<「顔みえる」新本社、意識改革狙う>

トヨタ自動車は2017年夏、テキサス州ダラス近郊にあるプレイノ市で北米新本社を始動した。米国事業60年目の節目で、ニューヨーク州の渉外・広報、ケンタッキー州の生産統括、カリフォルニア州の販売など全米に分散していた4つの機能を集めた。東京ドーム8.5個分の敷地に太陽発電パネルを備えた7棟の巨大な建物が並ぶ。各地からトヨタ社員が移り住み、現地採用を含めて約4100人が働く。人口28万人のプレイノ市内ではホテルや商業施設の建設などが盛んで、「10年間で72億ドルの経済効果を見込む」(同市のスティーブ・ストーラー氏)。規模だけでなく、館内は「コラボレーションスペース」と呼ぶ交流向けの面積が半分を占め、愛知県豊田市の本社とはがらりと雰囲気が異なる。
18年1月中旬、メーンロビーにはライドシェアリング企業「カーマ」向けのカムリのハイブリッド車(HV)が飾られていた。日本の本社でも新型車を展示しているが、他社のシェアリングサービスを紹介する事例は珍しい。

館内には個人の席もあるが、至る所に多彩な色やデザインの共用のテーブルやソファが置かれている。壁が少なく、ガラス張りで多く、顔が見えやすい。昼寝ができる椅子、ジムやスポーツクライミング(ボルダリング)の設備を備える。エンジニアリング、販売、マーケティング、金融、コーポレートなど全米に分散していた従業員の融合を促す狙いがある。
東西3時間の時差を解消し、北米トヨタのコミュニケーション最高責任者のスコット・ヴァジン氏は「販売、生産、開発で組織文化は少し違ったが、一緒になることで消費者視点のアイデアと革新が増える」と新本社の意義を語り、「多くの従業員は伝統的な仕事をしているが、電動化や自動運転などの未来の変化は確実にくる。電話会議よりも直接話し合うことで、これから3年間で最も大きな変化を起きるだろう」という。新本社の投資額は10億ドルと大きい。1957年にカリフォルニア州の約280平方メートルの販売店から始まったが、トヨタ首脳は「次の50年に向けて、投資に見合う成果を期待している」と求める責任と結果も大きい。
