体調が悪い時には居酒屋の大将に助けて貰い
時には好きでもない人とカンツォーネを聴きに行き
ダメ男には友人に乗り換えられそうになったりと
黙っていてもドタバタな毎日が過ぎていき…
大好きだったNとお別れしてから
時間も経って あれは夢だった という仮想に
自分でも本気で慣れて来た頃のこと。
Nとの出会いはこちらから
雨の日の仕事帰り、地下鉄のシートに
疲れた身体を預けて
「無」になり揺られていた私の
レインブーツのつま先を誰かが傘で
ツンツン。
予想外の出来事に一瞬(え?)と固まる。
変な人かな…?
早くあっちに行かないかな…との願いも虚しく
再度、サイレントツンツン。
(怖っ…新手のナンパか?)と思い
「なんですか?!」と大きめの声でも出そうかと顔を上げた瞬間
「!!!」
声にならない声が出た。
そこに居たのはNだった。
「久しぶり」と懐かしい声。
一瞬にして顔が熱くなってしまう私。
きっと目を丸くして赤面しているこの顔、
Nだけではなく地下鉄で向かい側に座る方々に丸見えである。
かなり恥ずかし過ぎるシチュエーションに
私は慌てて立ち上がった。
それから二人で隅の方に移動して
隣同士でつり革につかまると
まともに顔を見なくて良くなり
ひとまず危機を回避した。。
「びっくりしたよ…」
「ごめんごめん、今帰り?」
「うん…」
「元気にしてた?」
「うん…」 と
会話が始まったのもつかの間
もうすぐNの降りる駅だ。
どんな顔をしたら良いか、まだ迷う私に
Nはごく自然に「軽く飲む?」と聞くのだった。

