こんばんは〜!
ものすごく突然ですが、「渡る世間は鬼ばかり」というドラマをご存知でしょうか。
これこれ。
9月の連休にスペシャルドラマをやるみたいですね。
「渡る世間は鬼ばかり」、通称「渡鬼」、わたしがちいさい頃からずーっと連続ドラマが放送されていました。
あらすじは全く覚えていないのですが、ドラマのテーマ曲と湿っぽい空気感は強く覚えています。
登場人物みんな陰のある表情をしていたような。
なんかみんなずっと苦労していましたよね。
なぜいきなり「渡鬼」の話になったかというと、「渡鬼」の“元祖”かもしれない!?名作を読んだからでした。
宮本輝『流転の海 第一部』。
1982年初出の長編小説です。
(わたしの頭の中では「渡鬼」のテーマ曲が流れています……)
この作品の長編具合は「渡鬼」に並ぶ長さです。
全9部構成なのですが、この作品が完結したのはなんと2018年!
36年に渡って書かれ、昨年ようやく完結したのです。
この作品は完全フィクションというわけではなく、著者自身の父をモデルにした自伝的大河小説という位置付けになっています。
『流転の海 第一部』は、終戦直後の大阪で自身の会社の復興を目指す経営者・松坂熊吾とその周囲の人々による人間ドラマが描かれています。
松坂熊吾はその名の通り熊のように猛々しい男で、戦前は持ち前の胆力と先を見る目の鋭さで自身の会社を一代で成した実力者として名を轟かせていました。
経営の腕はもちろん、熊吾は人を見る目も鋭く、人に幾度裏切られても反撃してやり込めてしまいます。
また、どれだけ裏切られようと自分は裏切るようなことをしない気高さと懐深さもあり、熊吾を慕う人は数多くいるのでした。
そんな熊吾の転機となったのは二つ。
戦争と子どもでした。
熊吾の会社は中国との貿易が中心でしたが、日中戦争により解散を余儀なくされました。
大阪駅近くに建てた「松坂ビル」は空襲で焼け、跡地には闇屋のバラックがひしめく始末。
また空襲のドタバタで人に貸した金は返ってこず、人手もなくなりました。
戦前に栄華を極めた熊吾は、戦後、一転してわずかに残った財産と人脈のみで再スタートせねばならない苦しい状況に陥ったのです。
当時の熊吾の年齢は50歳。
人生の盛りを過ぎ、戦争で大きな痛手を被ったものの「まだまだやれる」という野心は消えていませんでした。
そんなタイミングで熊吾は妻との子を授かります。
まさかできると思っていなかった熊吾は思わぬ喜びに打ち震え、これまで感じたことのない深い愛情を子どもに注ぐようになります。
子どもは男の子で、伸仁と名付けられます。
熊吾とは対照的に身体が弱く、病気がちな子どもでした。
熊吾は妻を怒鳴りながら息子に甲斐甲斐しく世話をし、ひとたび異変があれば医者へ駆け込み、息子の回復のために庭先の鶏を一羽締め、徹夜で鳥スープを作ります。
そこまでするか、と驚くほどの甲斐甲斐しさには熊吾なりの思いがありました。
熊吾は自分の人生を振り返り、50歳という思わぬ時期に授かった息子に対して宿命的なものを感じてやまなかったのです。
熊吾は胆力、洞察力だけでなく直感も鋭い人間でした。熊吾の直感は突拍子のないものにもかかわらずどこか真理を貫いていて、それが人間を見る重要な判断材料ともなっていました。
熊吾はこの直感に従い「息子が20歳になるまで成長を見届ける」と固く心に誓います。
とはいえ熊吾も人間で、息子を大事にしたい気持ちと、会社を復興させる野心、そしてたまに「魔がさした」としか言いようのない理由で湧き出る欲望がせめぎ合い、葛藤します。
妻をはじめ熊吾の周囲の人間も熊吾の猛々しさに振り回され、時にはうんざりさせられますが、彼らそれぞれの人生の背景も描かれることで、登場人物それぞれが苦難を背負い、自分にとっての幸福を必死に掴み取ろうとする人間模様が描かれてゆくのです……。
第一部を読み終わったとき、漫画のような感想が出てしまいました。
続きが早く読みたい!!!
物語に大きな波があるわけではなく、そして誰かが何かを成したわけでもなく、ただただ登場人物それぞれの人生の浮き沈みと悲喜こもごもが語られるだけなのですが、それがものすごく染みるのです。
自分が結婚したからでしょうか。
社会人になってそれなりに時が経ったからでしょうか。
それなりに人間の弱さを垣間見てきたからでしょうか。
熊吾の洞察力の鋭さに圧倒されたからでしょうか。
終戦直後という、何もかもがぼろぼろの時代。ちょっとした判断で生死の境が決まってしまった苦しく厳しい時代。
そんな時代を生き抜いた『流転の海』に描かれた人々の必死な生き様から、今を生きるわたしたちは大事なことを汲み取らなければいけない。
読みながらそう強く感じた作品でした。
あと8巻、時間をかけて噛み締めて読みたいです。
「渡鬼」があれだけロングランな理由が少し分かった気がしました……。
「北の国から」も似たようなものかもしれません。
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