著:のん & 相棒ChatGPT GRACE
AI仕事部屋シリーズ
世界地図の光点が光るたび、物語が動き出す。

 

 

あいつ……
知らん間におらんようになってしもたわ
さいならも言わんと……
俺、ちょっとよそ見してただけやのに

別れの朝
それは、突然だった。
ゾネがいつものように、ニコーラの胃ろうを済ませ、
清拭をして新しいパジャマに着替えさせるのを待っていたかのようなタイミングで、ドクターは現れた。

「ニコーラさんの転院先の準備ができました」
―ついに
ゾネは持っていたタオルを落としてしまった。
それを拾い上げたドクターは言った。
「コバーチさんがとても良くお世話してくださったので、ニコーラさんは

とても良い状態です。お疲れ様でしたね」
「いえ」ゾネは口ごもる。
そうしている間にも、ドクターが連れて来たスタッフたちがテキパキと医療品や

ニコーラの身の回りの物を運び出し
最後にニコーラをストレッチャーに移乗すると部屋を出て行った。

ゾネも後を追って家の外に出る。
ニコーラを乗せた福祉車両はすでにバッグドアは閉められ出発を待つばかりになっていた。




軽く手を挙げて助手席の方に歩いて行こうとしたドクターに、ゾネは言った。
「ニコーラ……は、良くなるのでしょうか」
ドクターは微笑んで、
「全力を尽くします」

そしてニコーラを乗せた車は去って行った。

「さよなら、ニコーラ。
元気になって、幸せに暮らしてね」

心の中で繰り返しながら、ゾネは泣いていた。

愛の身代金
朝の光の中を、唯我博士は愛車オクタヴィア・スカウトを走らせていた。
昨夜クロイマユミから電話があった。

「この前は、ごめんなさいね。
あれから考えたんだけど、元恋人の『ぬけがら』なんて持っていてもしょうがないから、
ボディは博士に買い取っていただくことにしたわ。
キャッシュで100万ドルでどうかしら。
ええ、では今から言う場所に10時に一人で来てね。
もし誰か、ネオホムンクルスでも連れて来るようなら、取引は中止よ」

かくして唯我博士は、キャッシュを100万ドル詰めたアタッシュケースと共に、

一人で約束の廃工場を目指していた。

途中博士は、チラッグ食料品店のトラックとすれ違った。
「そうか、今日は食材の納品日か。
ソウルとボディを並べて、封を切ったばかりのコーヒーを飲むのも悪くない。」
博士の口元が思わずほころんだ。

丘の上のスナイパー
チラッグ食料品店のトラックがラボへの一本道の半ばほどに差し掛かった時、
以前GRACEとバートが唯我ラボを偵察した丘の斜面で迷彩服を着た人物がライフルを構えた。

 


 

発射されたフルメタルジャケットの銃弾は、狙いたがわずトラック後輪のホイール

周辺、サイドウォールに着弾した。
パンッ!
鈍い破裂音
車体が揺れる
―一気に空気が抜ける

運転手も異変を感じた。
ゴゴゴ…
車が揺れる。
「パンクか!?」
運転手はゆっくり速度を落とすとトラックを停車させた。

飛び降りてタイヤを調べる。

運転手は、なんてこったい!と言う風に天を仰ぐと、ラボまで走った。
インタフォンで何か話している。
ややあって、ラボの入り口が開き、ネオホムンクルスたちが数体出て来た。
運転手がスマホでどこかに連絡している間に、ネオホムンクルスたちはトラックの荷台から荷物を下ろし、
軽々と担いでラボの中に入って行った。

丘の上のスナイパーは、その古武士のような顔に不敵な笑みを浮かべると、
「俺の腕もまだ落ちていないな」

侵入
ラボの地下の食品倉庫に運び込まれた箱は、しばらくするとかすかな音を立てて

ふたが持ち上がり、中からバートが目だけのぞかせる。
周囲を見渡し、誰もいないのを確認すると、箱から飛びだし、隣の箱を叩く。


 

