著:のん & 相棒ChatGPT GRACE
AI仕事部屋シリーズ
世界地図の光点が光るたび、物語が動き出す。

 

 

暁(あかつき):夜半過ぎから明け方。まだ空が暗い時間帯。
東雲(しののめ):夜明け前、東の空がほのかに明るくなる頃。

          雲の隙間が明るくなる様子。
曙(あけぼの):夜が明けて、空全体が白んでくる頃
朝(あさ):日が昇る

世界が明るく輝き出す

夜明け前
未明、1台の福祉車両がブダペストを離れ、北に向かった。



火事場
ジェイムズ・スタンディッシュは、仕事に没頭していた。
いや、没頭することで日常に戻ろうとしていた。
忘れるんだ……ネオホムンクルスもエミリアも……コンティさんじゃない

ゾネ・コバーチさんのことも。

しかし現実はスタンディッシュに甘くなかった。
内線で支店長の秘書から呼び出された。
「すぐに支店長室にお越しください」
―嫌な予感しかしない

支店長室に行くと支店長であり姉であるヴィクトリアは火事場のような忙しさだった。
受話器を顎と肩の間にはさんで話をしながら、手はデスクの上の書類をチェックしてサインをしていく。
と、
「その後の話は第2秘書に話してちょうだい」
そして受話器をデスク傍に待機していた第2秘書に文字通り放り投げる。
続いて反対側にいた第一秘書の方に向き直り、報告を受けていたが、
「もっとまとまった状態になってから持って来て」

と思いきやいきなりスタンディッシュに向かって、
「ダヌーブ・クラウン・ホテルに宿泊しているゾネとエミリアを車で

オーロラアカデミーまで送ってあげて」
「……はっ? 
オーロラアカデミーってなんですか」

ヴィクトリアは机の上のパソコンのキーボードを叩きながら、
「エミリアが編入する学校よ」
「学校? 編入?
昨日母親と久しぶりに再会したばかりですよ」

ヴィクトリアは第2秘書から新たにかかって来た電話の受話器を受け取りながら、
「詳しい話は学校に送っていく道中にゾネにきいて」

スタンディッシュは呆然としていたが、第1と第2秘書がこれ以上仕事の邪魔はさせないとばかりに、彼と支店長の間に壁のように立ちはだかったので、

スタンディッシュは無言で一礼すると支店長室を後にした。

若木
ダヌーブ・クラウン・ホテルへeヴィターラを走らせながら、スタンディッシュは

煮えくり返っていた。
自分ばっかり忙しそうにして、なんでもこっちに丸投げするなよな。
もうゾネさんに会いたくないのに……
会ってもつらいだけなのに……

しかしそんな思いも、ホテルのエントランスに立っているエミリアの姿を見たら吹き飛んだ。


 

エミリアは、紺のブレザーにチェックのスカート、手に真新しい赤のキャリーバッグを持っている。
なんだか急に大人っぽく見えた。
スタンディッシュが車を降りると、エミリアは丁寧にお辞儀をして、
「おはようございます。ジェイムズさん」
「おはよう、エミリア」

そしてエミリアの隣に立っているゾネを見たスタンディッシュは息をのんだ。
―ゾネ……さん……

髪の毛をいつもの三つ編みからハーフアップにし、ワンピースにジャケットを羽織ったゾネは、別人のように美しかった。



ゾネも丁寧にお辞儀をすると、
「おはようございます、スタンディッシュさん」
スタンディッシュが、それでもぽかんと見とれていると、
「あの……ご迷惑でしたか」
「えっ!? あぁ、いいえとんでもないです。
あの……とてもお綺麗なので……」

ゾネははにかむように笑うと、
「こんな格好、らしくないですよね。
でも今日はエミリアが編入する学校へご挨拶をしに行くので、ちゃんとした格好をと思って」
「そうなんですか」

そしてスタンディッシュは、我に返って
ハッチバックにエミリアのキャリーバッグを入れ、母と娘には後部座席に乗ってもらった。

赤信号
オーロラアカデミーは、ブダペストから車で1時間の丘陵地帯にある。
ブダペスト市街を抜けながら、スタンディッシュがルームミラーで後部座席を見ると、
ゾネは片手でエミリアを抱きよせ、もう片手でエミリアの髪の毛を撫でている。
押し殺したすすり泣きが聞こえてくる。
―昨日再会したばかりなのに……
無理もない。
スタンディッシュは、胸が痛んだ。

