村田沙耶香『コンビニ人間』(文藝春秋)

18歳から18年間同じコンビニで働き続ける女性・古倉恵子の視点から見た「社会」が淡々と語られている。

恵子は「普通の家に生まれ、普通に愛されて育った」(7頁)にもかかわらず周囲から奇妙がられてしまう人間だ。
死んでいる小鳥を見て嬉しそうに「食べよう」と言ったり、ヒステリーを起こした先生を黙らせようとしてスカートとパンツを下ろしたり、たびたび「普通」の考え方に沿わない言動や行動を起こしてしまい両親や妹の頭を悩ませてきた。

大人になってから奇妙な言動や行動を隠す術を身に付けたが、恵子の本質は変わらない。
恵子はすこやかに育ち、社会経験を積んで、異性と恋愛をして、妊娠・出産をして…という健全な生き方が理解できず、かつそれを受け容れられないのだ。

そんな恵子にとって、決められたマニュアル通りに動けば誰にも迷惑をかけないコンビニ店員という仕事は天職だった。
18歳の時にアルバイトを始めてから恵子は両親や妹を心配させない「コンビニ店員として働く自分」を主軸とすることを決め、18年間同じ生活をしてきたのである。

36歳となった今、恵子の目下の悩みはコンビニ店員として居づらくなってきたことだ。
身体が弱くコンビニ以外の仕事に就けないという理由で長年働き続けてきたが、結婚も転職も考えず現状維持を貫く恵子の存在を店長や従業員は奇妙がるようになってきた。

恵子は周囲の言う健全な生き方をなんとか理解して、それに沿おうとして試行錯誤をしていくのだが…。
結末を読んで、「コンビニ人間」というタイトルは秀逸だなぁと深く頷いてしまった。

物語を読む限り、恵子は面倒くさがることはあっても「悩む」ことはない。
悩むのはどんな風に解釈をしたら良いかわからない周りの人たちだ。

無機質なイメージの「コンビニ人間」という造語のタイトルがものすごくしっくりとくるし、「普通/異常」と簡単に区別していませんか?恵子のような生き方を受け容れられますか?と試されているような気分になった。