わたしは昔から
「料理ができる人」のことが
すごく羨ましいと思っていました。
というのは
「その子が料理できるようになるまで
誰か大人がついててくれたんだろうな」と
想像して、それが羨ましかったからです。
うちは6歳から
母子家庭になり、母の実家で
祖父母と一緒に暮らしていたのですが
母は忙しいし
祖父母は甘やかしてくれるしで
家事を教わらずに育ちました。
クラスメイトには
小学校高学年、中学生ぐらいで
料理できちゃう子が何人かいましたが
野菜の切り方すらわからない自分は
ちょっと恥ずかしく、そして
その子が羨ましく感じたことを覚えています。
けれど、『宙ごはん』を読んで
その考えは自分のフィルターを通した
偏った見方でしかなく、
料理ができる子どもの背景には
思いもよらない悲しさや孤独が
ひそんでいるかもしれない・・と
考えさせられました。
『宙ごはん』は
保育園まで叔母に育てられ、
その後、実母とともに暮らすことになった
主人公・宙(そら)の複雑な半生をなぞりながら
「人を頼る」ことの勇気と
「頼られる人」の温かさが描かれた物語です。
宙の母・花野(かの)は
イラストを生業にしていて
宙が産まれた当初は自分に育てられないと
妹の風海(ふみ)を頼り、
風海が母親代わりとなって
宙を育て上げました。
風海から温かい愛情を注がれた宙は
産みの親である「お母さん」・花野と
育ててくれる「ママ」・風海がいることを
素直に受け止めて育ちましたが
保育園を卒園するころに
風海の夫の海外赴任が決まり、
話し合いの末に宙は花野とともに
暮らすことになったのです。
しかし花野は風海とは違って
とてもドライな性格で、
宙をほとんどかまわず、
しかし恋人の柘植とは親密にし、
家事もほとんどやらず、
宙は「ママ」との生活の落差に
ショックを受けてしまいます。
特に宙にとって辛かったのは
実の母だというのに
自分に目を向けてくれないこと。
宙は花野の仕事が忙しいだろうと遠慮し、
自分の孤独や悲しみを
抱え込むのですが、
その思いは溜まるばかりで
いつまでも解消されず
やがて爆発・・。
宙はママと過ごした過去を振り返り
誰かに甘えることのできない今が
悲しく、そして孤独に感じるのですが
花野の中学からの同級生で
ごはん作りを任されていた
洋食屋の佐伯が宙を励まし、
美味しいごはんをふるまうことで
宙の心と身体を温めるのです。
佐伯のごはんの美味しさに感動した宙は
自分も作れるようになりたいと言い、
料理を教わることになります。
そして物語が進むごとに
宙の料理の腕が上がるのですが、
実は花野も料理上手であることや
花野があえて家事をしない悲しい理由、
花野と風海の複雑な関係、
花野が抱える思わぬ暗い過去が明らかになり
宙はその事実が明らかになるごとに
花野への見方が変わり、
気持ちが揺さぶられるのです。
宙の気持ちは浮き沈みを繰り返しますが
沈んだ心を立ち直らせるきっかけになるのが
おいしいごはん。
ふわふわのパンケーキ、
ほこほこのにゅうめん、
きのこポタージュ、
レタスたまごチャーハン。
宙は美味しいごはんで心を回復させながら
自分の見えないところで
苦しんでいる人がいかに多いかを、
自分の見方がすべてではないことを
思い知らされます。
宙は苦しむ人の思いに胸を痛めながら、
過去の自分に手を差し伸べてくれた
人の温かさを思い出し、
自らも手を差し伸べる人であろうとするのです・・。
この物語は装丁がかわいい感じで
パンケーキとか、ほこほこにゅうめんとか
ほっこり和やかワードが出てくるものの
内容はかなり辛い現実が描かれていて
パンケーキおいしそう〜!と思うよりも
胸が痛むことの方が多かったです。。
宙と花野の距離感のある親子関係を筆頭に
親との確執、DV、貧困、依存症などの
問題も描かれていて、
その環境を耐え忍ぶ子どもの描写が
つらかったです・・
たくさんの悲しみと孤独が描かれるのですが
人の優しさ、温かさもきちんと描かれていて
内容がヘビーな分、泣きそうになりました。
そして人には
自分が推しはかることのできない
いろいろな背景と事情があり
自分の見方はほんとうに偏ったものなのだ
ということを強く感じました。
冒頭の「料理ができる」ということについて、
わたしは「誰か大人がついてくれて
優しく教えてくれたんだろうな〜」と
ほっこり考えていましたが、
実はめちゃくちゃスパルタで
料理を叩き込まれたのかもしれないし、
自分で料理をせざるを得ない
追い込まれた状況になって
上達したのかもしれないのです。
家族という存在は
いちばんの安全地帯で
自分が頼れる人がいる場所である
という自分の認識も
この物語によって
ガラガラと崩れました。
ですが
血のつながりがなくても
安全地帯になれる場所はあるし
頼れる人もいるのだ、
ということを再認識し
(改めて考えてみればそりゃそうですよね)
視野の広がる思いがしました。
1歳児育児中だと
接している時間が長いから
家族がいちばん思考になっていましたが
それが絶対!なわけないですよね、、
いつのまにか
凝り固まっていた考え方を揺さぶられた
食べものがたりでした。
余談ですが
我が子には小さいときから
ちょっとした料理ができるよう
教えたいです。
なにも教わらなかったわたしは
大人になって非常に困ったので。。
(今は便利家電もたくさん出ていて
家事のハードルも下がっていますしね)
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