そして、何回も落選を経験しています。
イギリス系の『ガーディアン』という新聞に、彼が若い頃、人種隔離(かくり)の政策に反対して、警察官に両腕を捕まれ引っ張られている写真が載っていました。
豚箱に入れられるのも恐れない活動家です。
『ガーディアン』そして、『デモクラシー・なう』という新聞は彼の人物や活動をとても高く評価して、取り上げています。
日本語版のニュース 『デモクラシー・なう』http://democracynow.jp/
イギリス系のニュース 『ガーディアン』http://www.theguardian.com/us
サンダース氏は大学卒業後、イスラエルの『キブツ』で数ヶ月過ごしたこともあります。
彼はユダヤ系ですが、イスラエル一辺倒ではなく、イスラエルの行き過ぎたパレスチナに対する政策を批判できる人です。
アメリカの政治家のなかで、はっきりとイスラエルの超タカ派ベンヤミン・ネタニヤフ首相を批判できる人は他にいないと思います。
サンダース氏は若い時から「格差をなくして、一般の人々が政治に自分たちの声を反映できるような平等な社会をつくろう」と、その政治的見解を一貫して通し続けてきました。
今回の選挙活動でもそれを一番のスローガンにしています。
クリントン氏もトランプ氏もともに国民の1%の富裕層に属する人たちですが、サンダース氏はアメリカの政治が、その1%に当たる大金持ちが支配し、影響を与えているといっているのです。
そんな矛盾した不平等な現実に対して、彼は強い怒りを持っています。
それが彼の社会的、政治的改革の原動力で、彼の情熱はそこから生まれてきています。
貧しい人たちに目を向けて「最低賃金を時給15ドルにしよう」とか、「男女平等の賃金にしよう」と提案しているのも彼です。
また全国の公立大学の授業を無料にしようというのも、能力はあっても経済的な理由で進学できない若者たちを頭に入れて出てきた政策の1つです。
またすべてのアメリカ国民が医療の保障を受らけれるような政策も掲げています。
地球温暖化の問題にも力を入れています。
サンダース氏を紹介する『道徳と正義 (Morality and Justice)』という4分ほどの短い動画があります。
そのなかでは、次のような力強い言葉が綴られています。
『あらゆる人々が、どんな人種や宗教、障害、性的指向であろうとも、生まれながらにして十分保証されているアメリカ国民としての平等の権利を享受できる国にしましょう。
みなさん、私たちはそのような国を作ることができるのです。
ともに立ち上がりましょう。
人々を分裂させてはなりません。』
彼はヒラリー氏のように大金持ちや俳優、大企業からのお金は一切受け取りません。
4月に開かれたクリントン氏の選挙資金集めの晩餐会(ばんさんかい)では、クリントン氏と俳優ジョージ・クルーニー夫妻の3人のテーブルに座るには、参加者は2人で353,400ドル(約4千万円)の献金をしなければいけませんでした。
サンダース氏は、ウォール・ストリートでの1回の講演会で何万ドルという礼金をもらったり、1人何万ドルもする晩餐会を開いて、選挙資金を集めたりしているクリントン氏とは対照的です。
彼の場合、すべて個人の寄付金のみで選挙戦を戦っています。
平均の献金額は27ドルとかいっていました。
私も政治献金するのは今回が初めてですが、サンダース氏の熱意と情熱にまけました。
たった100ドルですが、2回に分けて送りました。
毎回テレビで禿げた頭を真っ赤にして熱弁をふるっている彼の選挙活動を見るたびに、献金したい衝動にかられました。
が、私の場合、アメリカの年金は毎月627ドル、日本からの厚生年金は2ヶ月分で80ドルにも満たないので、再度送りたいのは山々でしたが、我慢しました。
サンダース氏とクリントン氏の討論会を見ていた時に、とても気持ちが良かったのは、サンダース氏はトランプ氏のように個人攻撃はしない政治家でした。
トランプ氏は同じ共和党の政治家に対しても、ここに書くのも恥ずかしいくらいひどく下品な言葉や方法で個人攻撃をします。
クリントン氏に対しても、彼女の夫・元大統領ビル・クリントン氏の不倫のスキャンダルを取り上げて非難したり、Eメールの問題に触れたりと、肝心の政策については真っ向から討論していません。