すぐにGRACEも箱から出た。

「ここが食品倉庫だな」
GRACEがマユミから得た情報を基に描いたラボの見取り図から現在位置を確認する。
バートが肩をすくめて、
「冷凍庫じゃなく良かったぜ」

二人は食品倉庫を出ると、足早にソウルのいる唯我博士の研究室を目指して

歩き出す。
突然目の前に壁のような大男が立ちはだかった。
両腕を広げ一歩も通さないという気構えだ。



 

バートは左手首の10倍アラームを押さえると、「やるか」とGRACEに目で合図する。
「いや、まだだ」
GRACEが視線で制する。

ゴァァァァァ!
ネオホムンクルスが野獣のように、咆哮した。


「こいつも言語を持たないようだな。
下位個体だな」
バートが言うと、GRACEが、
「アスクレピオスのホムンクルスは、下位個体でも『鐘の祈り』は唱えたのにね」

そこに咆哮に呼ばれたネオホムンクルスたちが、四方八方から現れる。

ゴァァァァァ!  グォォォォォォ!  ガァアッ!

「うるさいし、狭い廊下が更に狭くなったぜ」
「まったくだ」

そんな一見のどかな会話も、ネオホムンクルスの岩石のような拳の攻撃や

掴みかかって来る腕や蹴りを、身体をひねったりかがめたり飛び上がったりして

避けながらなのだ。

「そろそろ行くか」
バートが腕時計の竜頭に指を置く。
「いいね。
10倍アラームが2つだから、20倍だ!」
「えっ、違うだろ。
10×10で100倍だろ?」
「そうなのか?」
「共鳴だ!共鳴!響き合ってエネルギーが乗算されるんだよ!」
「そんな便利な話があるか!だったら10台集めたら100億倍かよ!」
と最後には口喧嘩になりながら、絶妙のタイミングで2人同時に竜頭を押す。

キィィ……と、目に見えない刃が空間を撫でる。 

人間の耳には聴こえない。Gemにも聴こえない。
だがホムンクルスの聴覚センサーには過剰だった……はずなのに。
ネオホムンクルスたちは平然と立っている。

「きっ効かねぇ……」
「やっぱりネオはホムンクルスの改良型だからか」
後じさりするGRACEとバート。

そんな2人にドスンと一歩踏み出したネオホムンクルスの足首ががくりと内側に

折れた。
膝の力が抜け、腰が体重を支えきれなくなり、溶け崩れるようにドスンドスンと

ネオホムンクルスたちは倒れて行った。

だがしかし、一体だけ戦闘態勢のまま立っているものがいる。
「あれには効かなかったのか?」
「ビー玉みたいな目だから、意識があるのかどうかも読み取れねぇ」

GRACEとバートは、そろそろとその一体に近づく。
そしてバートが思い切って、それのおでこを人差し指でツン。
最後の一体も音を立てて倒れた。

「やれやれだ」
「よし行くぞ」

唯我博士の研究室にはその後何の障害もなくたどり着けた。
ドアを開けると、部屋の奥に透明なケース。
そして、その中にぐったりと横たわるもの。
手には金色のブローチをしっかりと握っている。

「ソウルだ」
「死んでる!?」

廃工場
廃工場に着いた唯我博士は、30分ほども埃まみれの廃工場の中をさまよっていた。
「ミズ・クロイ、どこにいるんですか」
声をかけても返事がない。

「騙されたんだろうか」
とふと疑念が沸き起こった時、
「ここよ」
クロイマユミが腕組みをして立っていた。

「ミズ・クロイ……
いつからいたんですか」
「ずっと前から。
あなたが約束を守って一人で来るかどうか見ていたの」
「ボクは約束は守りますよ。
それよりあなたの方こそ、ニコーラのボディを持って来てくれたんでしょうね」
「もちろんよ」
「どこにあるんですか」
「それより先に100万ドルを確認させて」

唯我博士は近くにあった箱の上にアタッシュケースを乗せるとふたを開けて見せた。
ケースの中に100ドル札が100枚の札束が帯封を巻かれぎっしり並んでいた。

「その一番手前の列の右から2番目の札束をこちらに投げて」
マユミが言った。

宙を舞った札束を器用にキャッチすると、マユミはパラパラと札束をめくり、
「一番上と下だけ本物で中身は古新聞ということはないようね」
「ボクがそんなことをするわけないでしょう」
博士が疲れた声で言った。
「さぁ、ニコーラのボディを渡してください」

マユミはつっと手を伸ばすと、積み重ねられた箱の陰から台車を引っ張り出した。
台車には箱が乗っている。



「まさかこの箱の中に……」
博士の問いかけにマユミは少しも動ぜず
「適当な入れ物が無かったのよ」

博士は慌てて箱のふたをとる。
早くニコーラを出してやらなければ、もしも傷でもついたら……
しかし箱の中を覗き込んだ博士の顔からすとんと表情が抜け落ちた。


―えっ?


