古い記憶が蘇ってきた。
むかし、猫を飼っていたとき、わたしも猫の耳を触るのが好きだった。
内側のつるつるとすべすべした部分と外側の天鵞絨のようななめらかな毛並みの触感の違いが楽しかった。
触りすぎるとスルリと去っていく猫が、ふしぎと耳は触らせてくれた。
うわさ話にピクリと向きを変えるほど敏感なのに、耳じたいには無関心なのか。
猫の耳は薄い。
太陽の光をとおして内側の血管が迷路のように浮かび上がる。
噛んでみたいとは思わなかった。
猫の手を借りて化粧したいとも思わない。
まぶたを踏まれたくもない。
仔猫の小さな足からほんの少しはみ出た爪に微かな痛みを感じながら、母猫のように肉を揉まれたのは幸福な瞬間だった。
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