こんにちは!
今日は「文學界」2021年5月号から文學界新人賞受賞作の九段理江「悪い音楽」を読みました。
文學界新人賞は例年芥川賞候補作・受賞作が出ている期待度の高い文学賞です。
羽田圭介さんの新作「Phantom」も掲載されているし、文學界新人賞も載っているしで今月の「文學界」はお買い得ですね・・!
九段理江「悪い音楽」は、音楽教師の「私」が周囲の人たちの「感受性」に巻き込まれながらも自身の音楽を貫いていく物語です。
「私」は著名な音楽家を父に持ち、音楽に恵まれた人生を歩みながらも音楽家の道には進まず中学の音楽教師として働き、音楽以外の雑事に振り回される日々を送っています。
授業や進路相談はもちろんのこと、ひとりの女子中学生をめぐって暴力騒ぎになった男子中学生の仲裁など、合理的だったり理不尽だったりする学校内の雑事を「私」は淡々とこなしていたのでした。
「私」は彼らのふるまいを冷めた目で観察します。
女子中学生の彼女を横取りされ思わず殴ってしまった生徒。
殴られた生徒が泣いたかと思えば「マジでぜってぇ許さねぇし」と怒る様子。
怒りをあらわにしてヒールを鳴らすその中学生の親。
仕切り役の教師の刑事ドラマ調の芝居っぽさ。
彼らのなかに渦巻く感情の昂りにどうしても同調できない「私」は、人間の感情は既存のメディアやアートによって刷り込まれたつくりものなのではないかと仮説を立て、彼らの「感受性の豊かさ」を鼻白んでしまいます。
だからといって「私」自身に感情がないわけではなく、合唱祭で割り当てられた自分の演奏の練習に一日二時間以上費やしたり、寝食を忘れてピアノを弾き続けたりするほどに自身の音楽に情熱を注いでいました。
ただ、「私」は自分以外のことに興味が持てず、自分が発する音や身体感覚を研ぎ澄ませることばかりに意識が向いてしまうのでした。
仕事と音楽の間を行き来しながらも、「私」と「感受性豊かな」周囲の人たちとの間にはどんどん溝ができていき、「私」はあることをきっかけに生徒からの信頼を失っていたことに気付かされます。
「私」は思った以上にショックを受け、彼らの気持ちに配慮しようとしたふるまいが無駄であったことに打ちのめされます。
教師としての立場がなくなった「私」は挽回のチャンスも頭によぎりますが、数々のハプニングの末に名誉挽回することなく、殻に閉じこもるようにして自身の音楽へ突き進んでいくのです… 。
物語を最後まで読み終え、「悪い音楽」という言葉の不穏さと後味の悪さが余韻となって強く残りました。
音に恵まれた人生を送り自分なりに情熱を注いで音楽と向き合ってきたからこそ借り物の「感受性の豊かさ」を認めないし許さない、と言うような「私」の一貫して冷めた態度にゾッとするものを感じました…。
結末にかけての「私」の冷徹さは圧巻。
「私」が自分の殻に閉じこもる形で物語は幕を閉じますが、「私」に反省の念がほぼ見られないことが後味の悪さを押し上げました。
たびたびシリアスなシーンで「私」がラップのフレーズを考えたり口ずさんだりしていて、「私」は反省どころかむしろ開き直っていて、読みながらそのシュールさに笑えてしまいます。
身近にこんな人がいたらあまりの溝の深さに心が折れると思いますが、小説だからでしょうか、ブラックユーモアが作中で煌めいていて、ザワザワするけど面白い…!という感覚にさせるのでした。
作中の「毒」の効かせ方が巧妙だと感じました。
物語全体を通して流れる不協和音がいつまでも胸に残って離れません。
なんだかんだ言って最後まで夢中になって読み、惹きつけられた物語でした。
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