直木賞候補作の坂上泉『インビジブル』(文藝春秋)を読みました。


戦争終結から9年、いまだ混乱状態にる大阪の街でしがらみに揉まれながら悪に向き合う若手警察官の奮闘物語です。


街には多くの浮浪者がうろつき、ヤミ物資の流入は止まらず、戦後のどさくさに紛れて大儲けする者もいれば全てを失い途方にくれている者もいる、混沌としかいいようのない大阪で、若手警察官の新城は自分の正義感とぶつかりながらしぶしぶ職務に励んでいました。


母を空襲で亡くし、姉が母代わりにあれこれ働くものの足を悪くした父は酒と博打に溺れてしまい、新城は変わり果ててしまった家族を見るのが嫌になり、やり場のない苛立ちを抱えながら日々を過ごしていたのでした。


そんななか、管轄内で猟奇殺人事件が発生。
被害者は政治家秘書で、頭に麻袋をかぶせられ、刃物で何箇所も刺された状態で発見される。


刑事志望の新城は初めての殺人事件捜査に勇み立つのですが、そこに冷水を浴びせるように上層部から指示が飛び、新城のバディに国家地方警察(通称・国警)からきた警察官僚・守屋が当てられ、新城は守屋の“お目付役”を頼まれることに……。


当時の警察は国警と自治警察の二本立てで存在し、自治警察は市民に寄り添う「民主警察」という理念をかかげて作られた組織でしたが、当時、国警と自治警察を一本化する動きが活発化し、水面下では双方の組織の権力争いが繰り広げられていました。


管轄内で起きた殺人事件を自分たちの手柄にしたい自治警察の大阪市警視庁は、国警に余計な手出しされないように“お目付役”をあてがったのでした。
つまり新城は上層部のしがらみに巻き込まれる形で守屋とバディを組まされることになったのです。


帝国大卒のエリートの守屋は高飛車な口調で聞き込みもままならず、新城は押しつけられた役目にわずらわしさを募らせますが、地道に捜査を続けていきます。


しかし聞き込みの成果はあまり出ず、被害者が秘書をつとめた代議士・北野正剛にもほとんど話を聞けず、捜査は難航。


成果があがらずうなだれる彼らにさらに追い打ちをかけるように「川から死体が上がった」という通報が入るのです……。


戦後大阪の混沌とした街並みと警察組織のしがらみの描写が見事に混ざり合い、そのなかでもがく人々の姿がより際立って見え、引き込まれました。


新城と守屋のバディ物語、事件の行方、“謎の人物”の語りなど細かいテンポで場面転換があり、そのスピードに乗って一気に読み終えることができました。


タイトルの「インビジブル」は「目に見えないもの」という意味です。


わたしはこの作品を、組織のしがらみと戦争の傷という「目に見えないもの」と向き合い戦った男たちの軌跡と覚悟の物語だと感じました。


戦後の混沌期ではみんなが生きていくのに精一杯で、もがいたけれどあえなく戦いに負けてしまう人も大勢描かれます。


追い詰められる人々がひしめく大阪の街で、新城は自分が背負うものに向き合い、その重みを実感するのです。


混乱の中を必死にもがき続ける人々の姿が胸に染みました。
目に見えない傷や混乱は、歴史の記録には残らないかもしれませんが、なかったことにはなりません。
こうした目に見えないものを残すことが文学の使命であり力なのだろうと改めて感じました。


読み終わってしばらく経っても彼らの気迫が胸に残って離れない、凄みのある作品でした。


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