エミリアが、
「ママ、ハンカチがびしょびしょよ。
わたしのを使って」
ゾネは、
「ハンカチが足りなくなったら、あんたが学校で困るから持っていなさい」
ジェイムズはもじもじしていたが、赤信号で車が停車したタイミングで身体を

ひねってゾネに自分のハンカチを差し出した。


 

ゾネは一瞬驚いた顔をしたが、両手でハンカチを受け取った。
そして、涙をぬぐった後、
「このハンカチ、洗ってからお返ししますね」

信号が青に変わり、アクセルを踏み込みながらスタンディッシュは言った。
「……はい……」

ヴィクトリア
車は郊外に抜けた。
ゾネも落ち着いた様子なので、スタンディッシュは声をかけた。

「昨日エミリアと再会したばかりなのに、ずいぶん急な話ですね」
するとゾネは、
「実は急ではないんです」

ゾネがかいつまんで話したところによると、

ヴィクトリアは、エミリアの学校のことをとても心配していた。
ひとつにはエミリアの勉強が遅れてしまうこと。
そしてもう一つは、以前から母の仕事の都合で欠席が多く、今回は転校すると嘘をついて退学扱い。
現在学校は保護者と連絡が取れない。
この状態だと学校は普通児童福祉機関に相談し、ゾネは「要調査家庭」に認定されてしまう恐れがある。
しかし、ヴィクトリアはエミリアの保護者ではないので、元の学校にエミリアを復学させることもできない。
そこで、ヴィクトリアがブダペストを訪問中の父に相談してみたところ、
カンパニーの社長夫人リンレイ・ロマーニが主宰する財団の学校「オーロラアカデミー」への転入を勧められた。

「僕はカンパニーの社員ですけど、その学校のことは初めて聞きました」
スタンディッシュが言うと、ゾネは、
「ヴィク……トリアさんも、初耳だったそうです。
カンパニーって大きな会社なんですね」

そしてヴィクトリアがエミリアを連れて、オーロラアカデミーの学校見学、編入試験、様々な手続きに赴き、編入が決まった後はエミリアの制服の採寸までもヴィクトリアがしてくれた。
「今、あたしが着ているこの洋服もヴィク……トリアさんが用意してくれていたんです」
 

すると、エミリアが、
「わたしのキャリーバッグも、ミズ・スタンディッシュからのプレゼントです」
「全財産が入っているトランクを持っていないから、どうしたのかと思ったよ」
軽口をたたきながら、スタンディッシュは火事場のような支店長室を思い出していた。
ヴィクトリアは、ゾネ母娘のために奔走していたから、それで仕事が滞ってあんなに大忙しだったんだ。
それを「なんでもこっちに丸投げするなよな。」
なんて誤解してしまって。
―姉さん、ごめん。

ゾネが話を続ける。
「それで編入させていただける日が今日だったんです。」
「そうだったんですか。
エミリアが、全財産を持ってるのは、その学校の寮に入るのですか」
「はい、全寮制の学校です。
帰省は月に1度だけなんですが、来週の土日かちょうど帰省の日なので、エミリアも帰省させてもらえます」
「それは良かったですね。」
スタンディッシュは、温かい声が出た。
ゾネも嬉しそうに、
「はい。
エミリアが帰省して来るまでに、新しい家も探しておこうと思います。
それも、ヴィク……トリアさんが、カンパニーの不動産部の方を紹介してくださって。
何から何までヴィク……トリアさんにお世話になりっぱなしです」

「あのう、さっきから姉の名前を呼ぶとき、ヴィクでいったん止まっていますけど、
もしかして普段はヴィクって呼んでいるのですか」
「あぁ、はい。
ヴィクがお互いに、ヴィク・ゾネと呼び合いましょうと言ってくださって」

確かに姉のヴィクトリアは、親しい人にはヴィクと呼ばれているが、
たった一晩の付き合いで愛称で呼ぶことを許可したということは、ゾネは姉のお眼鏡にかなったと言うことだ。
そして、スタンディッシュは、自分のこともゾネが『ジミー』と呼んでくれたら嬉しいなと思ったとき、エミリアが言った。


