9月9日

太郎山 午後3時ごろ?2373m

太郎平小屋連泊

夜から、雨音がしているのを気のせいだとひたすら思い続けていた。5時半から朝食なので、5時前には、腕時計の目覚ましを鳴らしていた。朝起きて、外を見るが、昨日見えたような気がする薬師岳の影も形もない。

台風情報も必要だが、まずは朝ごはんである。たとえ、今日待機しなくてはならなくても、朝ごはんは食べねばならない。食堂に行くと、やはりみんな天気予報が映し出されている画面に釘付けである。

どうやら、台風は、今日ここら辺を通過するらしい!まだ薄暗い中での雨風が、本格的になってきている雰囲気である。この時点で、今日は読書をしようという気になっていた。

しかしながら、ツアーの人たちは、下山する方向でいるらしい。台風が来る前にとにかく樹林帯まで行こうという魂胆か。それにしても、台風の日に、10人以上もの客を連れての下山なんて。つくづくガイドさんというのは、大変すぎる職種だと思うのであった。このような大変なことを常日ごろされていらっしゃるからか、このツアーのガイドさんは、ほんと素敵な女性であったのだ。とにかく、明るくて、元気。こんな方であるから、このような過酷な職が勤まるのである。彼らの出発後、特になんの情報も入ってこなかったが、みんなちゃんと下山できたのだろう。

どんどん強まる雨風を見ながら、8時ぐらいには、連泊することを確定し、小屋の人にもその旨を告げ、太郎平と高天原は、同じ系列の小屋なので、高天原にキャンセルの連絡もしていただいた。おまけに、これらの手配をしてくださった小屋の方は、つい最近まで高天原で働いていたという。そういえば、私が働いていた山小屋でも、夏の繁忙期と10月以降は、いろいろ人が入れ替わったりしたなあなんて、思い出してみる。

北アルプスの小屋は、そういえば、長野方面から燕山荘グループ、槍ヶ岳山荘のグループ、岐阜方面から双六グループ、そして富山方面からの太郎平小屋のグループの小屋たちが主な山小屋グループという感じがする。これらのグループが競いあうというかお互いに刺激を受けながら、北アルプスの小屋のレベルを飛躍的に高くしている気がする。

太郎平の小屋の方々は、素朴な感じで、とても親切。そして、裏表のない対応をどの方もしてくれた。私が連泊することを決めると、本があるところを教えてくれたり、なんだかんだ言って、話しかけてくれたり。なんだか、とても居心地のよい場所なのである。

そして、私は、談話室に篭り、ひたすら読書をすることに決めたのだ。しかしながら、談話室には、昨日のおじさんもいらっしゃり、くつろいでいる。おじさんも今日の進行は、やめにしたようである。そして、なぜだかヨーロッパの話になってしまった。そのおじさんは、なんと30年以上も前にベルギーに赴任していたという。そして、ヨーロッパにいるのであれば、美術館、コンサート、バレエ、オペラは絶対に楽しんでいた方がよいという助言をいただく。

確かにそうなのだ。せっかくイギリスに住んでいるのだから、もっとヨーロッパならでのことも楽しまなくてはならないのだ。まさかこんな山奥で、こんな助言をいただくとは!それにしても、このおじさんは、たぶんすごい人だと思う。30年もの前に海外赴任するって、かなり選ばれたエリートである。今は、誰もかしこも海外赴任し、駐在員のレベルがどんどん下がっている。しかし、そんな昔に赴任している人たちってのは、ほんとすごいのだ。お話していても教養の程度が、私と違いすぎる。はあ、山でまさかこんな方と会いすることになるとは。あの助言は、しっかりイギリスまで持ち帰ろう。そろそろ冬で、ウォーキングしてもそれほど楽しくない季節になる。今年の冬は、今までしたことのない芸術鑑賞をしてみるか。

そのうちにも、風がどんどん強くなってくる。風のせいで、談話室の入り口の扉が、ふいに開いたりする。それをいくつものいすで開かないように抑えるのであるが、それでも”ばーーん”とドアが開いてしまう。

おまけに、風がどんどん強くなり、談話室にいたおばちゃんが、猫と犬がけんかしてる音みたいと言っていた。確かにそんな感じの音である。普通に暮らしているのでは、あまり耳にしないようなすごい音なのである。

そんな中で、新田次郎の”聖職の碑”を読み始めた。前から読んでみたいと思っていたのでちょうどよい。今日は、ゆっくりしなさいという神様のメッセージだと思い、読書を楽しむことにした。やはり新田次郎はすごいのだ。あの遭難を着実な取材に基づいて、一冊の本にするという偉業を成し遂げている。新田次郎という才能のある作家が、書いたからこそ、あの遭難が、後世に生かされることとなったのだ。もちろん山は、そんな怖い面だけではないが、山に来るからには、このような面もあることも知らなくてはならない。

読書に集中していると、知らない人が入ってきた。今日の朝から登りはじめ、今ここに到着したという。

”ありえない・・・・”

いやはや、すごい方がいるものである。どうやら昨日の夜に関西方面から車で来て、今日の朝、折立から登ってきたらしい。台風の中登ってきたのも、仕事の都合で、どうしても今日しかなかったらしいのだ。おまけに、昼前に太郎平に到着しているってことは、ものすごい体力である。この方も、本当に山が好きなんだなあと思ってみる。

