店をやっていく上で最も大切なことは、
自分がどうしたいかを突き詰め、店の価値観を決定し、
それを徹底して貫くこと…
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前回レビューした「ラーメン発見伝の芹沢サン」と同時発売された、「らーめん才遊記」からの「よりぬき芹沢さん」。テレビ東京系で4/20にスタートする「行列の女神~らーめん才遊記」の原作として、ラーメンコンサルティング会社「清流企画」社長としての芹沢達也の活躍を描いています。
「らーめん才遊記」全11巻の内容については、かつてブログでレビューさせていただきましたのでそちらをご覧ください。
(1)1~3巻
(2)4~7巻
(3)8~11巻

同時発売された「ラーメン発見伝の芹沢サン」と同様に、「らあめん清流房」のラーメンがイラストで描かれ、そこには芹沢さんの半身。この2冊を横に並べると、芹沢の全身が現れる趣向で、書店での陳列がひときわ目立つ構成です。
帯には「金 VS 理想」と書かれ、経営者として時に「銭ゲバ」と呼ばれる芹沢と、「ラーメンLOVE」で理想を追い求める、主人公の汐見ゆとりとのぶつかり合いが、この作品を貫いています。
この1冊に15話が掲載されていますが、エピソードは大きく2つに分かれています。第1話で汐見ゆとりが登場するくだりでは、「ラーメン発見伝」からの世界観が説明されつつ、前半6話では、料理の腕は抜群だが社会人としては常識外れの汐見に振り回される芹沢の動きを描いています。
後半はまず、非常識な客が多いラーメン店へのコンサルティングを描いています。そこで芹沢は冒頭の引用部にあるセリフを、悩む店主に向かって投げかけるわけですが、それは芹沢自身に向かって言っているようにも聞こえます。
そのコンサルティング終了後から不穏な展開が始まります。かつて「清流房」で店長を任せ、トラブルで退職した男が、清流房そっくりのラーメンで復讐を仕掛けてきます。芹沢は過去にけじめをつけるべく、新メニューの投入で彼の店を閉店に追い込みますが、そこでは芹沢の「理想」を貫きつつ、自ら決めた店の価値観を徹底して貫いているともいえます。
「ラーメン発見伝の芹沢サン」と「らーめん才遊記の芹沢さん」の2冊が同時に発行された事で、「サン」と「さん」といった敬称の違いが明確になりました。これ自体は作中から見られていた違いで、発見伝の主人公である藤本にとっては「好敵手」で、才遊記の主人公である汐見にとっては「上司」であるという違いがあるのかなと思っていたのですが、作者の久部緑郎さんが、巻末(カバー折り返し部分)で衝撃の事実を紹介しています。
最後に、これは関係者へのお願いです。現在、「ビッグコミックスペリオール」ではドラマ放映に合わせて、「才遊記」の続編にあたる「らーめん再遊記」が短期連載されています。芹沢が現在のラーメントレンドに乗り遅れ、スランプを抱えた状態から再起を目指すというストーリー。この短編も、是非単行本にしていただきたいと思っています。


