芥川賞受賞作。
びっくりするほど読みやすかった。
そして、鮮烈。
文学作品とよばれる小説は、どこか肩肘張っていたり、小難しかったり、自己陶酔が激しかったりで、素直におもしろかった!と言えないことが多い。
ブンガクしちゃってる、って気配を感じるだけで浮かぶ、苦笑い。
それならすっかりエンタメに徹してくれるほうがいい。エンタメの中からたちのぼる隠しても隠しきれない作者の魂を感じたい。
そんな捻くれ者のわたしだけれど、これは、文句なし。
似非ブンガク作品じゃない。
賢ぶったイヤラシサも、いきすぎた自嘲も、高尚さを装うわざとらしさもない。
描きたい世界に必要な文章が心地よく並ぶ。
不要な装飾、無駄な描写はない。
コンビニ人間 という題名に、当初予想していたような物語ではなかった。
なんていうか……もっとずっとコンビニ人間だった。
コンビニ人間と言うしかない。
うまい題名ではなくこれ以外ない題名。
コンビニ人間 のあらすじ
コンビニ人間になる前の古倉さん。
コンビニ人間になった古倉さん。
白羽にであってコンビニ人間をやめそうになった古倉さん。
やっぱりコンビニ人間だった古倉さん。
コンビニ人間 は、コンビニ人間の物語。
古倉さんに何かのレッテルを張ることはできるかもしれない。
発達障害があるんじゃないか? なんて。
でも、人間の心の有り様を正常か異常か判断するのはとても難しい。
「普通」とそうじゃない人との境は曖昧だ。
「普通」の人のガワを観察してトレースして「普通」を演じることができるのなら、それはもう普通なんじゃないだろうか。
冒頭の男性や古倉さんのように、従業員でないひとが従業員っぽい言動をすること、ある。
本屋さんで本を並べ直す人。休暇中なのに「いらっしゃいませ」と言っちゃう人。電話口でうっかり会社用のセリフを言いそうになっちゃう人。いるでしょう?
〜人間は、特別な存在じゃない。
普通と変人のグラデーションの中で、なんとか生きていこう。


