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1週間ほど前ですが、こちらのニュースをご覧になって衝撃を受けた方も多かったのではないでしょうか。
▶【アメリカ】英ロイター、J&Jのベビーパウダー・アスベスト混入訴訟で、同社は事前に把握していたと非難
色んなニュースサイトがこぞって記事にしたので各々読んだ媒体が違っているかもしれませんし、
細部の記述が色々違うので受けた印象も違うかもしれません。
SNSでも広く拡散されてしまったので内容が誤って伝わっている部分もあるのではないかと思います。
こちらの記事で説明されているのは掻い摘まんで言うとこんな感じです。
- 米J&J(ジョンソン・エンド・ジョンソン)のベビーパウダーにアスベストが含まれていて卵巣ガンを引き起こしたという裁判が続いている。(7/12に一旦J&Jが敗訴しているがその後控訴)
- この裁判に関してロイター社が独自に資料を集め、J&J社が1970年~2000年前半ごろに原料のタルクや加工後のベビーパウダーに少量のアスベストが含まれていたことを把握しながらこの情報を公にしていなかった、と報道した。
- J&Jはこの報道に対して同社のタルクとベビーパウダーの安全性は科学的に証明されていると主張。
つまり「ジョンソンエンドジョンソンのベビーパウダー」に発がん物質として有名な『アスベスト』が入っていた疑惑が持ち上がっているということです。
国内製品だと以下の製品になりますが、
もしかしたら普通にご利用中の方もいるかもしれません。
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本日はこの一件に関して、
ベビーパウダーのアスベスト混入の原因と、
現在国内で流通しているものやこれまで使用してた利用者にとっての安全性はどうなのか?
というお話をまとめていきたいと思います。
◎ベビーパウダーにアスベストが混入するのはなぜ?
ご存じの方はご存じかもしれませんが、
今回と似たニュースが報じられたことが10年ほど前にも一度ありました。
▶韓国:ベビーパウダー11製品からアスベスト検出
2009年に韓国で販売されていたベビーパウダー11製品から「アスベスト」が検出されたというニュースは結構有名ですね。
これは中国産の同一の原料を輸入していたメーカーの製品から検出されたということで、
原料になっている『タルク』という成分が、
アスベストを含有する「蛇紋岩」という岩石と一緒に地中に埋まっているため
採掘の方式や埋まり方によってはタルクに紛れてアスベストが入ってきてしまう…ということなのです。
『アスベスト』とは『石綿』とも呼ばれる鉱物で、
古く建築用の建材や家庭用製品などに広く利用されてきました。
タルクとは化学組成はほとんど同じ水酸化マグネシウムとケイ酸塩で出来ているのですが
特徴的なのがその「形状」で、以下のような微細な繊維状の形状をしてます。
アスベストの繊維1本は直径0.02-0.35 μm(髪の毛の5,000分の1)程度ともの凄く微細な鉱物です。
このせいでアスベストは長期的に粉塵を吸入すると、肺などの組織に取り込まれて様々な健康悪影響を生じることが指摘されます。
特に「中皮腫(胸膜に発生するガンの一種)」などのガンの発生率を劇的に上昇させる特性があり、
非常に有名な『発がん物質』として広く認知されています。
ベビーパウダーは「タルク」を多く配合する製品のため、
このアスベストの混入が古くから疑われてきました。
◎日本でのアスベストの規制状況は?
そしてこれは今に知られたことではなく、
日本では2006年に厚生労働省管轄で国内のタルク製品を一斉捜査して
▶石綿を含有する粉状のタルクの製造、輸入、譲渡、提供又は使用の禁止の徹底について
アスベスト(石綿)を含むタルクの製造・輸入・譲渡・提供または使用の禁止を徹底してきました。
この試験の結果やその後の規制状況を考えれば、
日本国内で流通していたタルク製品の場合はまず安全だったのではないか
と考えることができます。
しかし件のジョンソン・エンド・ジョンソンのベビーパウダーは、
2006年以降も日本で普通に販売されており、
世界的にもベビーパウダーのシェアが非常に高い製品です。
こちらを利用してた消費者の安全性は一体どうなのか…?
それについて気になる人も多いことでしょう。
◎実際のところ、J&Jのベビーパウダーにアスベストは混入しているのか?
