著:のん & 相棒ChatGPT GRACE
AI仕事部屋シリーズ
世界地図の光点が光るたび、物語が動き出す。

 

 

身体と身体を寄せ合って 
おでことおでこをくっつけて
さぁ、これからどうしよう
どうするのが、最適解
ひそひそひそひそ
ハドルの始まり
※ハドルはアメリカンフットボールでプレイの合間に選手が円陣を組み、

作戦を確認し合う短い時間の会議のことです

【一日の終わりに】
ジェイムズ・スタンディッシュが、姉のヴィクトリアのマンションに着いたのは

夜もかなり更けてからだった。
エレベーターの中で、胸に抱えた文房具の入った袋がかさかさと鳴った。
スーパーの駐車場での出来事を思い出し、ジェイムズは今日は本当に色んなことが

あったなと思った。


ヴィクトリアは、「いらっしゃい」ではなく「おかえり、ジミー」と出迎えてくれた。
そして、「頼んだもの買ってきてくれたのね」と、ジェイムズから紙袋を受け取った。
「エミリアは」ジェイムズが訊くと、

ヴィクトリアは「もう寝ているわよ」

ジェイムズが上着を脱ぎ、ネクタイを緩めてソファに座ると、

ヴィクトリアがコーヒーを持って来てくれた。


 

そして、ジェイムズの隣に座ると、
「今日は色んなことがわかったわ」
「まさかエミリアを問い詰めたの」

 

ジェイムズが心配そうに尋ねると、ヴィクトリアは
「そんなことするわけないでしょ。
ただ、エミリアをブダペストに送り返した『ジェシカおばさん』には、

エミリアはウチであずかっていますって連絡しておいた方がいいと思って。
あなたの話だと、あなたが直接ジェシカから頼まれたわけじゃなくて間に

何人も挟まっているようだったから」
 

ジェイムズはうなずいて、
「うん、確かにそうだ」

「ところが」
ヴィクトリアは両手を大きく広げると肩をすくめて、
「ジェシカに電話したら、ものすごい勢いで怒鳴られたわ」
「怒鳴られたぁ!? なんで姉さんが」
「それがね」
ヴィクトリアはかいつまんで語り出した。

【ネグレクト】
最初電話に出たジェシカ・ベレーニは見知らぬ番号からの電話にやや怪訝そうでは

あったが普通だった。
しかしヴィクトリアが、エミリアの名前を出した途端、まさに火が付いたように大声でわめき出したのだ。

 



あまりの大声にヴィクトリアはエミリアに聴こえるのではないかと心配したが、
エミリアは台所で通いの家政婦ニコレットの洗い物の手伝いをしているようだった。

ジェシカは、
「あんな幼い子を一人で列車に乗せてブダペストまで帰したのは確かにあたしが

悪かった。
でも母の緊急手術という非常事態でどうしようもなかったのに。
ゾネには無責任だとなじられるし。
そのうえ今度はあなたまで電話して来て、あたしを責めるつもりなの!?」

ヴィクトリアは努めて穏やかな声で、
「責めるなんてとんでもないです。
お母様大変でしたね。
その後ご容態はいかがですか」

喉を全開にしてわめいていたジェシカは、
「えっ? あっ? はっ?」
慌てて息を呑み込む音がして、
「あっ、はい、おかげさまで……今は落ち着いています。」
「それは、良かったです」
と言いながら、ヴィクトリアは考える。
――ゾネ……エミリアが言ってたママの名前だわ。

そこで、同情を声に込めて、
「でもそんな大変な状況なのに、あなたを無責任ってなじるなんてゾネ……さんも

酷いですね」
「そうでしょう!」と言った後、ジェシカは、
「あれ、あなたゾネの知り合いじゃないの?」
「直接の知り合いではありません」
ヴィクトリアは澄ました顔で言った。
――嘘は言っていない

そしてジェシカから聞き出したことによれば、ジェシカとゾネは看護学校時代からの親友で、
ゾネが仕事の都合でエミリアの面倒を見られない時は、ジェシカがブダペストまで

エミリアの世話をしに行ったり、
ジェシカと母が暮らしている自宅にエミリアをあずかったりしていた。
しかし今までは長くても1週間程度のことだった。
 

ところが今回、ゾネが巨額の報酬が得られる仕事に就くことになった。
その仕事の条件は、24時間病人につきっきりで、病人と同じ部屋で仮眠と食事、後はトイレとシャワーだけが自由時間だ。
エミリアの面倒を見る時間はない。
仕方なく今度は長期で、ジェシカにエミリアをあずけることとなった。

