「食」と密接に関わりのあるグルメ漫画は、その時代の「食文化」をかなりはっきりと描き出しているのですね。一冊一冊だとなかなか見えてこないかもしれませんが、その時代の作品をたくさん集めれば、かなりはっきりしたものが見えてくる。(p242)

 

 先日「美味しんぼ」をレビューしました。
『美味しんぼ 38巻(ラーメン戦争)』(小学館,ビックコミックス,1993)


 そんな中、先日刊行されたこちらが気になって購入。ラーメン漫画も含めた、グルメ漫画半世紀の歴史が語られています。
 

 最初のグルメ漫画として取り上げられているのが、1970年から少年ジャンプで連載された「突撃ラーメン」。作者は「ワイルド7」で知られる望月三起也氏。私はこの漫画を入手していないので、この新書からの情報をまとめます。作中ラーメンの味に関する描写は見られず、復讐へのストーリーとして、主人公の父や敵が中華料理店として描かれているに過ぎないとの事。ただ「店の前に屋台を構えて、相手から客を奪う」という勝負スタイルは、その後の「包丁人味平(カレー)」や「美味しんぼ(ラーメン)」、そして「ラーメン狩り」などにも出てくる、グルメ勝負の定番スタイルになっています。


 1973年から連載を始めた「包丁人味平」は、グルメ漫画の方向性を決定づけた作品として紹介されています。主に6つの舞台があり、その最後にあたる「ラーメン祭り編」では、ラーメンには素人である味平が名勝負を繰り広げていきます。この詳細と歴史的意義については、別エントリーで触れたいと思います。


 1980年代に連載開始した「美味しんぼ」は、グルメ漫画の歴史の中でも大きく取り上げられています。そんな中、ラーメンを主題にした漫画としては、土山しげる氏が手掛けた最初のグルメ漫画である「喧嘩ラーメン」が1990年代の作品として紹介されています。時期的には麺屋武蔵・青葉・くじら軒の「96年組」が登場する直前で、関東から東海、広島、九州へと舞台を移し、醤油ラーメンから豚骨ラーメンへの時代の移り変わりも触れられています。


 2000年代初頭、「週刊少年チャンピオン」で連載された「虹色ラーメン」は、ラーメンを知らなかった高校生が、ラーメン部を通して成長していくという点で、ストーリーや設定にユニークな所を出しながら、少年誌らしい成長物語として描かれています。故・武内伸さんが原案協力として参加しています。この時代に始まったもう一つのラーメン漫画は、知る人も多い「ラーメン発見伝」。こちらは石神秀幸さんが原案協力し、ラーメンの味だけでなく、経営に必要な点、ラーメンブームの功罪など、様々な点からラーメンを描いています。これらの漫画も、改めてレビューしたいと考えています。


 この新書を通して書かれているのは、グルメ漫画が時代を経て変遷していく姿。外食産業が萌芽を見せた1970年代に始まり、「語る」ブームを呼び起こした「美味しんぼ」の存在、その後の外食シーンの変化を、様々な漫画を経て描いています。そう考えてみると、「虹色ラーメン」「ラーメン発見伝」は2000年代初頭のラーメンブームとリンクしていたとも考えられます。


 そんなわけで、本書の中で取り上げられたラーメンを含んだグルメ漫画は6本。長期連載された作品が多くなくて、実在店を取り上げた「エッセイ系」のラーメン漫画は数が多くて絞りづらかったかと思います。今後、それらのラーメン漫画についても順次レビューしたいと考えています。