2年間、東京と大阪で遠距離恋愛をしていた。
どうにもならないとわかりながらも寂しさに耐えられない。温もりを知ったらもうそれ無しでは生きていけない。純粋な「好き」よりも、相手への執着と世の中の不条理に対する不満、上手くいってるカップルへの嫉妬で心は黒く渦巻きまくっていた。
これが「好き」の本質かと思うと、人間はなんて血なまぐさい生き物なんだとため息が出た。
彩瀬まる『くちなし』は人間の血なまぐささをむき出しにした7編の短編集だ。
表題作をはじめ、どの短編もわたしたちが認知するものとは違う、愛をめぐる本能が渦巻く「変愛」の物語集になっている。
「けだものたち」
女は夜の世界を生き、男は昼の世界を生きる分断した世界。そこで女と男は少しの接点を持ち、子を作り家庭を営む。しかし女はときに「けだもの」になる。男に嫉妬した勢いで蛇になり男を食べてしまうのだ。「私」は幸いにも「けだもの」にならず幸せな家庭を築いてきたのだが…。
「薄布」
会話の無い夫、反抗するようになった息子に嫌気がさして、「私」は「お人形遊び」を始める。戦火から逃れてきた異国の少年との背徳の「お人形遊び」。温もりに飢えていた「私」は「お人形遊び」をやめられない…。
「茄子とゴーヤ」
30年以上連れ添った夫との愛が終わった。すべてが面倒になり引きこもりがちの「私」だったが思い切って髪を切る。近所の理容室には「私」と同じく愛が欠損した親父がいて、出ていった妻の代わりに軒先にゴーヤを植える…。茄子とゴーヤと欠けた愛の物語。
その時に恋人の温もりがどれほどわたしの心を癒し、ほぐし、安らぎを与えてくれていたのか身に染みて感じた。
どうにもならないとわかりながらも寂しさに耐えられない。温もりを知ったらもうそれ無しでは生きていけない。純粋な「好き」よりも、相手への執着と世の中の不条理に対する不満、上手くいってるカップルへの嫉妬で心は黒く渦巻きまくっていた。
これが「好き」の本質かと思うと、人間はなんて血なまぐさい生き物なんだとため息が出た。
彩瀬まる『くちなし』は人間の血なまぐささをむき出しにした7編の短編集だ。
表題作をはじめ、どの短編もわたしたちが認知するものとは違う、愛をめぐる本能が渦巻く「変愛」の物語集になっている。
以下、各編のあらすじを簡単に記す。
「くちなし」
不倫相手から関係の解消を迫られた「私」は、慰謝料の代わりに相手の腕を要求する。元恋人はそれを了承し、腕をもぎ取って「私」に 渡す。「私」は元恋人の腕を愛でながら大切に育てていく…。「花虫」
夫のユージンに惹かれたのは、ユージンのくるぶしからエメラルドグリーンの繊細な花が咲いたからだ。ユージンにも「私」の目元から生える花に惹かれ、ふたりは夫婦になった。それはふたりにしか見えない運命の花のはずだったのだが…。「愛のスカート」
「私」が仕事にする出張ヘアカットで偶然出会った同級生のトキワは、好きな人のために「愛のスカート」作りに没頭する。「私」はトキワの元恋人で、全く噛み合わなかった苦い日々を思い出し、トキワへのくすぶる思いに気づく。「私」とトキワは永遠に噛み合わないままスカートはやがて完成する…。「けだものたち」
女は夜の世界を生き、男は昼の世界を生きる分断した世界。そこで女と男は少しの接点を持ち、子を作り家庭を営む。しかし女はときに「けだもの」になる。男に嫉妬した勢いで蛇になり男を食べてしまうのだ。「私」は幸いにも「けだもの」にならず幸せな家庭を築いてきたのだが…。
「薄布」
会話の無い夫、反抗するようになった息子に嫌気がさして、「私」は「お人形遊び」を始める。戦火から逃れてきた異国の少年との背徳の「お人形遊び」。温もりに飢えていた「私」は「お人形遊び」をやめられない…。
「茄子とゴーヤ」
30年以上連れ添った夫との愛が終わった。すべてが面倒になり引きこもりがちの「私」だったが思い切って髪を切る。近所の理容室には「私」と同じく愛が欠損した親父がいて、出ていった妻の代わりに軒先にゴーヤを植える…。茄子とゴーヤと欠けた愛の物語。
「山の同窓会」
3回産卵した女は大抵力尽きて死ぬ。3回目の産卵を迎えた同級生が多くなった同窓会で「私」は一度も産卵を経験しない人間として奇異な目で見られる。産卵するか、子を育てるか、子を守るか。どれかの使命が与えられる人間界で「私」の使命は未だに分からず、友人の死を見届けることしかできないでいる…。「変愛」の設定の斬新さに心震える。現実的に共感できないのに共感しきりだった。
確かに、遠距離恋愛中に彼のあったかい腕が近くにあったらどんなに良かっただろう。彼を「食べちゃいたいほどかわいい」とは思わないが彼が電話に出ない時はほとんどけだものの形相でコール音を聞いていた。産卵できない「私」の切なさに胸を痛めた。 実際に姿かたちは変わらないが、心の中は温もりを与える湯たんぽにも、美しい花畑にも、寄生虫にも、蛇にも、魚にもなれる。あらゆるものに変われる人間の想像力の無限さに心から驚嘆した。
上手くいっている時はいいが、そうでもないのが男女の仲。時には「変態」しちゃえた方がよっぽど楽かもしれないのだけれど。愛って本当につらくて切なくておもしろい。
世界中の男女の愛憎うごめく日に、とてもおもしろく読んだ一冊だった。