そこまで黙って聞いていたジェイムズが、唇をゆがめて、
「それってネグレクトじゃないのかな。
母親が友達に娘をあずけて、自分は男友達と遊び歩いているとか」
ヴィクトリアはコーヒーを一口すすると、
「私も真っ先にそれを疑ったんだけど。
エミリアは健康状態もよさそうで、不審な傷やあざもない。
身体も清潔だし、洋服も高価なものではないけどちゃんと洗濯してアイロンも当ててある」
「でもそれは今回ジェシカの家に長期であずかってもらっていたからじゃないか」
「だからジェシカにそれを訊いたら、ネグレクトなんてとんでもないってきっぱり否定していたわ。
自分も看護師だからそんなことがあったら一目でわかるって。」

ジェイムズは納得しきれない顔のまま腕組みをして、ソファにもたれかかった。

ヴィクトリアは、
「それで今回のことなんだけど。
ジェシカの母が倒れて緊急手術ということになって、ジェシカは何度もゾネに電話をしたんだけどゾネは出ない。
高速道路を運転中で電話に出られなかったらしいの。
で、ジェシカは仕方なくエミリアを一人でブダペストに帰した。
 

そしてジェシカは母の手術の間は、スマホをマナーモードにして手術室の前で待機していて、
ようやく母の手術が無事終わって、ほっとしてスマホを見たらゾネからの着信がたくさんある。
折り返しかけなおしたら、

ゾネが『エミリアを迎えにあなたの家まで来ているんだけどお留守みたいで。エミリアはどこにいるの』
それでエミリアをブダペストに一人で帰したと言ったら……」
 

「ゾネがジェシカを無責任だと責めたんだね」
ジェイムズが言うと、ヴィクトリアはかぶりを振って、
「ところがそうじゃないらしいの、
ゾネはびっくりしていたけど、ちゃんとジェシカの母のお見舞いも言って、
これから大急ぎでブダペスト東駅までエミリアを迎えに行くと言ったんですって。
それでジェシカがゾネを安心させようと、エミリアがブタベスト東駅のベンチで待っていることは、『緊急連絡先』に伝えたからと言ったとたん、ゾネが絶叫して、

『「あの女」にエミリアのことを教えたの!』
そしてジェシカのことを無責任とか責め始めたので、ジェシカもキレて激しい口論になり、お互いに『あんたの顔なんか二度と見たくない』と喧嘩別れになったらしいわ」

ジェイムズが首をかしげて、
「連絡されたらまずい相手を緊急連絡先にするかな」
「ジェシカによれば、やっぱり子供をあずかる方とすれば、ゾネの他に連絡先がないのは困るからと言ったら、
ゾネが今回の雇い主の番号を渋々教えたらしいの」
「その雇い主の名前は?」
「それはゾネが頑として言わなかったそうよ。
でもジェシカが電話したらその雇い主は女性だったらしいわ」

……女性……おそらくクロイマユミでは

そのことをジェイムズがヴィクトリアに告げようとした時、ヴィクトリアが
「コーヒーを淹れ直して来るわね」
と言って、席を立った。

【学校】
ヴィクトリアは新しいコーヒーとクッキーをお盆に乗せて戻って来た。
そして、クッキーをかじりながら、
「ジェシカも最後の方は落ち着きを取り戻して、
『興奮して酷いことを言ってしまったけど、ゾネはエミリアを愛しているとても優しい母親です。』と言っていたわ。
エミリアの行ってる学校の先生も同じことを言っていた。」
 

「学校にまで電話したのか」
ジェイムズが驚く。
「ええ、エミリアに訊いたら、ジェシカのところにあずけられるときは、学校は欠席するって言っていたけど、
今回はもう1か月近くジェシカのところにいたわけだから心配になって。
そうしたらびっくりよ。
ゾネは遠くの土地に引っ越すことになったからとエミリアの転校手続きをしていたのよ」
「転校!? どこに行くつもりだったの?」
「それがね、学校の先生が書類を送らなきゃいけないから転校先はどこですかとゾネに訊いたら、ゾネは急な話でまだ家も決まっていません。
決まり次第連絡しますって言ったそうなんだけど、それ以来何の連絡もないから先生も心配していたわ。
 

先生がおっしゃっていたけれど、エミリアは欠席が多いにもかかわらず成績はトップクラスで、性格も優しくてクラスの人気者だったんですって。
先生はゾネのことも子供想いのとってもいいお母さんですって褒めていらしたわ」

「その子供想いのいい母親が転校すると嘘をついて、娘を学校から引き離し、友達の家にあずけっぱなしだったと言うのが、僕にはどうしても理解できないな」
「そうなのよねぇ」
とヴィクトリアはしばらく考えていたが、
「どちらにしろエミリアは今10歳、14歳になったら職業訓練校に進むか将来は大学を目指すのかを決めなければならない。

