育児の息抜きに
軽く読める小説が読みたいと思って手に取った
向田邦子『思い出トランプ』(新潮文庫)。


ページ数は多くなく、
軽く読めると思いきや…
ものすごくこってりした読後感が残りました。


本作は直木賞受賞作の
「花の名前」「かわうそ」「犬小屋」ほか
10編が収録された短編小説集。


どの物語も
隠しておきたいあやまちや
やましい記憶、後ろめたい出来事を
回想として振り返る形で、
その裏にある、人の「うらみ」を
描き出しています。


憎めない愛嬌をもつかわうそのような妻の
残忍さが垣間見える「かわうそ」


不美人な愛人が変貌していき
坂の上のマンションまでの道のりが重くなる
「だらだら坂」


亡き母の意味深な視線に父は嫉妬し
息子は母の面影に囚われ続ける「はめ殺し窓」


浮気相手だった部下の結婚式に妻と呼ばれ
不穏な思いに駆られ続ける「三枚肉」


女房に逃げられた男が心のよりどころを求めて
近所の新店バーに入り浸る「マンハッタン」


孤独な男が自分の居場所を作ろうと
他人の家庭にかまい続けた「犬小屋」


男眉に生まれた姉と、地蔵眉に生まれた妹。
いつまでも妹の器量好さに嫉妬し続ける「男眉」


事故で息子の指を切り落としてしまい
後悔し続ける母を姑は責め続ける「大根の月」


派手な性格の姉と、ほどほどを好む弟。
疎遠となった今、昔を懐かしむ「りんごの皮」


捨てようと思っても捨てられなかった
苦い記憶がよみがえる「酸っぱい家族」


寝込んで会社を休んだ日、
耳が無性に気になった幼少期を思い出す「耳」


夫に仕込んだ花の名前や雑学が
あらぬことに使われていると知る「花の名前」


父の葬式で久しぶりに会う弟に
忘れたい過去を思い出す「ダウト」


この13編のなかには
浮気をされたことへのうらみ、
浮気をしたこと、魔が差すことへの言いわけ、
小さく積み重なるうらみ、
うらまれていることへの気づかぬふり、
過去のあやまちの後悔と罪悪感が
描き尽くされていて、
身に覚えのある黒い感情と
うらみの底知れなさに身震いさせられました。


そして
「うらみ」の感情は思った以上に
身近で簡単に出てくるものだと
思い知らされました。


人間、誰しも
自分の弱みを持っていて、
その弱みを隠したりごまかしたりしながら
なんとか生きているんだと思いますが


誰かが自分の弱みを思い出させ
突き付けさせた瞬間に
うらみの感情が湧き上がるのだと
この物語を読んで思いました。


「思い出トランプ」と言うより
「うらみトランプ」とも言うべき
作品集に感じましたが
作中で印象深い一節がありまして。


「電話があったわよ。あのひと、一体……」
追い討ちをかけると、夫の足がとまった。
「終ったはなしだよ」
そのまま入って行った。
(中略)
花の名前。それがどうした。
女の名前。それがどうした。
夫の背中は、そう言っていた。
(217頁 「花の名前」)


この一節は
夫の浮気がばれて開き直っている場面ですが
物語展開的には
夫が妻から下に見続けられたことへの
うらみを晴らす場面とも読み取れます。


繰り返される「それがどうした」は
夫の口から出たものではありませんが
うらみ、うらまれることは生きている以上
避けられない人間の営みだと思わせるような
言葉の強さを感じました。


簡単に人をうらむことができてしまうなら
弱みにハマってあやまちをおかすことも
それで誰かにうらまれることも
避けられないことだと背負い続けて
自分なりに「終ったはなし」「それがどうした」
と消化するしかないのかもしれません。


うらみも背負って「思い出」に
するしかないのかもしれません。


人生30年弱しか生きていない自分は
うらみにびびってしまいますが…
この物語からは
うらみ、うらまれることも人生だと
言われたような気持ちになり
自分にはそう思える度胸も経験値も
まだないなぁと痛感させられました。

 
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