私は、夜に運転したり、山の中を早く歩くことはできないけど、山のためだったら、ちょっとやそっとのことは、我慢できたり、克服してしまうっていうことを、それを聞いてて思い出した。まだ東京で働いている時なんて、金曜日の夜終電ぐらいまで働いて、土曜日の朝は朝7時新宿発のあずさに乗ってたり、私も若いころはそうだったのだ。

台風一過


猫と犬がけんかしている音がずーーーと続いてはいるが、外はどんどん明るくなり、山が見えるようになってきた。それがまたとってもきれいなのである。風は、相変わらずであるが、雨はやみ、ガスは晴れたのである。

ということで、読書にも疲れてきたので、外に出てみることとした。風は相変わらずではあるが、外はめちゃくちゃきれいなのである。小屋の人にこの近くに散歩ができる場所はないかと聞いたところ、太郎山なら10分ぐらいで行けるという。それなので、太郎山目指して、散歩することにした。

小屋から外にでると、すんばらしい薬師岳の勇姿が見える。昨日もすごいと思ったが、今日のそれはまた格段に美しい。10年くらい前に雲ノ平から見た薬師岳もかっこいいと思ったが、今日の薬師岳は本当に素晴らしい。来年は、薬師岳から立山に抜けたいななんて、なんとなくこの時から思ってきた。

そして、小屋の人たちから教えてもらった通り、黒部五郎方面の木道を進んでいった。それにしても、ものすごい風である。木道上を歩くのがとても難しい、たまに木道上で、座りこみ、突風を避けたりする。やはり私レベルで、この中を突き進むのはリスクが高すぎた。今日はやはり山小屋待機で正解だったのである。たまには、自分の限界以上のこともしなくてはならないが、今日みたいな日に、私レベルがリスクを犯す必要はない。

小屋の人も、散歩にでてきたらしく、太郎山の山頂方面をまた教えてもらう。ほんとこの小屋の人は、素朴にいい人ばかりだと思う。2日間もお世話になって、心からそう思う。

太郎山山頂しても風に煽られてなんだかよくわからない。いちおう登頂して、また小屋まで戻ってきた。薬師岳方面にもちょっと歩いてみるが、なんとなくよさそうな登山道である。やはり来年は、薬師ー立山コースだろうか。

それにしても、風がなければ、まさに台風一過といった感じの素晴らしい天気であった。1時間弱の散歩だけであったが、風に煽られながらも素晴らしい景色を堪能することができた。もう少し散歩すればよかったと後で非常に後悔するのであった・・・。

親子&孫登山

太郎平に3連泊している方々がいるという。なんとなく、親子のようである。談話室で一緒になったので、話をしてみたところ、なんとおばあちゃんと孫で山に来ているという。しかしながら、おばあちゃんといっても、若く見えるから、親子って言われても全くわからない。

そのおばさま(おばあちゃんでは決してない。)は、今まで家族のために、家事を全て担ってきたらしいのであるが、東北の地震を契機に、自分も好きなことをすることにしたという。そして、たまに家事をほっぽらかして、山に来るという。75歳とおっしゃってはいたが、75歳などには到底見えない。おまけにおしゃれな毛糸の帽子をかぶっており、なんだか素敵なのである。

何かが吹っ切れて、孫と一緒に山に来るおばさま。もしかしたら、孫は両親などに言われて、一緒に来ているのかもしれないが、仲睦ましく一緒にいるように見えた。しかも、彼女らはとても用心深く、決して無理をしない。特におば様は、ご自身の体力をきちんと把握しており、絶対に危険をおかすことはしないようである。

おば様は、年齢制限で、ツアーには入れないのだと嘆いている。それなので、今回のように個人でゆっくりくるか、もしくはプライベートのガイドを雇ってくるしかないというのである。私が75歳になるまでには、まだ何十年かあるが、それまでにまだ一人でも山を歩けるくらいの体力は維持しておきたいなあと思うのである。

孫の子もいい子であった。

孫との登山にはびっくりであったが、父娘登山をしている組もあった。若い奥さんだなあと思っていたら、実は、父と娘ということであった。そして、娘さんが、これまたかわいいのである。あんなかわいいこと登山なんて、パパは本当に幸せである。

私からすると親子で山など本当に信じられないのであるが、山小屋の同僚でも昔から家族で登山をしていたと言う人が意外と多いのである。

両親からの影響が大きいらしいのであるが、私の場合には自分で勝手に山好きになってよかったと思う。親から半ば強制されたものには、反発しそうだからである。けれども両親は私に、何の強制もせずに、好きにさせてくれた。だから、今こんなとこで、こんな自由きままに暮らしているのだ。自由にしてくれた両親に心から感謝しているのである。

あーあ、ほんとにいろんな人がいる。みんながみんないろんな思い、いろんなことを抱えて、こんな辺鄙な場所まで来ているのだ。

太郎平小屋の夕食は、昨日とは異なりハンバーグであった。連泊が多かったので、それを考慮してくれたのであろうか。夕食メニューを変えてくれるという心遣いもとてもうれしいのである。

風はまだすごいが、台風一過の後の景色は、とにかく素晴らしかった。夕日は見損なった(おばさまとの話に夢中になっていたのだ。)が、富山の夜景と星空が素晴らしかったのである。この星空だったら、明日は快晴だと思った私は、やはり甘かった。

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午後になると晴れてきた!おまけに、めっちゃきれいな青!



いい!
































天気は、最高だが、ものすごい風が吹いている。木道を歩くのが、かなり怖いくらいである。





風が強いので、雲がどんどん流れていく。かつこよかった。