サマセット・モームの

『月と六ペンス』に並ぶ代表作とされている

『人間の絆』を読みました。





「人生こんなはずじゃなかった…!」

と思ったことがある人、



自分の思い描いていた

夢や理想に近づこうと努力したけれど

その時のタイミングとか巡り合わせで

なんか全然違う方向に進んじゃった…

という経験がある人に刺さる物語でした。

(もちろんわたし自身もそう!)



物語はイギリスの田舎町、

ブラックステイブル(実在しないみたいです)

からはじまります。



主人公フィリップは

医者の父と美しい母に

愛情深く育てられましたが

幼くして両親ともに

病気で亡くなってしまいます。



両親の死後、

牧師の伯父夫妻にひきとられ

ブラックステイブルで

聖職者になるべく育てられますが

フィリップは成長とともに

信仰心を失ってしまいます。



フィリップは

勉強ができるタイプでしたが

生まれつき片足が不自由で、

ひきずって歩く姿を

先生や同級生にからかわれたり

いじめられたりしたことから

内気でひねくれた性格に育ち、

やがて学校をやめ、

別の道に進むことに決めます。



フィリップはドイツ留学を経て

ロンドンへ行き、

公認会計士となるべく

会計事務所に勤めますが長続きせず、

今度は美術の道に進もうと決意し

単身パリへ渡ります。



パリでは美術・文学の

教養がある人と交流しながら

刺激の多い毎日を送りますが

ミルドレッドという女性に

一目惚れし、生活が激変。



ミルドレッドへ猛アタックするも

つれない態度をとられてばかりですが

フィリップはあきらめられず

どうにか近づこうとします。



しかしミルドレッドは残酷で

彼の好意を利用しては手ひどく裏切り

フィリップは深く傷つきます。



失意のなか、美術の道は

先が見えないと感じ始めたフィリップは

恥をしのんでイギリスへ戻り、

父の職業だった医者となり

再起をはかることにします。



医者としての勉強や実習は楽しく

やりがいをもって

医学校での生活を送りますが

さらなる悲劇がフィリップを襲い

苦しみの底に突き落とされるのです……。



あらすじを簡単に書きましたが

ブラックステイブルでの日々、

学校での出来事、自我の葛藤と

ドイツ留学、会計事務所、

パリの美術学校で出会った

人々との交流や心の動きが

とても細かく描き込まれていて

上下巻ともにどっしりとした

読みごたえがあります。



あどけない少年だったフィリップは

数々の不運と不幸が重なって

ひねくれた性格になってしまうため

物語前半は

「なんて自分勝手で恩知らずなやつなんだ!」

と嫌な気持ちになりましたが…



いろんなことを学んだり

経験したりすることで

コンプレックスや自意識を

乗り越えようともがく姿は

他人事に思えず、



怒涛の展開を迎える後半部では

打ちのめされる姿に胸が痛み

どうか救われる結末であってほしいと

祈りながら読みました…。



読み終えるのに根気のいる物語でしたが

下巻を読みはじめる頃には

引き込まれるように読めました。



そのように引き込まれたのは

「挫折」がたくさん書かれていた

からかもしれません。



友情の挫折

恋愛の挫折

学校生活の挫折

夢の挫折(何度も、、)



フィリップは何度も傷つき、

みじめな気持ちになり

自分の不幸を呪います。



しかしフィリップは

人生に絶望せず



伯父や伯母、美術学校仲間や

後年知り合う親切な友達などに

助けられたり、

自分で思考を繰り返して

気持ちを落ち着かせたりしながら

時間をかけて少しずつ

立ち直っていくのです。



この物語には

いろんな人が登場します。



敬虔なクリスチャンの伯父、

愛情深く優しい伯母、

不自由な足をからかう残酷な同級生、

フィリップの愚かさを優しく諭す校長、

口は達者だけど行動に移さない留学仲間、

フィリップに好意を寄せる女性、

(結局フィリップにフラれてしまう)

長年在籍していて野心もあるのに

一向に絵が上達しない美術学校仲間、

したたかな悪女のミルドレッド、

にぎやかに楽しく暮らす大家族のアセンリー家

などなど…。



堅実な人もいれば

ひたすら他人を都合よく利用する人、

芸術に身を注いで困窮してしまう人、

夢破れて絶望してしまう人、

自分がやりたいことがなんなのか

わからなくなってしまった人、

ほんとうに多種多様な人物が登場して、

フィリップに大きな影響を与えます。



彼らとの出会い、別れで

フィリップはさまざまな示唆を得て、

自分の生き方をかえりみ、

時には感情のまま

愚かな行動に走りながら

自分の人生の「模様」が

自分と他者によって複雑に編まれていく

ことを噛み締めるのです。



「これまでの長かった苦難の道を振り返り、それを喜んで受け入れよう。これまでの人生をつらいものにしたこの足を受け入れよう。このせいで性格がゆがんでしまったのは間違いない。しかしいまになってみると、この足について考えることによって、自分を省みる力を得て、それを楽しめるようになった。これがなかったら、美に向ける鋭いまなざしも、芸術や文学への情熱も、人生の様々な出来事への興味も生まれなかったかもしれない。(中略)そしてわかったのは、世界には普通の人間などほとんどいないということだ。だれもが、体や心になんらかの不具合を持っている。(中略)どうしようもなかったのだ。自分にできるのは、人のよいところを受け入れ、人の過ちに耐えることしかない。」(下巻 612頁)



物語の最終部で

フィリップは自分の身におきた

苦難を振り返りながら

それを受け入れます。



挫折に絶望してしまった人もいるなかで

フィリップが苦難にめげず

寛容に受け入れられるようになったのは、

「人間の絆」に助けられたから。



いじめられたり

裏切られたり

利用されたりと

「人間の絆」に苦しめられた

時もありましたが



結局は人のつながりが、

人とのつながりによって得られた

経験や感情や思索が

挫折ばかりの人生の支えに

なっていたのです。



この物語を読みながら、

生きている国も時代も

まったく違うのに

まるで自分のことが描かれているように

感じてゾワッと震えることが

多々ありました。



わたし自身も

コンプレックスがあり

人間関係に苦しみ

挫折した経験があるからです。

(というか、誰でもそういう

経験があるのだと思います)



そしてこれから

もっと大きな挫折、不幸が

待ち受けているかもしれません。



その時はきっとすごく

落ち込むけれど、

フィリップのように後に振り返って

苦難の道も“模様”なのだと

寛容に受け入れられる人間でありたいと

強く思わされました。



この物語は「人間の絆」

というタイトルですが

人間の身勝手さや愚かさも

克明に描かれていて、

この物語に人間の本性が

詰まっているようにも感じました。



とても長く、

決して明るくない物語だけれど

挫折を経験した人には

すごく救いのある物語ではないかと

感じました。



この作品は読書会の課題図書なので

読書会をしながらもっと深く

読み込みたいと思います!



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