短編集。過去のおもいで。懐かしい記憶。忘れていた淡い気持ち。
ノスタルジックな、かすかに漂う匂いをたどるような物語。
夢のかたみ
チルチルの丘
路地裏の家
ディオリッシモ
約束
夢のかたみ
春恵のみた夢は幸福な夢だったと思う。こんな甘い夢をみるほどに自分は傲慢な女なのだと、春恵はわかっているのだろうか?わかってないんだろうな。産気づく妻を気遣う夫に「この写真をご存知じゃないかしら」なんて聞けるんだから。現実に春恵がいたら、きっと嫌いなタイプ。
ラストの1ページが圧巻。とくに最後の一行。うまいなあ。
チルチルの丘
お互いに「子どもだった」と言い合ってるバカップル。
過ぎ去った年月が苦い思い出をまろやかに包み込んでいる。しかし銀座のクラブでのやりとりといい陣内はクズだな。そんなのにひっかかる早紀子もアホだけど。
路地裏の家
小池真理子の真骨頂。この著者は恋愛ものからホラーまでいろいろ書くけど、このタイプの作品が一番好き。抑制されていて静謐で、底流に熱い感情が流れてる。
主人公の子ども時代とラストの子どもとの対比もいい。なんでもないビスケットの箱に、きれいな千代紙を貼って宝物入れにすることを教えてくれた・・・なんていうちょっとした一文もいい。白い粉がサラサラと零れる場景も見えるようだし。好きな作品。
ディオリッシモ
もう戻れない子ども時代。大人になって今の生活に満足していても、あのときに戻れたら・・・と思う人はいるだろう。今の(おとなの)知識と思考力をもったままあの頃に戻りたい、と。
約束
こんな約束は果たされないほうがいい。淡い希望を現実にしたらとたんに生臭くなる。
本当に叶えたいならもっとしっかり具体的に約束すべきだったし。・・・それにしても不謹慎な約束だけど。
ふたりのアルバイトの雑な仕事っぷりはリアル。
一枚のモノクローム写真に秘められた懐かしくいとおしい日々の記憶。人生の晩年を迎えようとしている女性随筆家は、愛した男への思いを胸に生きてきた。だが、小さな出来事が平穏な生活にさざ波をたてる…。表題作「夢のかたみ」ほか、再会の一夜のドラマを綴る「チルチルの丘」など、遠い日のエロスを溢れるノスタルジーで描く。失われた時間への哀惜と感傷に満ちた5編。