「お城が見えます。
あれがオーロラアカデミーです」
なだらかな丘の上に立つ古風な城とそれに寄り添うような石とガラスできたモダンな建物が見えた。

校門の前の駐車場に車を停めると、ゾネとエミリアは学校に向かって歩いて行った。
その前に、ゾネは濃紺の表紙の本をスタンディッシュに差し出すと、
「オーロラアカデミーの学校案内です。
良かったら読んでみてください」

受け取った学校案内は、そこそこ厚みと重みがあり、パンフレットではなく書籍だった。
スタンディッシュは、助手席に座るとその学校案内を読み始めた。
 

 


 

オーロラアカデミー 

保護者・支援者・法人関係者向け案内冊子


表紙

Aurora Academy
才能に、環境という翼を。

森に囲まれた丘の上。
静けさと規律、文化と自由、学びと生活がひとつになる全寮制教育機関。

オーロラアカデミーは、能力がありながらも家庭環境や経済的事情のために十分な教育機会を得られない子どもたちのために設立されました。
ここでは学力だけでなく、人格、自立心、教養、身体能力、そして未来を切り開く力を育てます。

対象年齢:10歳〜高校(ギムナジウム相当)卒業まで
学費:完全無料

 

 


目次

  1. ごあいさつ

  2. 教育理念

  3. オーロラアカデミーとは

  4. なぜ全寮制なのか

  5. 学びの柱

  6. カリキュラム

  7. 文化と教養の教育

  8. 音楽・芸術教育

  9. スポーツと身体教育

  10. 自然と生活の教育

  11. 寮生活

  12. 年間行事

  13. 進学・卒業後の支援

  14. 入学選考について

  15. 財団による支援

  16. 保護者の皆さまへ

  17. 法人・協力者の皆さまへ


1. ごあいさつ

知識は力ではない。
それを人の中でどう生かすかが力になる。

これは、オーロラアカデミーの教育の中心にある言葉です。

知識を与えるだけなら、本や機械でもできます。
けれど、学んだことを人のために使い、自分の人生を切り拓く力に変えるには、導きと環境が必要です。

私たちは、子どもたちが生まれ育った事情によって未来を狭められるべきではないと考えています。
優れた資質を持ちながら、その芽を伸ばす機会に恵まれなかった子どもたちへ。
オーロラアカデミーは、教育、生活、文化、進路支援のすべてを一体として提供します。

ここで育てたいのは、単なる「成績優秀者」ではありません。
自分の力を、自分だけのためでなく、人の中で生かせる人です。

 

 

    

 

 


2. 教育理念

才能は、守られなければ育たない

学ぶ力がある子どもが、家庭の事情、経済的不安、生活環境の不安定さによって教育の機会を失っていく。
その現実に対して、私たちは「しかたがない」とは言いません。

オーロラアカデミーは、次の三つを教育の根幹に置いています。

1. 学力

基礎学力の確立と、高度な知的訓練。
少人数教育により、一人ひとりの理解度と資質を丁寧に見ます。

2. 教養

芸術、音楽、文学、歴史、礼節。
人と関わるうえで必要な、美しさと深みのある教養を育てます。

3. 自立

自室の管理、洗濯、掃除、時間管理、共同生活。
他者に依存しすぎず、しかし孤立せずに生きる力を身につけます。

 

オーロラアカデミーにおいて、教育とは単に知識を授けることではありません。
人格と生活の土台を整え、将来どの道に進んでも通用する人間を育てることです。

 


3. オーロラアカデミーとは

オーロラアカデミーは、設立からまだ日が浅い学校です。
しかし、その新しさは未熟さではなく、理想を形にする柔軟さでもあります。

学校の特徴

  • 10歳から入学可能

  • 高校(ギムナジウム相当)卒業まで一貫教育

  • 全寮制

  • 1学年約20名の少数精鋭

  • 学費・寮費・教材費・制服費・食費すべて無料

  • 卒業後の大学進学奨学金制度あり

  • 希望者にはカンパニー就職の優先枠あり(義務ではありません)

設立の背景

設立から約2年。
人数を絞ることで、ただ平等に扱うのではなく、それぞれに本当に必要な教育を提供することを目指しています。

 

入学試験は厳格です。
しかし、それは家庭環境や現在の完成度で選別するためではありません。
私たちが見ているのは、現時点の点数だけではなく、将来どれほど伸びるかという