クリントン氏とサンダース氏の民主党討論会では、お互いの政策の違いについてのみ討論を続けていました。
アメリカの大手メディアは、トランプ氏が毎晩予想もつかないツィートを公開するので、そのニュースをカバーするのでいっぱいです。
センセーショナルというか、呆れるような内容ばかりです。
トランプ氏の奇行、暴言、無知さなど、細かいところまで日本のメディアは追っていないようですが、アメリカ中に『白人至上主義』のトランプ氏を支持する人たちがたくさんいるということはとても危険で恐ろしいことです。
そして信じられないことですが、彼が共和党の大統領候補に選ばれたのです。
「これは悪夢以上に、恐怖以外の何者でもない」と、『ガーディアン紙』は語っていました。
6月7日のカリフォルニア州予選は、世論調査ではサンダース氏が勝つかも知れないといっていました。
私は長年アメリカに住んでいますが、アメリカ憲法の「武器を持って戦う」という法律がどうしても受け入れることができなくて、市民権を取るのを拒んでいました。
ところが、自分の声を反映するにいは選挙に参加しないといけないとわかり、渡米40年後にやっと市民権を取りました。
大統領選挙に参加するのはこれで2回目です。
私も夫も、そして娘も、奇跡を祈って、彼にそれぞれ1票ずつ入れたのですが、見事、クリントン氏に負けてしまいました。
もともとサンダース氏はクリントン氏に比べてひどく不利な立場でスタートしています。
クリントン氏は 、 他の人が立候補しない前に 、すでにスーパーデレゲート(特別代議員)を 4 ~ 500 人先に確保しているのです 。
それにクリントン氏は1978年から夫ビル・クリントン氏がアーカンソー州知事に選ばれたので、州知事のファーストレディーになっています。
また、第42代の大統領になったビル・クリンントン氏の妻として、1993年から2001年までアメリカ合衆国のファーストレディーでした。
2008年の大統領選挙戦にはオバマ候補と戦っています。
2008年11月には、オバマ次期大統領から国務大臣に指名されました。
その後は、上院議員を務めています。
彼女の長年の政界での活躍ぶりは、アメリカ中、いや世界中に知らない人はいないでしょう。
ところが、サンダース氏はアメリカでも一般の人たちがいままで一度も聞いたことのない政治家です。
クリントン氏の知名度は、一匹狼的な存在で活動していたサンダース氏とはまったく比較にならないのです。
これではサンダース氏がいくら 頑張っても勝ち目はありません 。
ご存知かもしれませんが 、 アメリカでは前もって、自分が支持する党を登録しないと選挙に参加できません 。
サンダース氏を支持している人たちは無所属が多いのですが 、今回彼は間際になって民主党で立候補しました 。
ニューヨークなど東部の州では 、 彼を支持していても 、 昨年の9月か10月までに民主党に登録しなかったために 、 彼に票を入れることができませんでした 。
トランプ氏の娘さんの1人も自分の父親に票を入れることができず、サンダース氏の娘さんもお父さんに投票できなかったと書いてありました。
日本では信じられないでしょうが 、 クリントン氏はあまり好かれていません 。
いままでの大統領候補の中で一番嫌われているのが 、トランプ氏とクリントン氏といっています 。
なんとその2人が共和党と民主党の大統領候補なのです。
私はいままでは女性が大統領になったら世界が変わるかもしれないと期待して、クリントン氏が民主党の大統領候補になればいいと願っていましたが 、彼女の献金の仕方や 過去のスキャンダルを知って 、支持するのを止めました 。
彼女は共和党ほどではありませんが、民主党の中では最も好戦的なタカ派の政治家とされています。
しかし、共和党のトランプ氏が大統領なったら 、世界はもっと敵が多くなり 、 戦争が多くなるでしょう 。
核を持つ国がもっと増えるでしょう。
地球温暖化はますますひどくなるでしょう。
米国有数の圧力団体『全米ライフル協会』はトランプ氏を支持し、彼も「憲法上の銃権を断固として守る」と誓っています。
そんな彼が大統領になったら、銃の規制がもっと緩やかになって、アメリカ国内で銃を持つ人たちがもっと増えるでしょう。
