朝日新聞の読書メディアで興味深い記事がありました。
平成時代に刊行された本の中からベスト30を選出した記事です。
朝日新聞調べ(識者にアンケート調査)ということで、小説からノンフィクション、歴史系まで幅広いジャンルの本がランクインされていました。
読んだことがあるものはあんまりなくて、自分の読書量はまだまだだな~と痛感しました。
村上春樹『1Q84』は途中で読むのをやめてしまったのを思い出しました(おもしろすぎて最後まで読みたくない! みたいな謎の心理が働いてやめてしまったのでした汗 あ~おバカ)。
最近、書店の棚とかこういうランキングの類を眺めては「あ~この冊数、一生かかっても読み切れないな……」と途方に暮れてしまいます。
限りある人生ですが、できるだけ自分の琴線に触れまくるような、心をわしづかみにされ脳髄をめちゃくちゃに揺さぶられるような(どんな?笑)作品に出会いたいと改めて思う今日この頃です。
さてさて「平成の30冊」の話題に戻りますが、平成生まれのわたしとしては、この30冊のラインナップになぜ入らないのか不思議でならない作品があります。
それが綿矢りさ「インストール」。
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第38回文藝賞受賞作(デビュー作)です。
河出書房新社が主催する文藝賞は芥川賞・直木賞作家を多数輩出している純文学系の新人賞です。
有名どころでは山田詠美さん、伊藤たかみさん、羽田圭介さんなど。
最近ではデビュー作が芥川賞受賞作になった若竹千佐子さんや、こないだ芥川賞を受賞した町屋良平さんも文藝賞を受賞しています。
「インストール」を発表した当時、綿矢さんは17歳・現役高校生でした。
これだけでも大きな話題となったのに、綿矢さんはこの2年後に「蹴りたい背中」で史上最年少で芥川賞を受賞し(同い年の金原ひとみさんとダブル受賞)、文学界に衝撃を与えます。
文学系のニュースってだいたい埋もれがちになるのですが、綿矢りささんと金原ひとみさんの芥川賞ダブル受賞は平成史に強く印象を残したニュースだと思います。だいたい誰もが覚えているのではないでしょうか(わたしだけ?)。
「蹴りたい背中」は100万部超の大ベストセラーとなり、綿矢りささんは作品、作家としても新しい時代の到来を感じさせた存在だと強く思うのですが……31位とかなのかな。
というわけで、今回ものすごく久しぶりに「インストール」を読み返しました。
今から18年前、2001年の作品だなんて……震。
「インストール」はどこまでも平々凡々な日常、地味な現実に嫌気が差した高校生の朝子がある日登校拒否を決め込み、母親をだましながら自由な生活を送ろうとする物語です。
この物語の魅力は冒頭からの疾走感と「凡庸な現状を脱したい平凡な若者」の意地悪な描写です。
「自称変わり者の寝言。
「私、毎日みんなと同じ、こんな生活続けてていいのかなあ。みんなと同じ教室で同じ授業受けて、毎日。だってあたしには具体的な夢はないけど野望はあるわけ。きっと有名になるんだ。テレビに出たい訳じゃないけど。」
光一にそう言い終わった後私は、これは甘ったるいなあ、とぼんやり興ざめした。」(9頁)
書き出しから日常に飽き飽きした高校生の気だるさと”若気の至り”的な勢いある文章に心をつかまれます。
学校を休んで自由を手に入れた! にもかかわらず、朝子がやることは母親にバレないようにするための登下校の偽装工作。実際に行動に移したとて気持ちはぼんやりしたまま晴れず、朝子は後ろめたい思いを抱えたまま気だるい日々を送ります。
ある日思い立って部屋の大掃除をはじめた朝子は、おじいちゃんが買ってくれた古いパソコンを発掘します。
朝子はにやにや、これで新たな世界へ……と下心を疼かせますがパソコンは起動せず。粗大ゴミとして断捨離されるのですが、パソコンは思わぬ人物に拾われ、物語はあらぬ方向へ展開します。
「あらぬ方向」とは、風俗嬢の代わりにネットでエロチャットをする仕事を頼まれるというものですが、インターネット黎明期のチャットが懐かしくて身もだえします。
最終部ではネット世界(というかネット風俗)のあっけなさや手応えのなさも描かれ、朝子は自分の人生をふたたび見直そうとします。
読み終わり、ひと息ついて思ったことは、
これ、17歳で書いたの……。という驚きでした。
めちゃくちゃ今更ながら、綿矢りささんの筆力に改めておののきました。
高校生の「現状を変えたい! けど野望はない!」という勢いしかないエネルギー。現実に向き合いたくないあまりに始終ふざけ通しの朝子。謎に大人びた態度で朝子にチャットの指導をする小学生のかずよし。彼らは現状に不満を持っていて、でもその気持ちのやり場がなくてエネルギーを持て余していて、そのエネルギーがエロチャットの世界へ向かっていく感じがものすごく「平成」っぽいなぁ、となんだかしみじみ感じたのでした。
「インストール」懐かしい~! 映画見たことある! などなど思った方は平成の終わりに改めて読み直してみてはいかがでしょうか\(^o^)/
ていうか、平成が終わるまであとひと月半かぁ! ひえ~!!(なんか焦る)
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