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歴史小説が苦手だ。
のっけからネガティブな発言だが、苦手な理由はいくつかある。
まずは、登場人物に共感しにくいこと。
歴史小説の登場人物と言うと、武士か貴族か文化人というイメージがあって(後世まで伝わる人ってだいたいこういう人たちだし)、そのどれにもあたらない平民のわたしとしては彼らに感情移入しにくい。物語ののめり込み度にも比例して、つい「そんなことがあったんだぁ」くらいの感動量ですませてしまう。
それから、もともと歴史が苦手だったというのも大きい。北海道出身のため、全国の地理が頭に入っているようで入っていない学生時代はとにかく歴史の勉強に苦戦した。わたしはそれで大学受験に失敗したくらい。笑
そして、太平の世ではなかったからこその「灰色決着」を許さない感じも苦手だ。武士は戦に負けたらすぐ切腹。または捕らえられて島流し。弱肉強食の勇ましさの裏にはどれほどの血が流れているんだろう……と思うと人間の欲深さに戦慄する。
いままでそう思っていたので今回直木賞候補作になった木下昌輝『宇喜多の楽土』も敬遠してしまい、最後に読むことになってしまった。
せっかく買ったし直木賞候補作だしどんなもんか読んだれー!と思って読むと、意外にも「負け戦」の物語。
歴史上のできごともわかりやすく書かれていて、苦手意識を持っていたわたしでもするすると読み進めることができた。
物語の主人公は安土桃山時代の武将・宇喜多秀家(うきたひでいえ)。岡山城主として豊臣秀吉政権を支えるも、関ヶ原の戦いで徳川家康に敗れる。
……詳しくはウィキぺディアなどで参照してほしいのだが笑、宇喜多秀家はそれなりに戦力を持ち、豊臣秀吉にどんな理不尽な指令を受けても貢献し続けた人物として描かれている。
秀家が秀吉に貢献し続けたのは、秀家の妻が秀吉の養女にあたることと、秀吉に弱みを握られ脅されていたことが大きな理由だった。
宇喜多秀家は優しい人柄の武士だ。
自国の領土で開拓が進められているのを見て、彼らの生活のために武将として戦うことを決意するシーンが描かれる。
こんな武将もいたのね……と素直に驚く。天下を取るためにさまざまな謀略をしかけ秀家を陥れようとする豊臣秀吉や徳川家康の冷酷さが描かれるため、秀家の優しさが際立つ。
関ヶ原の戦いで敗れるまで、秀家は持ち前の人徳で戦力を集め、戦に勝ち続ける。
秀家は時代に恵まれなかった人だ。
もし秀家が現代に生きていたら、地元民から絶大な人望を集めた大地主になっていただろうなぁ…なんて想像する。
戦には敗れてしまったためラストシーンは切ないものだが、それでも信念を曲げずに生き抜いた人としての清々しさが強く印象に残る。
教科書でしか知らなかった武士や大名の人柄をなぞることも、歴史を学ぶ上では大切なことだと強く思った。
そうしないと血で血を流す戦いはいつまでもやまない。
そういう意味で文学の意義を感じた一冊だった。