まずは結論から。
これはあくまで僕の個人的な見解なのですが、
少なくとも最近のジョンソン・エンド・ジョンソンのベビーパウダーにはアスベストは含まれておらず、問題なく安全に利用できると考えられます。
なので、今使用している人もこれから使用したいという人も、
またここ10年間程度使用していた人も、発がん性などに関しては心配する必要はないと言えます。
あくまで推測の域は出ませんが、ここ最近(特に10年前くらいまで)に関してはほぼ確実に安全性が確立されているものと考えられます。
というのも、
例えば先ほど紹介した2006年の韓国アスベスト問題の際に、
韓国の食薬局がJ&Jの製品も検査していて、
ジョンソン・エンド・ジョンソンとアガバンが作った18製品からはアスベストが検出されなかった。
という結果を出しています。
日本が2009年に行った試験でも、
どの製品がどれとは名指しでは書いていないのですが
国内最大のシェアを誇るJ&J社のベビーパウダーをサンプルとして使用しなかったとは考えにくいため
まず間違いなくこれも試験していたと考えられます。
ゆえにここ10年くらいの間の製品については安全性は確実(特に国内流通品)であり、
現在流通しているものも、
もし本当にアスベストが入っているなら裁判中に第三者機関が当然のように調べていて
世界的に回収騒動になってもおかしくありません。
だから今使っている人も当然安全に利用できます。
ただし、
数十年前ともなると、これがなんとも言えない部分があるのです…。
今回のJ&Jの裁判も、原告は最近のベビーパウダー利用者ではない、というのが肝です。
◎J&Jのベビーパウダー問題は最近の利用者からの訴訟ではない?
今回の裁判をもう少し詳しく紐解くと、
J&J社は実は何年(何十年?)も前からこの「ベビーパウダーアスベスト混入問題の訴訟」を繰り返してきました。
最初の訴訟がいつかは定かではないですが、
2018年の初頭で既に6610件の同様の内容の訴訟があり、その後7月には約9000件に上っていたようです。
6610件とはとんでもない数ですが(^^;)、まぁアメリカは訴訟大国と言われる国ですからね…。
実はこれまではJ&J社はこのいずれの裁判でも負けて居らず、勝ち続けてきたのです。
というのも、
先ほども述べるように現在のベビーパウダーはどれだけ調べてもアスベストは出ないでしょうし、
そもそもアスベストは吸入することで最も発がん率を上げるため、
皮膚塗布の場合だとそこまでリスクが高くないのです。
またこれらの訴訟は「幼少期に使用していて大人になってガンになった」という人がほとんどで、
何年~何十年も前ともなるとその因果関係を科学的に証明することができません。
ゆえにJ&J社が「アスベストが混入していた」ことを公に認めない限り敗訴することはまず考えにくかったわけです。
それが今年の4月に一転して、
J&J社がはじめてベビーパウダーのがんリスク訴訟で敗訴したのです。
ベビーパウダーを使って中皮腫を発症したという男性に。、3700万ドルの支払いを命じる判決を下したというもの。
そしてその後7月にもまた続けて敗訴。
▶【アメリカ】J&J、ベビーパウダーに含まれるタルクを巡る裁判で再び敗訴。約5300億円賠償命令
これは何が起こったのかというと、
原告側が攻め方を変えたようです。
判決の理由が「ユーザーに製品使用に伴うがんの発症リスクについて警告するのを怠った」というもので、
入っていたか入っていなかったか、また発がんのリスクがあったかなかったか、というより
「警告していなかった」という理由での判決になってしまったようです。
これ、日本ではまず勝てない裁判だと思うのですが、
アメリカでは昔からこういうのが多くて、
雨に濡れた猫を電子レンジで暖めたら死んでしまったという事例で
電子レンジメーカーが「猫を暖めてはいけない」と警告していなかったという理由で敗訴してしまう
という特殊なお国柄なのです。
アメリカは生粋の陪審員制度の裁判をやっているので、
科学的エビデンスが証明されなくても陪審員の心に訴えかければなんとかなることが結構あるんですよね(^_^;)
これ1回敗訴してしまうと判例が出来てしまいますので、
その後の裁判も非常に負けやすくなってしまうのです。
だから今までの感じだと原告の言い分にも結構無理があったように捉えられていたのですが…
