信頼
俺は今、花園の緑の芝生の上にたっている。小学校から夢に見た場所だ。
先生、みてくれよな。俺は精一杯のプレーをしてみせる・・・。
本当のこと言って、中学校の時は、人権学習とかダルいって思ってた。
あんまり発言もせえへんかったやろ?
なんか、先生の言うこと、きれいごとばっかりみたいで、心の中で反論ばっかりしてきた。
要するに、差別せえへんかったらええんやろ?この俺にどうせえって言うねん?
差別はせえへん、それ以上の何があるねん?ってね。
そやけど、今思ったら、そんだけ心の中で反論してたってことは、
先生の授業、聞いてたんは聞いてたんよ。
今でも、先生の言ったこと、ちゃんと思い出せる・・・断片的にやけどな。
俺は、小さいころからの夢を実現させてくて、この高校に来た。
ラグビーでは、大阪で3、4番手。花園には、挑戦していく立場の学校だ。
ええかっこう言うみたいやけど、あえてこの学校を選んだ。
名門と呼ばれる学校より、挑んでいく新鋭の学校。俺のチャンスは、きっとある・・・。
大阪のいろんな地域から、この学校に集まってきた同じ夢を見る仲間たち。
いろんな立場を持つ仲間がいる。「在日」韓国籍のやつ、ムラに生まれ育ったやつ・・・。
一番仲のいいやつが、ある時、俺にぽつっと言った。「俺、部落に住んでんやで。」
「えっ?」とっさに声が出なかった。「そんなん関係ないよ。」
そうとしか答えられへんかった自分が、情けなかった。俺を信頼して、言ってくれたのに・・・。
先生、笑うかもしれへんけど、俺やっと今になってわかった。
差別せえへんからそれでいい、それだけちゃうねんな。
あいつの気持ちに、俺はどれだけ応えられたんか・・・。
考えることもせえへんかったら、応えることなんてでけへん。
何日か、俺はそのことが頭から離れへんかった。
「俺、難しいことはわからへんけど、
なんか思ってることあったら、言ってくれよ。いっしょに考えるから・・・。」
そういった時のあいつの目、俺はずっと忘れない。