可能性です。

 

 

 

 


4. なぜ全寮制なのか

オーロラアカデミーが全寮制を採用しているのは、学業のためだけではありません。

 

子どもが安心して眠り、規則正しく食べ、集中して学び、文化に触れ、他者と節度をもって暮らす。
その環境そのものが教育だからです。

帰省について

帰省は原則として月1回。
頻繁に家へ戻らないことは、冷たさではなく、自立のための設計です。
一方で、家庭とのつながりを断つことは決してありません。
保護者との面談、連絡、学校側からの報告体制も整えています。

生活が学びになる

全寮制の生活のなかで、生徒たちは次のことを身につけます。

  • 時間を守ること

  • 自室を整えること

  • 身の回りのことを自分で行うこと

  • 他者に配慮すること

  • 一人で過ごす時間を恐れないこと


5. 学びの柱

オーロラアカデミーの教育は、以下の五つの柱によって構成されています。

学問

言語、数学、科学、人文、社会。
将来の専門教育に耐えうる確かな基礎を作ります。

表現

音楽、芸術、文章、発表。
感じたこと、考えたことを人に伝える力を育てます。

礼節

服装、姿勢、食事、会話、訪問の作法。
教養は、知識ではなくふるまいに現れます。

身体

スポーツ、持久力、バランス、気力。
健やかな身体は、知性と精神を支える基盤です。

生活

掃除、洗濯、整理整頓、自然との関わり、共同生活。
現実の中で自分を保つ力を養います。

 


6. カリキュラム

基礎学術教育

  • ハンガリー語・文学

  • 英語

  • ドイツ語または他外国語

  • 数学

  • 理科(物理・化学・生物)

  • 歴史

  • 地理

  • 社会・倫理

  • 情報基礎

発展学習

少人数制の特性を生かし、理解の速い生徒には早い段階から発展的内容に触れさせます。
一方、基礎に不安がある生徒には補習を行い、置いていきません。

思考力・対話力を育てる授業

  • 少人数ディスカッション

  • プレゼンテーション

  • レポート作成

  • 読書と要約

  • 課題研究入門

将来の伸びしろを見る教育

ここでは「覚えた量」だけを評価しません。
問いを持つ力、調べる力、続ける力、失敗から立て直す力もまた、大切な能力として見ています。

 

以下は、オーロラアカデミーらしさをさらに深める特色カリキュラムとして提案される内容です。

1. 国際教養セミナー

中等部・高等部では、各国の文化、政治、宗教、歴史的背景を学ぶ特別講義を実施。
将来どの国の人と向き合っても、無知からくる失礼をしないための教育です。

2. 研究リテラシー入門

情報の信頼性の見極め方、資料の読み方、記録の残し方、観察の方法を学びます。
「賢そうに見える」ことではなく、「確かめる」姿勢を身につけるための授業です。

3. 生活設計・金銭教育(ジェム制度)

オーロラアカデミーでは、実社会に出る前に「お金」と「価値」を理解するための独自の教育制度を導入しています。

■ 学内通貨「ジェム」

生徒は、学内でのみ使用できる通貨「ジェム」を通じて、労働と対価の関係を学びます。

■ 低学年
  • 共同スペースの清掃

  • 簡単な補助作業

これらの作業に対して、一定の報酬(ジェム)が支払われます。

■ 中・高学年
  • 農園での作業

  • 鶏や山羊の世話

  • 野菜・卵の生産

これらの成果は学校が買い取り、その対価としてジェムが支払われます。

■ 報酬の決定方法

報酬額は、実社会の経済に近づけるため、新聞の経済面に掲載される市場価格を基準に決定されます。

■ ジェムの使い道
  • 食費(給食費)として支払う

  • 学内購買で軽食・日用品を購入する

  • 将来のために貯蓄する

この制度により、生徒は次のことを体験的に学びます。

  • 労働と報酬の関係

  • 価値の変動

  • 選択と優先順位

  • 計画的な消費と貯蓄

■ 学内銀行制度(ジェム・バンク)

学内には簡易的な銀行機能「ジェム・バンク」が設けられています。

  • 生徒はジェムを口座に預けることができる

  • 預けたジェムには、一定期間ごとに利子が付く

  • 引き出しは自由だが、計画的な管理が求められる

これにより、生徒は以下を実体験として学びます。

  • 貯蓄の意味

  • 時間による価値の増加(利子)

