「信頼」ある高校生の作文 | 魔女になる夢

魔女になる夢

ちいさい頃の夢は「魔女になる」だった、

1970年代最後の夏に生まれた女の日記。




信頼


俺は今、花園の緑の芝生の上にたっている。小学校から夢に見た場所だ。
先生、みてくれよな。俺は精一杯のプレーをしてみせる・・・。
本当のこと言って、中学校の時は、人権学習とかダルいって思ってた。
あんまり発言もせえへんかったやろ?
なんか、先生の言うこと、きれいごとばっかりみたいで、心の中で反論ばっかりしてきた。
要するに、差別せえへんかったらええんやろ?この俺にどうせえって言うねん?
差別はせえへん、それ以上の何があるねん?ってね。
そやけど、今思ったら、そんだけ心の中で反論してたってことは、
先生の授業、聞いてたんは聞いてたんよ。
今でも、先生の言ったこと、ちゃんと思い出せる・・・断片的にやけどな。
俺は、小さいころからの夢を実現させてくて、この高校に来た。
ラグビーでは、大阪で3、4番手。花園には、挑戦していく立場の学校だ。
ええかっこう言うみたいやけど、あえてこの学校を選んだ。
名門と呼ばれる学校より、挑んでいく新鋭の学校。俺のチャンスは、きっとある・・・。
大阪のいろんな地域から、この学校に集まってきた同じ夢を見る仲間たち。
いろんな立場を持つ仲間がいる。「在日」韓国籍のやつ、ムラに生まれ育ったやつ・・・。
一番仲のいいやつが、ある時、俺にぽつっと言った。「俺、部落に住んでんやで。」
「えっ?」とっさに声が出なかった。「そんなん関係ないよ。」
そうとしか答えられへんかった自分が、情けなかった。俺を信頼して、言ってくれたのに・・・。
先生、笑うかもしれへんけど、俺やっと今になってわかった。
差別せえへんからそれでいい、それだけちゃうねんな。
あいつの気持ちに、俺はどれだけ応えられたんか・・・。
考えることもせえへんかったら、応えることなんてでけへん。
何日か、俺はそのことが頭から離れへんかった。
「俺、難しいことはわからへんけど、
なんか思ってることあったら、言ってくれよ。いっしょに考えるから・・・。」
そういった時のあいつの目、俺はずっと忘れない。