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静かなる天使の叫び〈下〉 (集英社文庫)
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第二次世界大戦前夜、アメリカ南部の田舎町オーガスタフォールズでは次々と少女が惨殺されていた。
父親を亡くし、母親と二人きりで暮らしていた少年ジョゼフ・カルヴィン・ヴォーンに見えるものは死神の姿と天使の白い羽根だった・・・。
間もなく12歳を迎えようとするジョゼフが父を病で失ったところから、ジョゼフの長く痛ましい人生が語られ始めます。
オーガスタフォールズで次々と起こる少女の惨殺事件。
それは死体がバラバラにされたりと徐々にエスカレートしていく中、感受性豊かな少年は世界大戦が覆う暗い影が時代を移り行く中で何を見て、そして感じていくのでしょうか。
とにかく一つ一つの場面が一枚の写真のように脳裏に浮かんできそうな描写に惹き込まれます。
聡明であった母親が壊れていく様子。
自分たちで少女たちを守ろうと友人たちと誓い合った場面。
美しい女性教師と愛情深めていく情景。
喪失感に打ちのめされた先で再び生きる力を呼び込む相手と出会う場面。
そしていつまでも影のように離れない惨殺された少女たちの幻影と、死の影を感じ取る天使の白い羽根と死神の姿・・・。
それはセピア色だったり鮮やかな天然色だったり様々だけれど、どれもが印象深く、それが次々と読者の前に写しだされる為に一気に読ませます。
ミステリとしてはちょっと弱いけれども、一人の少年がどのような人生を送るのか、そしてその果てに見えるものは何なのかを追いかける読書体験は素晴らしいものでした。
ただ出来ればニューヨークや刑務所での出来事ももうちょっと読みたかったかな。
その辺がちょっと駆け足気味だったのが残念でした(そのぶん先へ先へと読ませる勢いはありましたが)。