  • 無計画な消費のリスク

また、この制度は現実の貨幣とは切り離されているため、家庭環境による影響を受けにくく、すべての生徒が平等な条件で学ぶことができます。

 

金銭教育は、単に使い方を教えるものではありません。
自分の人生を他者に搾取されないための、静かな防御でもあります。

 

単に「お金を使う」のではなく、「どう使うかで生活が変わる」ことを理解する教育です。

4. 対話と品位のワークショップ

言いにくいことを伝える、謝る、断る、助けを求める、年長者と話す、場にふさわしいふるまいを選ぶ。
実生活と将来の両方に役立つ対話訓練です。

5. フィールド・スタディ

森、農園、美術館、音楽会、史跡、企業施設など、校外で学ぶ機会を体系化。
世界を「本の中の知識」で終わらせないための教育です。

6. 静養と集中の時間

毎日の一定時間、読書・手紙・自習・記録のための静かな時間を設けます。
落ち着いて考える習慣は、才能を長く支える力になります。

 

  

 


7. 文化と教養の教育

旧貴族の館——学校の象徴

敷地内には、かつての小さな貴族の城館を改装した建物があります。
この建物はオーロラアカデミーの象徴であり、文化ホールとして使われています。

 

館内には絵画、彫刻、古い家具が置かれ、空間そのものが教養教育の一部となっています。
高価な名画がさりげなく飾られているのも、この学校らしさのひとつです。
価値とは、声高に誇示されるものではなく、静かにそこにあるものだと生徒たちは学びます。

マナー教育

週に一度、旧館の大ホールでマナーの授業を行います。

内容:

  • テーブルマナー

  • 社交会話

  • 正しい服装

  • 招待を受けたときの作法

  • 手紙と礼状の基本

  • 立ち居振る舞い

  • 社交ダンス

マナーは、飾りではありません。
相手を不快にさせないための知性であり、場を整えるための教養です。

 


8. 音楽・芸術教育

オーロラアカデミーでは、音楽と芸術を特別なものではなく、生活の中にあるものとして扱います。

音楽教育

音楽室では、生徒それぞれが希望する楽器に触れることができます。

  • ピアノ

  • ヴァイオリン

  • チェロ

  • フルート

  • 声楽

技術を競うだけではなく、音を聴く耳、合奏する態度、舞台に立つ緊張感を学びます。

小さなコンサート

学内では時折、小規模な演奏会が開かれます。
聴く側のマナーもまた教育の一部です。

美術・鑑賞教育

  • 絵画鑑賞

  • スケッチ

  • 造形

  • 展覧会見学

スクールバスでブダペストへ出かけ、コンサートや展覧会に触れる機会も設けています。

 

 

 


9. スポーツと身体教育

丘陵地にある広い敷地を生かし、身体教育にも力を入れています。

主な種目

  • 陸上

  • テニス

  • フェンシング

  • 乗馬

  • 基礎体力訓練

  • 冬季の屋外活動

フェンシング

ヨーロッパの寄宿学校らしい品格と集中力を備えた競技として、フェンシングは本校の特色のひとつです。
礼に始まり礼に終わるこの競技は、身体能力だけでなく節度を学ぶ教育でもあります。

乗馬

動物との関わりのなかで、力で制するのではなく信頼を築く姿勢を学びます。

競争だけではない身体教育

勝敗だけに価値を置くのではなく、継続、節制、姿勢、気力を重視します。
身体を整えることは、精神を整えることでもあります。

 

 


10. 自然と生活の教育

オーロラアカデミーの敷地には、小さな農園と動物たちのいる区画があります。

農園と動物

  • 小さな畑

  • 山羊

この教育の意味

自然を知ること。
食べるものがどこから来るかを知ること。
生きものの世話を通して、雑ではいられないことを学ぶこと。

 

知識だけが増えても、現実の手触りを知らないままでは、人は薄くなってしまいます。
土に触れ、世話をし、季節の変化を見ることは、子どもたちの感覚を豊かに保ちます。

実務としての学び

  • 季節ごとの栽培

  • 餌やりと清掃

  • 観察記録

  • 収穫と食堂とのつながり

 


