装丁のうどんの絵が美味しそうで……気になって手に取りました(食いしん坊w)。
たくさん美味しい料理が出てくる「食べものがたり」かと思いきや、この物語は「食べものがたり」の要素もありつつ「家族小説」の意味合いの強い、母娘の確執の物語でした。
主人公はシングルマザーの麻有子。
妊娠中に夫と別れ、父を知らないまま娘の葵は育ちますが、麻有子の不安をよそにまっすぐ育ち、中学生となった今ではひととおりの家事ができるぐらいにまで成長していました。
麻有子は葵の存在を心から頼りにし、また、葵の存在が愛おしくてたまりません。
しかし麻有子には長年克服できない"黒い感情"があり、その感情がときおり表れては麻有子の胸をしめつけます……。
その“黒い感情”とは、麻有子の母・正恵に向けられたものでした。
正恵は幼少期から麻有子を厳しくしつけ、野菜の切り方や塩もみの時間などの細かいことまで逐一指摘をするほど。
麻有子には年の近い姉・鈴子がいますが、鈴子には甘く、麻有子には厳しくしつけていた正恵のことを麻有子はいまだに許せず、実家と距離を置いて暮らしていたのでした。
麻有子と葵で平和に暮らしていたある日、麻有子の気持ちを大きく揺るがす出来事が起こります。
きっかけは姉からの一本の電話。母が脳梗塞で倒れて入院したという。
麻有子は動揺しますが実家は遠く、すぐに駆け付けることはできないと姉に伝えますが姉は「とにかく来て」の一点張り。
姉にも不信感を持っていた麻有子は嫌な予感を抱きながら姉のもとへ向かうと、「倒れた母を引き取ってほしい」と麻有子にとって最悪のお願いをされてしまいます。
押し問答の末に母を引き取ることになってしまった麻有子は暗い気持ちで家に帰りますが、葵はそんな様子の麻有子に、工夫ながら同居生活をやっていこうと励まし、不穏な空気のまま、母との同居生活がスタートするのです。
この物語では母娘関係の光と闇が克明に描かれていて、麻有子の心情に胸を痛めながら読み進めました。
実は母の正恵もシングルマザーで、麻有子が小さいころに離婚し、女手ひとつで娘二人を育てたのですが、麻有子は正恵の立場にどうしても寄り添えず、黒い感情をこらえることができません。
また、麻有子は姉の鈴子の身勝手さにも怒りをあらわにしますが面と向かって強く言い返すことができず、自分の感情のコントロールができないことにもさらに落ち込んでしまうのです。
そんな麻有子にとって救いとなるのが、娘の葵の存在です。
葵は麻有子と正恵の間をとりもつように動き、正恵の小言も上手くかわして乗り切ります。
麻有子は器用に立ち回る葵に助けられながらも、葵にかなりの気を遣わせてしまっているのではないかという不安も抱いてしまいます。
こう書くとまるで麻有子が何も動けないように思えますが、むしろ麻有子は正恵に厳しくしつけられたことで家事の腕前はかなりのもので、そうなれたのは母のおかげだと思う反面、やはり負の感情が押し寄せるというループにはまってしまうのでした……。
この物語を読んでまず思ったのは、「葵ちゃんが良い子すぎる!!」ということです。
葵は中学生ですが、家事はもちろん勉強もそつなくこなし、また周りに振り回されない芯を持った大人びた子として描かれます。
料理スキルもかなりあり、パスタソースも手作りするほど。
果たして自分が中学生だったときはここまで成熟していただろうか……いや絶対そんなことない。と言い切れるほどに、葵の器用さがまぶしくそしてとても魅力的に映ったのでした。。
そしてもうひとつ思ったのは、「最後に親に「ありがとう」と言った日はいつだったろう?」ということ。
わたし自身の母娘関係は良好です。
いまだに一人娘のわたしにあれこれと世話を焼いてくれます。
(ありがたや…🙏)
母は仕事柄、細かいところの掃除やお菓子作りが得意でよくしてくれるのですが、そういえば、そういうときにちゃんと「ありがとう」って言っただろうか?……というと、ちょっと自信がありません。
(誤解を招きそうなので補足すると、もちろんお礼は言いますが、心のこもった「ありがとう」をちゃんと言えてたかというと自信がないということです!)
日ごろのお礼をきちんと伝えられたのは、去年の結婚式での親への手紙くらいかもしれません。
心のこもった「ありがとう」は、この物語の不穏な空気を和らげる大事なキーワードになります。
そしてその言葉は読んでいるわたしにもブーメランのように突き刺さります。
「ありがとう」という言葉。
すごくシンプルで、簡単で、ささいなことであるからこそないがしろにしてしまっていないだろうか?
そう突きつけられたように感じて思わぬショックを受けましたし、「ありがとう」をきちんと言う葵のまっとうさにも頭がさらに下がりました。。
最後にもうひとつ感じたのは、娘は母のことを本当によく見ているということです。
正恵の厳しいしつけにがんじがらめになってしまった麻有子も、麻有子の精神的負担を案じて先回りして行動する葵も、母のことをよく見ているからこそ、そういう状態になっているのだとよくわかります。
自分の生き様をまじまじと見つめられ、そして今後の自分の人生に思いっきり参考にされる。
そう考えると、育児を通して自分の生き方を試されているようにも感じますし、親という存在の重みをさらに強く感じたのでした。
ドラマっぽいわかりやすい展開で読みやすい一冊ですが、自分の親子関係に当てはめたりなにかと自分に突き刺さるところの多い名作です!
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