読み終わった瞬間、この本を「社会人一年目のわたし」にすすめたくなった。
社会人一年目のとき、わたしは慢性的にさみしかった。
こう書くとすごく「こじらせ女子」っぽいのだが、それはわたしが社会人デビューと同時に今まで住んでいた東京からいちども足を踏み入れたことのない大阪に転勤になったからだった。
会社の上司や先輩方は優しかったけれど、慣れない土地での慣れない社会人生活に加え、恋人との遠距離恋愛がとにかくつらかった。同期はいるものの毎日構ってくれるわけじゃない。研修ばかりでまともな仕事をさせてもらえない入社初期に、わたしは勤務中も終業後も暇をもてあましすぎて気が狂いそうだった。
入社一年目はとにかくさみしさに悶えていたのを覚えている。つらすぎて一年で3回も腸炎になった(おかげで5キロ痩せたけれど)。
なんでわたしばっかりこんな目に合うんだろう、とやり場のない怒り、悔しさ、悲しさが常に襲った。同期は「大阪は楽しいとこやで~大阪で友達つくればいいやん!!」と明るく言うのだが、わたしはとてもじゃないけどそんな気力も勇気もわいてこなかった。
いま振り返れば同期の言うことはもっともで、あのとき勇気を出していろんなところに遊びに行けばよかった、と後悔している。家でさみしさに悶えてくよくよしている暇があったら、とりあえず出かけて「友達をつくる」行動を少しでも起こしていれば、あのころの自分はもっと幸せに生きられたんじゃないか、と今となっては思うのだ。
あのころのわたしは「友達をつくる」手段を知らず、知ろうともせず、気軽に友達がつくれるのはクラブに通い慣れている「オラオラ系」な人たち、というイメージで凝り固まってしまい、行動することなく家でひきこもってマンガを読んだり、たまに大阪にやってくる学生時代の友達と遊んだりしていた。
大阪に4年半暮らしたのちに東京に転勤になったのだが、結局、大阪で「友達をつくる」ことはできなかった。仲良くなったのは同じ会社の人たちばかりで、それは友達じゃない。職場が離れれば一切連絡を取ることもなくなった。
もちろん、無理やり「友達をつくる」必要はないし、いまは学生時代の友達が多いから新たに友達をつくろうとはしていない。
ただ、現状を変えたいと思っているのに何もせずくよくよしているくらいなら少しでも行動するべきだった……と過去の自分を悔やんでしまうのだ。
本書を読んで、この気持ちがさらに強くなった。
本書は巷によくある「文化人がおすすめする読書エッセイ・書評本」的なものではなく、「知らない人に本をすすめる」という「行動」をしたことでかけがえのない経験を得た著者の体当たりエッセイであり、「行動」することの大事さを説いた自己啓発本だ。
知らない人としゃべる、だなんて。
しかも、「X」という謎の出会い系サイトで知り合った人……。
むりむり! ぜったいむり!!
怪しいし! 怖いし! なんか、悪いことに巻き込まれそうだし!
読みながらわたしの防御本能センサーがビンビンに反応する。
著者もはじめは恐る恐る利用していたのだがだんだん慣れていき、どんどん「怪しい」「怖い」フィルターがとりはずされていく。
著者は少し「訳あり」な書店員さんなのだが、「ぶっ飛んだ思考のヤバい奴」という感じではない。
むしろわたしのこじらせた感覚にすごく近くて、そこからどんどん殻を破って成長していく様が書かれている。
失敗することもあるが、「X」をやればやるほど著者にとってプラスの経験ばかりが積み重なってゆく。
本書を読み終わって、わたしはいてもたってもいられなくなった。
わたしも、リスクを恐れずこんな風に生きてみたかった。
一度でいいから、えーい! と飛び込んでみたかった。
あのころのわたしは、足がすくんで動けなかった。
やってみなければわからないのに、「失敗したらどうしよう」という不安でいっぱいになっていた。
社会人一年目のときに、この本に出会えていたら。
たぶん、衝動的に書店に行って、本書でおすすめされていた本の中から気になった本を爆買いして、しばらく読みふけって、だれかにこの本の魅力を話したくなるだろう。
著者とさみしさレベルが近いから、もしかしたら出会い系に登録して同じようなことをはじめていたかもしれない。
「ありえたかもしれない過去」の想像がふくらむ。
ああ、あの時この本を読んでいたら、わたしはもっと明るく幸せになっていたかもしれないなぁ。
と、「ありえたかもしれない現在」まで想像して、苦笑する。
どんな状況であれ、「行動」しないと、人生は好転しない。
こんな、ものすごーーーく当たり前なことが、わかっているのになかなかできない。
今だってそうだ。
今は「書くこと」を仕事にしたいと思いあれこれ試行錯誤をしているものの、なかなかリスクをとれず、無難な行動をとりがちになる。
つい安全圏に行こうとしたり、「置きに行く」ような行動をとってしまいそうになるたびに読み返して、「行動」することの大事さを忘れないようにしたい。
そして著者の勇気と行動力に心から感服し、読書量に脱帽し、精一杯相手のことを想像して真摯に本をおすすめする姿勢に惹かれた。
わたしも花田さんのように、「気持ちよい押し売り(誤解を恐れず言う)」ができる人になりたいと強く思った。