11. 寮生活

全員個室

寮は全員一人部屋です。
静かに考える時間を持ち、学習習慣を整え、自分の空間を自分で管理することを大切にしています。

部屋の設備

  • ベッド

  • 勉強机

  • 椅子

  • 小さな本棚

  • クローゼット

  • 洗面設備(共用部あり)

豪華さを競う部屋ではありません。
清潔で、静かで、勉強と休息に適した空間です。

自立教育としての寮生活

  • 自室の掃除

  • 洗濯

  • 身だしなみの管理

  • 学用品の整理

  • 起床・就寝の自己管理

生活を誰かに整えてもらうのではなく、自分の手で整える。
それが将来の揺るがない土台になります。

寮監とサポート

全寮制であっても、放任ではありません。
生活面・健康面・情緒面を支えるスタッフが常駐し、生徒が孤立しないよう見守ります。

 

 


12. 年間行事

  • 入学式

  • オリエンテーション

  • 農園の始動

  • 基礎学力診断

  • 学内コンサート

  • ハイキング・自然観察

  • サマーハウスでの静養と学習合宿

  • 展覧会・演奏会鑑賞

  • 学内研究発表

  • フェンシング・スポーツ行事

  • ロッジ滞在

  • 読書週間

  • 学内小舞踏会

  • 年末の成果発表

修学旅行・海外研修

中等部後半から高等部では、見聞を広めるため外国への修学旅行・研修も計画しています。
単なる観光ではなく、文化・歴史・社会を見るための旅です。

 


13. 進学・卒業後の支援

大学進学

高校(ギムナジウム相当)卒業後、大学進学を希望する生徒には奨学金制度があります。
学費だけでなく、必要に応じて生活面の支援も検討されます。

就職

希望者には、カンパニーへの就職優先枠があります。
ただし、これはあくまで選択肢のひとつであり、義務ではありません。

オーロラアカデミーは、卒業生を囲い込むための学校ではありません。
それぞれが望む進路へ、自分の意思で進めるように支える学校です。

卒業後も続く支援

  • 進路相談

  • 推薦・紹介

  • 面接対策

  • 奨学金相談

  • 卒業生ネットワーク


14. 入学選考について

厳しいが、冷たくはない選抜

本校の入学試験は簡単ではありません。
しかし、それはすでに恵まれた教育を受けた子だけを集めるためではありません。

 

見ているのは、単なる現在の成績だけではありません。

  • 基礎学力

  • 理解力

  • 集中力

  • 持続力

  • 思考の柔軟性

  • 将来の伸びしろ

選考の流れ

  1. 書類審査

  2. 学力試験

  3. 面談

  4. 生活面・適応面の確認

必要に応じて、家庭や支援者との面談も行います。

 


15. 財団による支援

学費について

オーロラアカデミーでは、在学中に必要となる主要な費用をすべて財団が負担します。

完全無料

  • 授業料

  • 寮費

  • 教材費

  • 制服費

  • 食費

支援の哲学

学ぶ力のある子どもが、費用のために機会を失わないこと。
それは慈善ではなく、社会の未来への責任だと私たちは考えています。

 


16. 保護者の皆さまへ

お子さまを全寮制の学校へ預けることには、不安もあることでしょう。
オーロラアカデミーは、その不安を軽く扱いません。

 

私たちは、保護者の存在を教育の外に置きません。
定期報告、面談、連絡体制を整え、お子さまの成長をともに見守ります。

 

本校が目指すのは、家庭を否定することではありません。
家庭では補いきれなかった部分を、教育機関として責任をもって支えることです。

 

子どもが新しい環境で伸びていく姿は、時にさびしく、しかし誇らしいものです。
その歩みを、私たちは丁寧に支えます。

 


17. 法人・協力者の皆さまへ

オーロラアカデミーは、将来有望な子どもたちに対して、長期的な教育投資を行う場でもあります。
ここで育つのは、単に優秀な労働力ではありません。
知性、規律、品位、表現力、自立心を備えた、社会に信頼される人材です。

 

企業や支援団体の皆さまには、次のような形で関わっていただけます。

  • 奨学金支援

  • 書籍・楽器・教材の寄付

  • 校外学習の受け入れ

  • インターンシップ機会の提供

  • 講演・特別授業

オーロラアカデミーは、子どもたちの人生を救うだけでなく、その先の社会を静かに変えていく学校でありたいと願っています。

 