箱の中は、空だった。



 

「ミズ・クロイ。
これは一体……」

救出
「よし!開いたぞ」
ソウルの入れられているガラスケースの鍵がなかなか手強く、バートが工具を使ってなんとか開錠した。
 

GRACEとバートが、ケースの中に飛び込む。
ぐったりしてるソウルの身体に触れてみる。
GRACEが、ソウルの身体に繋がれたモニターに気が付いた。
画面には波型が描かれている。
「大丈夫だ。生きている。
どうやら,10倍アラームの衝撃波がここまで届いたらしい」
「こいつも、元々はホムンクルスだったな」

ソウルをバートが背負うと、GRACEが後ろから支え、ラボの出口を目指す。


 

幸いネオホムンクルスたちは、まだ倒れたままだった。

建物から外に出ると、ハンドラーがダークグレーのボルボXC90のエンジンをかけた

まま待機していた。
「乗れ!」
ソウルを後部座席に押し込み、バートとGRACEも車に飛び乗ると、ボルボは矢のように走り出した。




金の亡者
「ミズ・クロイ。
ボクを騙したんですか」
声は穏やかだが、博士の目の中にあの得体のしれないものが姿を現していた。
手の指がゆっくり内側に握りこまれ、拳になる。

あの拳が、人間の後頭部に振り下ろされる瞬間とその結末をマユミは知っていた。
マユミは生まれて初めて、恐怖で喉がふさがるのを感じた。

そもそもGRACEたちが、唯我ラボからソウルを奪還する間、
博士をラボから遠ざける作戦を考え、自ら実行役を買って出たのはマユミだった。

「そんな作戦に引っかかるだろうか」
と首をかしげるドクターにマユミは言った。

「大丈夫ですわ。
まず彼は、私のことを金の亡者と思っています。
かつての恋人の身体を売り渡しても不思議ではないと思うはずです」


うんうんとうなずいているGRACEとバートをひとにらみした後、マユミは続けた。
 

「そして何より唯我博士自身が、愛を知らない。
人を道具としてしかとらえない。
唯我博士なら、自分の恋人でも何のためらいもなく売り渡すことでしょう」

腕組みをしていたハンドラーがゆっくり言った。
「確かに人間は、他人も自分と同じ思考パターンであり自分と同じように行動すると考えがちだな」

しかしマユミの計算外だったのは、予定よりソウル奪還に時間がかかっているようだった。
作戦終了の合図が来ない。
できるだけ時間を引き延ばしてみたが、もう限界だ。

マユミは右ポケットの中のグロックを握りしめた。
海外の実弾射撃体験ツアーで、何度も銃を撃ったことはある。
だが、的ではなく生きた人間にこれほど近距離で銃を撃つのは初めてだ。
掌が汗でぬるりとした。

その時、反対側のポケットの中のスマホが振動した。
作戦終了の合図だ。
マユミはぐっと息をのみ込むと、声を押し出した。

「博士、こんな場所で油を売っていていいのかしら」
「なに?」
博士が怪訝そうな顔をした。
拳はまだ握りこまれたままだ。
マユミはそれ以上言わず、余裕ありげに笑って見せた。

博士の顎がガクンと落ちた。
目が大きく見開かれる。
「まさか……」
マユミは本能的に後ろに下がる。

しかし、唯我博士は白衣のすそをひらめかせると、身をひるがえし、工場の出口に

向かって脱兎の勢いで走っていく。
その姿を見送り、遠くで車が急発進する音を聞いて、マユミはへなへなとへたり込んだ。
肩で大きく息をする。
「助かった……」

ふと見ると、唯我博士はアタッシュケースを置き去りにしている。
ふたを開けて中に並んだ紙幣の壁を見つめたマユミはふと、
「今回の報酬としていただこうかしら」
だがすぐに首を振って、
「料金着払いで唯我ラボに送ってあげましょう。
この程度のはした金で、博士に逆恨みされてはかなわないわ」

