山本文緒さんは、地に足のついた物語を書く人だと思います。

 

 

小説なのでそれなりにドラマはあるけれど、

登場人物に都合の良い設定や展開はなく、

厳しい現実と向き合い、苦しみもがきながら前を向こうとする人々を

鮮明に描いてきた作家さんだと思っています。

 

 

『ばにらさま』は山本さんの珠玉の短編6本が詰まった一冊。

 

 

本作が山本さんの最後の単行本となりましたが、

最新作ではなくこれまで文芸誌に寄稿してきた短編が収録されています。

 

 

「ばにらさま」

冴えない会社員の「僕」にできた初めての彼女。

彼女はアイスのように冷たくて白くて、温めてあげたくなる子で……

 

 

「わたしは大丈夫」

エアコンの電源を抜くほどに倹約家の「私」。

夫と娘とつつましく幸せな日々を送るけれど、息苦しさがふいに襲い……

 

 

「菓子宛」

若くて細くて不安定な胡桃(くるみ)は、「私」とまた一緒に住もうと言う。

胡桃はかけがえのない存在だけれど、胡桃と一緒にいる苦しさも同時にあって……

 

 

「バヨリン心中」

祖母から聞く、バイオリンを抱えた青年との熱い恋の話。

恋を知らない「私」は思わず祖母の話に聞き入ってしまい……

 

 

「20×20」

作家であり主婦でもある「私」は、主婦をさぼってリゾートマンションに缶詰の日々を送る。

マンションの住人との付き合いを恐れ、孤独に過ごす日々の中で「私」は自分の中にある残酷さに気づく……

 

 

「子供おばさん」

47歳の同級生の突然の死。

一時期仲が良かった「私」は気まずい思いが駆け巡るなか、同級生の兄からあるものを託されて……

 

 

この物語集には

ひとりでいることのむなしさと

だれかと一緒にいることのしんどさが

描かれています。

 

 

ずっとひとりでいたくはないけれど、

誰かと一緒にいるとそれはそれで大変で。

 

 

そんな人間のわがままに付き合うもんかと

言わんばかりに人生は思い通りにいかなくて。

 

 

満たされない思いで苦しみもがいている

登場人物の姿に、つい自分を重ね合わせて

読み込んでしまいました。

 

 

登場人物たちが隠している事情が

後半部になって明らかになる展開にも

引き込まれました。

 

 

この物語を読んで、

人間は思っている以上に冷酷な生き物だということを

思い知らされました。

 

 

自分を守ることに精一杯で

他人のことなど思いやれない。

 

 

それがたとえ家族でも、しんどいときはしんどい。

 

 

そういう冷酷なところがあるからこそ

誰かと触れ合って温もりを感じたいし

誰かからの優しさがすごく心に染みて

恋に熱中するのかもしれません。

 

 

最近ひとりの時間が欲しい、と切に思う

子育て中のわたしですが、

こういう人間の冷たさを自覚して、

いまここにある温もり、人の温かさを噛み締めようと

強く思わされました。

 

 

山本さんの訃報を聞いてとても驚きましたし、

もっと作品が読みたかったとすごく残念に思いました。

 

 

山本さんはどんな気持ちで作品を描いてきたのでしょう。

すっと言葉が降りてくるときもあれば

雑巾をふりしぼるようなときもあったのでしょうか。

執筆は孤独な戦いだったのでしょうか。

 

 

「20×20」の「私」の心情が、どうにもフィクションに思えなくて

そんなことを考えてしまいます。

 

 

山本さんが残された言葉は、

わたしの心を震わせ、現実を見つめさせ、

人生思い通りにいかないけれど、

めげずにこつこつ頑張ろうという気持ちにさせてくれます。

 

 

素晴らしい作品を書き続けてくださり

本当にありがとうございました。

 

 

山本さんが残された作品を

これから大事に読み返そうと思います。

どうか安らかにお眠りください。

 

 

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