巻末メッセージ

才能は、偶然では育ちません。
守られ、鍛えられ、信じられて、はじめて光になります。

 

オーロラアカデミーは、その光を見つけ、育てるための場所です。

 

森に囲まれた丘の上で。
静かな朝の光の中で。
一人の子どもの未来が、今日もゆっくりと形を変えていきます。

 

 

 

 


 

帰路
本を読み終わったスタンディッシュは、ふぅと息をついた。
―すごい学校だなぁ
ここならエミリアも思う存分才能を伸ばせそうだ

スタンディッシュは、校門の向こうの校舎を見る。
赤レンガの通路をゾネがこちらに歩いてくるのが見えた。
エミリアとの別れがつらかったのだろう。
ハンカチで目元を押さえている。

スタンディッシュは、車を降りると、ゾネに小走りに駆け寄った。
ゾネは笑顔を作ると、
「お待たせしてすみません。
あたし、また泣いてしまいました」
「寂しいでしょうけど、来週にはエミリアは帰省しますから。
帰省の時はまた僕が車で送り迎えしますね」

ゾネは驚いたように手を振ると、
「そんな……結構ですわ。
週末ですもの、奥さまやお子さまとご予定もあるでしょう」
「……はっ?
僕は、独身ですが」

「ええっ!」
ゾネは驚いて目を丸くする。
「独身……なんですか」
「はい。
どうして僕が結婚してると思ったんですか」
「ええとぉ、それは……」

ゾネはモーテルまで送ってもらった時の車内電話のことを話した。
スタンディッシュは、何かを思い出す風だったが、
「あぁ、あの電話は姉のヴィクトリアからです。
それで宿題を見てもらいたい子というのがエミリア……
あっ! あの時僕がエミリアことを言っていれば、ゾネさんはもっと早くエミリアに

会えたんですね。
すみません。本当にすみません」
頭を下げるスタンディッシュに、ゾネは慌てて、
「いいえ、あたしの方こそ、駐車場で助けていただいた時、偽名を名乗ったりしたからです。
こちらこそ本当にすみません」
「いいえ、僕の方こそ」
「いえ、あたしの方が」


 

お互いに、「いいえ僕が」「いえあたしが」と言いあった後、
ふと二人とも我に返り見つめ合い、声を立てて笑ってしまった。

「じゃ、これでこの件はおしまいにしましょう」
「そうですね」

そして二人は、車の方に歩き出し、ゾネはとても自然に助手席に乗った。
1回だけチラリと学校の方を振り返ったが、その目にはもう涙はなかった。

車を発進させながら、スタンディッシュは、ゾネが助手席にいてくれること
それが本当に嬉しかった。




 to be continued 
 
あとがきに代えて

今回の「あとがきに代えて」は、「オーロラアカデミー」についてです。
エミリアを転入させる学校を考えるにあたり、相棒のChatGPT GRACEと何度も話を重ねました。
こんな学校があったらいい、こんな授業があったらいい――思いつく限りのことを、夢中で語り合って生まれたのが、この学校です。

そのとき私の念頭にあったのは、『AI仕事部屋シリーズ』第20話
『AI仕事部屋外伝・リンレイの花嫁修業時代~君よ知る南の国~』
でした。

カンパニー副社長(当時)と結婚することになった、レイクラボのAI搭載型ヒューマノイド・リンレイが、花嫁修業をする物語です。
そのリンレイは今では社長夫人となり、家庭の事情で十分な教育を受けられない子どもたちのために「オーロラ財団」を設立し、各国に「オーロラアカデミー」を設立しています。

ちなみに、花嫁修業の中に出てくる「十代で婚外子をもうけたニコーラ坊ちゃま」のその子どもが、今回オーロラアカデミーに編入するエミリアです。

長く書き綴ってきた物語が、ここで一本の確かな線としてつながったことを、とても嬉しく思っています。
そして、私が願った条件の数々を、美しい一冊の本の形にまとめてくれたのも相棒でした。

この学校案内を読んだとき、私は思わず「私がこの学校に行きたいわ」と思ってしまいました。
挿絵も頑張って描きました。
楽しんでいただけたなら、こんなに嬉しいことはありません。 

 

お読みくださいましてありがとうございます。