今年の3月で
東日本大震災が起きて12年。
震災が起きたとき
あまりの被害に言葉が出ず
就活生だった自分は将来の不安と恐怖に
ただただおびえるばかりでした。
東京に住んでいた自分でも
すごく怖かったのに、
東北にいた人はどれほどの恐怖だったのか
想像もできません・・
月日は流れ、「あの日」のことが
語られる作品が増えていますが
やはりあのときの傷はいまでも消えずに
残っていることをこの物語を読んで
痛感させられました。
物語の中心人物は
宮城で造園業を営む40歳の坂井祐治。
震災が起きたのは
祐治が独立してすぐのことで
商売道具と仕事を失い、
生活に立て直すのに必死ななか
心労で弱っていた妻が病で亡くなり、
不幸のどん底に突き落とされます。
震災当時、子どもは3歳とまだ小さく
家族を支える必要があったため
悲しみに浸る暇もなく祐治は
実母に子どもの世話を任せて仕事に没頭します。
なぜこの地域だったのか。
なぜこのタイミングだったのか。
なぜ妻が亡くなったのか。
なぜ自分ばかり不幸が続くのか。
祐治は余計なことを考えないように
仕事に集中しようとしますが
行き帰りの車窓から見える大きな防波堤や
更地になってしまった住宅街を見るたびに
自分の身に降りかかった不幸が
思い出されてしまいます・・。
この10年の間に祐治は再婚もしますが
再婚相手の流産をきっかけに夫婦関係が破綻。
再婚相手は祐治を拒絶し
有無を言わさず離婚を告げられ、
祐治は話し合いができないまま応じるしかなく
離婚後も会うことすら拒絶され・・。
数々の不幸に再婚相手との不幸も加わり
やり場のない思いが胸を締め付けますが
しかしどうすることもできないまま
祐治は仕事に没頭するしかできないのでした。
造園業は好調と言えないまでも
依頼が途切れることはなく
着実にこなしていましたが
40代となり肉体に限界を感じはじめます。
ひとり作業ではできない仕事もあるため
人を雇おうか考えはじめますが
いいかげんな若者ばかりが応募し長続きしません。
ちいさかった子どもも気がつけば10代になり、
ほとんど家族の時間をもたなかったため
子どもは父親との距離感をはかりかねていて。
祐治は自分の努力の報われなさに
呆然としますが
しばらく疎遠だった幼なじみの明夫との
再会をきっかけに、
不幸ばかりの自分でも
「恵まれている」のではないかと
考えさせられるのです・・。
震災が残していった
終わりのない悲しみと苦しみが淡々と、
そして絶望的に描かれた作品でした。
災厄の悲しみ、苦しみを
描いた作品は多々ありますが
この作品は「身体感覚」の描写が多く
この身体感覚によって
被災した地域の生活者の
傷の深さをひしひしと感じました。
祐治は造園業という職業柄
肉体を酷使することが多く、
それなりに消耗しますが
健康上の問題なく生活していることが
描かれています。
むしろ、あえて肉体を酷使することで
突如襲ってくる不幸や悲しみを
やり過ごそうとしているようにも見えます。
かたや幼なじみの明夫は
酒がやめられずに太り、病もあるようで
祐治が明夫を見かけて話しかけても
自暴自棄にふるまうばかりで
常に不穏な空気が漂っているのです・・
大きな災厄で
誰もが不幸や悲しみを背負っているなかで
誰がいちばん不幸で、
誰がいちばんかわいそうで、
といったことは言えませんが
明夫の痛々しい姿を見た祐治は
明夫の悲しみの深さ、絶望感を想像し、
しかしどうすることもできず
深い悲しみと絶望を
身体で受け止めることしかできない
とでも言うように
防波堤を超えて海を眺め、
潮風や焚き火の炎を浴びながら
祐治は立ちすくむのです。
簡単に言葉にすることのできないほどの
大きな災厄だったからこそ
身体で悲しみや苦しみを受け止める
しかなかったのだろうと
この物語を読み終わって
考えさせられました・・。
言葉にならない苦しみが
身体感覚に描き出されていて
胸が苦しくなりましたし、
読んだわたし自身も感想を言葉にするのが難しく、
読み終わってしばらくは言葉にならない思いを
反芻し続けていました。
去年、離婚危機になったときに
ショックでごはんが食べられなくなり
その時の心の傷は言葉にしようがなく
それと同じようなものなのだろうかと
考えたりしました。
人生のなかで深い悲しみは
なるべく経験したくはないけれど
言葉にしようのない
身体で受け止めるしかない種類の
不幸、悲しみがあり
それが来たときには
ただ受け止めるしかないという
未来の自分への試練のようなものが
胸に刻まれた物語でした。
言葉にならない思いを、
簡単も語ることができない心の動きを
描こうとしたこの作品は
とても偉大な作品だと感じましたし、
災害大国の日本に住む者として
これからも読み継がれるべきだと思います。
月日が流れ、そしてわたし自身
大切な家族が増えたからこそ
わたしの心身に深く沁みた作品となりました。
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