もしもわたしが作者だったら…『アンヌごめんなさい』みたいな安易なネーミングしか思いつかないだろうと思う。
「言葉が美しい」ということを体感させてくれる一冊だった。
フランス南部の海辺の別荘で気ままなヴァカンスを楽しむ主人公・セシルとその父・レイモンのひと夏の悲しい思い出の物語。
思春期は過ぎたが成人になる直前の生意気盛りの年頃のセシルは気ままなヴァカンスを心底楽しんでいたが、ある時レイモンが連れてきた一人の女性・アンヌによって一気に現実に引き戻されてしまう。
アンヌはレイモンの前妻(セシルの実母)の親友で、セシルに教養を叩き込んだキャリアウーマン。
セシルはアンヌを尊敬しているが、セシルの弱い心が現実的で知性あるアンヌへの恐れを抱かせ、反抗期の子どものようにアンヌに反発心を覚える。
じりじりと精神的に追い詰められたセシルはついにとんでもない計画を思いついてしまう…。
セシルの将来を思い、厳しい言葉を放つアンヌの立場もセシルの立場も両方共感してしまい、悲しい結末にただただ切なくなってしまった。
ヴァカンスの描写がわたしがイメージしている「ヴァカンス」そのもので、とても美しくて羨ましくて仕方がなかった。
とにかく感傷に浸りたい人、自分のすべきことに及び腰の人、理想と現実のギャップに葛藤している人にお勧めの一冊。