昨日(6月12日)起こったアメリカ史上最悪の『フロリダ乱射事件』のように、銃による銃殺事件がもっと増えるでしょう。(注1)
国と国の間には閉鎖的な壁が作られ、国際平和を築く『かけ橋』は作られません。
お互いに憎しみ合いが増え、不信感が増し、いろいろな差別がもっとひどくなるでしょう。
憎しみからは憎しみ以外のなにものも生まれてきません。
軍事に詳しいがミリタリーの高官が『チャーリー・ローズ』のインタビューの際に次のように危惧(きぐ)していました。
「数秒を競う決断を迫られる『核兵器の使用』は、常に冷静な判断を下せる大統領が必要とされています。
トランプ氏は外交政策にまったく無知です。
その上、彼の性格は感情だけで左右され、前後の見境もなく、その場その場の瞬間的な判断しか下せません。
そんな人物が大統領になるのはまったくふさわしくありません。
それどころか、とても危険です」と語っていました。
簡単に『核戦争』が始まることはどうしても避けたいので、11月の本選挙の際は、不本意ですが、私はクリントン氏に票を入れると思います 。
サンダース氏は民主党大統領候補には外されましたが、それでも自分の信念を貫き通すために、7月の党大会まで走り続けると熱狂的な支持者に誓っています。
まるで『ドンキ・ホーテー』のように、不可能な夢を追い続けている彼の姿に同感する若者たちが多いのも頷けます。
選挙戦をスタートした時はすぐ消えてしまう『泡つぶのように一瞬にして消えていく候補』と評されていたに、ここまで戦い抜いた彼の健闘ぶりは高く評価されていいはずです。
1%の金持ちだけが得をするいまの社会構造を徹底的に改革しようとし、「金のかかる政治」を変えようとしたサンダース氏の一生をかけたスローガンは多くの学生たちや貧しい人たちの共感を呼びました。
そして、「革命をおこそう」と叫んできた彼の一貫したメッセージは、今回の大統領選を超えて、さらにもっと大きな『波のうねり』をうみだし、広がっていきました。
私服を肥やすのに忙しい、エゴや欲望の塊のような『政治屋』が多いなか、彼のように色々な面で恵まれない人たちを対象にした政策を打ち出している誠実な『政治家』が再び現れるのはいつのことでしょうか?
私が30年以上も前にマドリードで出会ったドイツの女子大生ペトラやサンダース氏は、社会の格差、不正や不義に対して純粋な怒りを持っていて、それを少しでも改善しようと思っている人たちです。
サンダース氏の誠実な人柄や74歳とは到底思えない熱意とエネルギー、知性やユーモア、社会改革など、世論調査によると、彼は一番好かれている大統領候補です。
そんな人物が大統領になれないのはとても残念ですが、彼の貴重な働きはきっとこれからの世の中を少しは変えてくれるでしょう。
少なくとも一般の人々の意識が、世の中の不平等や不義・不正・矛盾にもっと敏感なったと思います。
そう望んでいます。
(注1)
フロリダ州オーランドで6月12日に起きた銃乱射事件は、米大統領選にも大きな影響を与えるでしょう。
共和党のトランプ氏はいままでイスラム教徒の一時入国禁止を主張してきました。
今回の事件を通して、彼は改めて自身の主張を正当化し、イスラム系移民の受け入れを厳格化する考えを示しました。
民主党のクリントン氏は性的少数者への差別撤退(てったい)や銃規制の強化を唱えています。
『モハメド・アリ』
人種差別と戦い、ベトナム戦争参加を拒否し、そのためにリングから追放されたボクシングのチャンピオンです。
彼は1964年に『イスラム教』に改宗し、モハメド・アリと改名します。
パーキンソン病と診断され、長い闘病生活を送っていましたが6月3日に他界しました。
死ぬ間際まで、戦争反対、階級や人種問題、宗教問題などの社会の様々な問題と戦うのを止めませんでした。
1960年代、彼を『非国民・裏切り者』と非難していたメディアや社会は、今回彼の訃報に接して、すべてを超越したヒューマニスティックな『英雄』と賞賛していました。
時代がモハメド・アリの『本当の価値』を認めたのです。
私の尊敬する人物の1人です。
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