(なので今回ほど大きくニュースにならなかったし株価にもあまり影響しなかった)
先日の12月15日にロイター社が報じたのが
「J&J社が1970年~2000年前半ごろに原料のタルクや加工後のベビーパウダーに少量のアスベストが含まれていたことを把握しながらこの情報を公にしていなかった。」
という情報でして…。
一気にJ&J社の印象が悪くなってしまったわけですよね。
結果株価も暴落して日本でもこれだけ騒がれたという感じ。
ただこの報道も中々難しいものがありますよね。
だってアスベストが世界的に発がん性等を騒がれ始めたのがちょうどそのくらいのタイミングなわけです。
契約している鉱山や原料会社や最終製造品のタルクにアスベストが入っていないかを繰り返し確認していた時期と重なるわけで、
単純に安全性を上げるために様々な原料や製品をスクリーニングしていた時の資料が漏洩したという風にも捉えられるのです。
僕が思うには、
恐らく1970年くらいのベビーパウダーには今ほどの規制は設けられていなかったはずなので
多少のアスベストが混入してたとしてもおかしくありません。
タルク製品のトップシェアを誇るJ&Jは世界に先駆けてこの安全性研究を勧めていたとしても、
70年代から今と同様のクオリティのタルク製品を販売していたというのはまぁ考えにくいです。
(当時のタルク製品は企業問わず全部同じことが言えますが)
ゆえに数十年前にヘビーユーズで使用していた人の場合、
発がんのリスクが全くなかったとは正直言えない気がします。
ただしそれを根拠付けるエビデンスは存在しないし、
一応J&Jの主張としては「1970年代からアスベストは含まれていない」と言い続けています。
アスベストの特徴としては「直ちに影響が出ない」というのがまた厄介で、
「子どもの時に使っていて、大人になったら発症する」
というのが往々にしてありえるというのが難しいポイントなのだと思います。
「その頃はアスベストが危険だとは知らなかった」では済まない問題ですからね…。
◎少なくとも2006年~以降の製品に関しては確実に安全だが、その前については断言できない…。
正直、僕が思うには現在の9000あまり(今はもう1万を超えているかも)の訴訟全てがこの要因にまつわるモノではない(便乗裁判が結構あるのではないか)と思って居ますが、
1回負けてしまって完全に敗訴してしまうと全てに賠償を支払わなければならない可能性もあり、
ジョンソン・エンド・ジョンソンさんはかなり厳しい状況に追い込まれている気がします…。
たとえば20歳代の患者さんの場合は関連性が怪しい気がしますが、
(一応アスベストの遺伝毒性は否定されています)
上述のように「警告していなかった」という判例が通ってしまう場合はこれも敗訴になる可能性が十分あると思います。
日本ではまず原告側が不利な裁判ですが、アメリカだとそうとはいかないのでジョンソンさんは苦境ですね(-_-;)
ただ、
少なくとも今売られているものに関しては発がんのリスクを懸念する必要はまずありません。
そこはほぼ確実だと思われます。
これだけ騒がれていて安全性試験を怠っているとは思えませんし、
何なら同じ訴訟で何十年と闘っているわけですから
現在のジョンソンさんのタルク製品は世界的にもかなり高い品質を保持していると考えて良いと思います。
今ご利用の方やこれから使おうという方はご安心頂いて良いと思います。
とはいえ、やはり不安という方もいらっしゃると思いますので、
国産品だとタルク不使用のベビーパウダーも結構多く販売されています。
僕は現在のタルクは発がん性を気にする必要は全くなく非常に安全性の高い成分だと思っているので
タルク不使用をごり押しするつもりは特にありませんが、
そういう製品も多く流通しているので探してみるのもよいでしょう。
(タルクを使っていない「薬用」のベビーパウダーはノンコーティング酸化亜鉛の収れん効果を応用しているものが多いので、金属アレルギー持ちの方は注意したい製品だったりもします)
しかし、今回の騒動を受けて
「タルク」という成分が今後しばらくは不当な扱いを受けるんだろうな…
という未来が如実に見えてきますねf(^_^;)
国内製品や現在のタルクの安全性は非常に高いので、
くれぐれも不必要な不安感を煽るような情報には気を付けて欲しいと思います。
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