こんばんは〜


芥川賞候補作、
どんどん読んでま〜す。



三木三奈「アキちゃん」(文學界5月号)


ブログタイトルにも書きましたが
ストイックに「憎しみ」が描かれた物語です。


芥川賞候補作、穏やかではないですねぇ。笑


この物語の「憎しみ」がどれほどのものなのかは、冒頭からすぐに伝わってきます。


「わたしはアキちゃんが嫌いだった。大嫌いだった。当時は大嫌いという言葉ではおさまりきらないものがあった。それは憎しみにちかかったかもしれない。いや、ほとんど憎しみだった。わたしはアキちゃんを憎んでいた。まいにち学校で顔を突き合せれば憎み、家に帰ってからもうじうじと憎み続けた。ベッドについてからも憎しみの果てに意識をなくし、翌朝、目をさましたときにはもう憎んでいた。」(10頁)


冒頭から「嫌」「憎」の連続。
この勢いのままに、主人公「わたし」の「アキちゃん」との関係や、「アキちゃん」の「わたし」に対する冷酷な仕打ちが語られていきます。


この物語はすでに成人した「わたし」視点から当時を振り返り、小学五年生の「わたし」の幼さ、不器用さを丁寧に分析しながら「わたし」の「アキちゃん」への揺らがない「憎しみ」が描かれてゆきます。


「アキちゃん」は、ほかの女の子の前ではどこか媚びへつらうような態度を取るけれど、「わたし」に対しては暴言を吐いたりつねったりするような二面性を持っていました。


「わたし」は「アキちゃん」の横暴なふるまいに憎しみをたぎらせながらも、「やめて」と言うくらいの反抗しかできません。


それは「わたし」の不器用さによるところで、表面上では「アキちゃん」に理解ある友達として演じてしまうところがあったからなのでした。


「わたし」が反抗しないことをいいことに、「アキちゃん」のふるまいは横暴さを増してゆきます。
「わたし」は憎しみに耐え切れず、クラスメイトの「バッチャン」に「アキちゃん」に呪いをかける方法を聞きに行きます。


そこで「バッチャン」の口から出たのは「カルマ」という言葉。


「悪い行いも、良い行いもすべて自分に返ってくる」という言葉に「わたし」は衝撃を受け、「わたし」は「アキちゃん」への「憎しみのカルマ」を昇華させようと努力しはじめるのですが……。


この物語には、小学校高学年という幼さゆえの暴力性と視野の狭さと不器用さが巧みに描かれています。


小学生の頃、わたしもクラスメイトから“謎の支配”を受けていたことがあり、苦い記憶がよみがえってきて鬱々とした気持ちになりましたが、同時に描かれた「視野の狭さ」がほんとうにリアルだ、と感じました。


当時、自分も「クラスの中」か「家の近所」ぐらいの視野しか持てなかったし、「支配されていたクラスメイトとその他数人との交流をいかに円滑にするか」が一日の最重要課題になっていたので、街の景色やその他大勢のクラスメイトは目に入らず、すごくすごーく小さい世界を自分のなかで構築していたんですよね。
身に覚えのある「視野の狭さ」と不器用さに心から震えました。


この物語では、どうして「わたし」と「アキちゃん」がこういう関係性になったのか、というところは明らかにされず、
ただひたすら「わたし」は「アキちゃん」を憎み、「アキちゃん」は「わたし」にひどいことをする、という関係がループし、憎しみだけがどんどん増幅してゆきます。


物語が進むにつれ、「アキちゃん」についての重大な事実が明かされます。
それは「わたし」やクラスのみんなが承知している事実で、「読者」だけが知らなかった事実です。


その事実について、「わたし」はなんの「意味づけ」も「回収」もしません。
「アキちゃん」は「わたし」に憎しみを生み出す装置、としてでしか「わたし」の目には映らないからです。


「アキちゃん」への憎しみは最後まで絶えることがありません。


「いまとなっては多少、想像することもできる。けれどもあのときのわたし、十八のわたしにはアキちゃんがうけた仕打ちについて考えることができなかった。(中略)
そのときのわたしは何も考えなかった。いや違う、もっとずっと残酷なことを考えていたのだ。(了)」(41頁)


「アキちゃん」=「憎しみ」の方程式は最後まで崩されないまま、この物語は幕を閉じます。


この物語の不思議なところは、ストイックに「憎しみ」を描き上げた物語なのに、「毒気」のようなものをあまり感じないところです。


途中でワラ人形が出てきたときはゾクっとしましたが笑、それでも物語全体を通しておどろおどろしさをあまり感じなかったのです。


それは成人した「わたし」の回想として語られているからか、「アキちゃん」の重大な事実があるからか、最後に「アキちゃん」の因果応報的な描写がはさまるからか……この物語は読み手に負荷のかからない形で締めくくられている、と感じられたのです。


それなのに、物語を読んで印象に残るのは「憎しみ」という感情。
……この作品がデビュー作で、芥川賞候補作に選ばれたのも納得、と思いました。


読者に負荷をかけすぎずに「憎しみ」という感情をすくい上げる(金魚すくいのイメージです)のは、なかなかに難しいことではないかと思います。


過去語りの距離感、「わたし」と「アキちゃん」の関係性をどこまで明かすかというバランス、「アキちゃん」の重大な問題、そして「アキちゃん」のその後のエピソード、どれもわたしの「憎しみ」を邪魔しない程度に描かれ、最後にわたしの「憎しみ」だけがぴちぴちと浮かび上がるように作り上げられている、と感じました。


この物語はいろんな読み方ができそうですが、わたしは「憎しみ」をすくい上げるバランス感覚が絶妙で秀逸な作品だと感じました。




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