こんにちは~!
12月の一冊目は、友達が絶賛していた本を読みました。
いままで手にしてこなかったジャンル!
ケン・リュウ『紙の動物園』(ハヤカワ文庫)
ハヤカワ文庫といえば…SF・ファンタジー!
ハヤカワ系(造語)、これまで全然読んでいませんでした。
これまでハヤカワ系を読まなかったのは
「縁がなかった」以上の理由が浮かばないのですが、
なんてもったいないことをしていたんだー!と今は強く思います。。
ケン・リュウ『紙の動物園』は7編のSF短編集。
著者は中国出身で、幼少期にアメリカに移住し、今もアメリカで活躍されている作家さんです。
本書には著者のルーツである中国とアメリカを舞台にした物語が多くありました。
以下、簡単なあらすじをご紹介。
「紙の動物園」
アメリカ人の父と中国人の母を持つ少年の遊び相手は、母が作った紙製の動物たち。母は不思議な力を持っていて、折り紙に息を吹きかけると、紙製の動物たちは「命」を宿し、元気に家じゅうを走り回るのです…。
「月へ」
描かれるのは弁護士のサリーと難民申請を出す中国人男性・文朝とのやり取り。
迫害されたと訴える文朝の「物語」には虚偽もあれば事実もあり、「真実」が見えないサリーは戸惑ってしまいます。
父子が月の世界へ行くおとぎ話が間に挟まれ、「移住者/定住者」の両者の隔たりが際立つように描かれています。
「結縄(けつじょう)」
縄を結うことで「文字」を作ってきた民族の物語。
ひっそりと原始的な暮らしをしてきた彼らですが、ある時外部からやってきた「ト・ム」という研究者によって暮らしが一変してしまいます…。
原住民/開拓者(または先進国)の隔たりと、先進国の「暴力」が描かれる風刺的な物語です。
「太平洋横断海底トンネル小史」
先の大戦が「起こらなかった」のは、太平洋を横断する海底トンネル掘削計画があったからーー。
アメリカとアジアを結ぶ海底トンネルができたことで戦争は起こらなかったが、トンネル掘削中に別の「争い」が起きていて…。
ドラえもんの「もしもボックス」的な物語ですが、こちらも風刺的な物語になっています。
「心智五行」
宇宙でひとり遭難してしまった女性がイチかバチかで不時着した惑星にたどり着いた物語。そこでは身体のバランスを「五行」で表す東洋医療的文化が発達した地で、西洋文化的環境で育った女性はかなり戸惑うのですが…。
「愛のアルゴリズム」
まるで人間のような人型AIを作成した研究者の苦悩の物語。
あまりにも精巧なAIを開発したため、人間もアルゴリズムに従って生きているのではないだろうか…?という疑念が消えず、心を病んでしまいます…。
「文字占い師」
文字占いとは、漢字一文字を分解し、そこから新たなメッセージを受け取るもの。アメリカから台湾に引っ越したリリーは学校生活になじめず、ひとり寂しく過ごしていましたが、「文字占い師」の老人と少年に心を救われます…。
この物語の歴史的背景には二・二八事件があり、読後感の重い物語となっています。
感想としては全部めちゃくちゃ面白かった!なのですが笑、
『紙の動物園』全体を通して感じたのは「わたしは世界を知らなすぎる」ということでした。
これまで現代・近現代の日本文学ばかり触れていたため、科学的な視点や「もしもボックス」的な発想がまるで欠けていたことを思い知らされ、かつそうしたSF作品だからこそ「社会の現実」がより際立つということも体感しました。
読み終わり、自分はなんて狭い世界にいたんだ…!!と嘆きました。笑
このなかで特に好きな物語は「心智五行」。
なんというか、自分が初めて海外旅行に行ったときの不思議な感覚が呼び戻されました。
異文化に触れはじめたときの戸惑い、ちょっとした拒否反応、そののちの「受容」…。
そんな感じの心の揺れ動きが描かれていて、ラストはあたたかな気持ちになりました。
ファンタジーだからこそ「現実的」な目線を鍛えさせてくれるような傑作SF作品でした。
これからは少しずつSFジャンルも開拓していきます!