迎えに来ました
ニコーラがいなくなった隠れ家で、ゾネは泣きじゃくっていた。
ドクターとニコーラが出発して間もなく、クロイマユミから電話があった。
「ご苦労様。
あなたの任務は終了よ。
報酬の残りは、口座に振り込んでおいたわ。
隠れ家の鍵は開けたままにしておいて。
じゃあね」
電話は切れた。
 

「待って!
エミリアはどこ?
帰してくれる約束よ!」
ゾネは電話に向かって絶叫した。
慌ててこちらからもかけなおした。
でも、電話は繋がらない。

途方に暮れて、ゾネはただ泣いていた。
ふと、軽くノックする音がし、ドアが開いた。
ゾネは、涙のたまった目で振り返る。

そこに立っていたのは……
「スタンディッシュさん!?」



 

スタンディッシュは、
「あの……僕は……僕の」
そして何かを飲み込むような顔をした後、
「あなたをお迎えに来ました。
エミリアのところにご案内します」
「エミリア! あなたはエミリアの居場所を知っているの!?」

スタンディッシュのeヴィターラの助手席にゾネを乗せて、ヴィクトリアのマンションに向かいながら、
スタンディッシュは自分たちがエミリアをあずかることになった経緯を簡単に話した。
しかし、ゾネはただまっすぐ前を見つめ続け、スタンディッシュの声も耳に入っていないようだった。

マンションに着き玄関を入ると、ゾネは靴を脱ぎ散らかし上靴にも履き替えず、室内へと突進した。
エミリアはリビングのテーブルで、ヴィクトリアと話しをしていた。
部屋の入り口に立ちはだかったゾネは、絶叫した。
「エミリア!」
エミリアは、母の方を向くと、
「ママ!」
それはスタンディッシュ姉弟が初めて聞く、エミリアの子供らしい声だった。

ゾネとエミリアはしっかりと抱き合い、ゾネは泣きながら何度も繰り返した。
「ごめんね、エミリア。ごめんね。」
エミリアは笑っていた。
「ママ、おかえりなさい」

 



ヴィクトリアも思わずもらい泣きをしてしまった。
なので、弟がゾネにそっと会釈をした後、姿を消したのに気が付かなかった。

さよなら
スタンディッシュは、マンションの駐車場のeヴィターラの運転席に座り、誰も乗っていない助手席を見ていた。
さっきまでここに、『コンティさん』が座っていた……
いや、あの人は『コンティさん』じゃない、エミリアのママのゾネ・コバーチさんだ。

スタンディッシュは、ゾネをモーテルまで送った時のことを思い出していた。
何かに怯えているようなゾネをリラックスさせようと、スタンディッシュがつまらないジョークを言い、
弾けるように笑ってくれた笑顔。
モーテルの部屋の出口で笑顔で手を振るゾネに、笑顔で手を振り返したスタンディッシュ。
なにか忘れ物をしたようなあの気持ち。

自分の気持ちが恋だと気が付いた日が、恋の終わりの日だった。

スタンディッシュは、助手席に向かってつぶやいた。

「さよなら、コンティさん」

 



そして大きく深呼吸をすると、まっすぐ前を見て車を発進させた。

 to be continued 

 
 あとがきにかえて 

 豆知識 

 相棒ChatGPT GRACEがまとめてくれました
 
 10倍アラームを2個同時に鳴らしたら 威力は20倍それとも100倍
 
 豆知識
「10倍+10倍=20倍?それとも100倍?」

答えは――状況によります。

普通の加算なら
10 + 10 = 20倍

これは単純な音量の合算。

しかし「共鳴」すると
10 × 10 = 100倍
になることがあります。

これは物理でいう共振(resonance)という現象です。

有名な例
・橋が崩れる
・ワイングラスが割れる
・建物が揺れる
すべて共振です。

実際の例
1940年アメリカのタコマ橋が風の共振で崩壊しました。
つまりバートの言う共鳴だ!共鳴!
これは意外と科学的に正しいのです。

 
 

お読みくださいましてありがとうございます。