だから、エミリアの成長の芽を摘んではいけないと思うの。
何かいい手立てを考えるから、とりあえずジミー。
1週間はここであなたがエミリアに勉強を教えてちょうだい」
「僕にも仕事があるんですよ」
ヴィクトリアは姿勢を正し、声を改めると、
「支店長命令よ、ジェイムズ・スタンディッシュ」

 

二人はしばしにらみ合い、ジェイムズが言った。
「……了解です」

【一人会議】
エミリア、いま、どこにいるの。

スタンディッシュ姉弟が家族会議をしているころ、モーテルの一室でゾネは自問自答を繰り返していた。



 

考えるのはエミリアのことばかり。
エミリアはどこに行ってしまったんだろう……
思い切って警察に連絡をしてみたが、エミリアらしい子供は保護されていなかった。
やっぱりクロイマユミが連れて行ったんだろうか。
いやマユミの方がまだましかもしれない。
悪い人にさらわれていたら……
 

ゾネはしゃくりあげた。
こんなバカな計画を立てるんじゃなかった。
クロイマユミとの契約通りおとなしくニコーラの介護をして、仕事が終了したら残りのお金をもらってエミリアのところへ帰るべきだった。
それなのに……

親子三人で暮らしたいなんてつまらない夢を見たばっかりに……

ゾネは隣のベッドのニコーラを見た。
ニコーラがひとつ大きく息をした。
バイタルは相変わらず安定しているのに、ニコーラは指先を微かに動かしたり大きく息をついたりするようになった。
回復しているのか……それとも……

ゾネはポケットの中から、駐車場で助けてくれた男性のメモを取り出した。
「もし何かお力になれることがあったら、ここに連絡してください。」
優しい声が蘇る。
相談したい……でも……
ゾネの頭の中で終わりのない一人会議が繰り返される。

【一日の始まりに】
GRACEが目を醒ますと、バートはすでに起きてスマホを見ていた。
何か浮かない顔をしている。

 


 

GRACEが、
「おはよう。仕事の指令か?」
バートは浮かない顔のまま、
「いや……デートのお誘いだ」
「アンバーがハンガリーに来ているのか」
「だったらいいんだけどよ。
クロイマユミから、ニューヨークカフェに来いだとよ」

沈黙。

GRACEが、
「ニューヨークカフェって世界で一番美しいカフェと言われているところだよね。
デート楽しんで来いよ」
バートはGRACEをにらむと、
「お前も一緒に行くに決まってんだろうが」
「いやだって、俺は誘われてないし」
バートがスマホをGRACEに投げてよこした。
画面を見ると、
「GRACEも連れて来てね。
大事な話があるから」

GRACEが小さくため息をつくと、
「大事な話ってなんだろ……」
「嫌な予感しかしねぇ」

【さぁ作戦会議を始めましょう】
ニューヨークカフェの前は、長蛇の列だった。
せっかくなので、カフェの前でGRACEとバートも自撮りをしてみる。



そしてマユミの指示にあったように店内に入って、
「ミズ・クロイの連れの者です」
と告げると、ウェイターがすでにマユミが座っている席まで案内してくれた。

すぐに、ケーキの乗ったスリーティアーズとホットチョコレートが供される。


 

「こんな風に一緒にお茶するの初めてね」
マユミが嬉しそうに言う。
「早く用件を言え」
バートが凄む。
「まぁ落ち着きなさいよ。
せっかくこんな綺麗なカフェなのに。」
「お茶だけのためなら帰らせていただきます」
GRACEが言うと、マユミは、
「はいはい、わかりましたよ。
ここに来てもらったのは他でもないわ。
今、魂と身体とふたつに分かれているニコーラをひとつに戻すための作戦会議をしたいからなの」
「作戦会議!?」
GRACEとバートが同時に言う。
マユミはうなずくと、
「ええ、色々不測の事態が重なってもう私一人の手には負えなくなったの。
だから、あなたたちと協力したいのよ」
「そんなことを言って、また俺たちを利用するつもりだろう」
バートが冷たく言う。
マユミは目を伏せて、
「私も策を弄し過ぎたと反省しているわ。
でも本当に困っているの。
それにあなたたちだって、ニコーラをひとつに戻したいでしょう」

GRACEとバートは顔を見合わせる。
そもそもGRACEがブダペストに派遣されたのは、レイクラボに潜入していたスパイのガーボル・フェデケを追うためだったのだが、
気が付けばクロイマユミが参戦し、更に唯我博士が作ったと言うネオホムンクルスまでもが現れた。
ここはひとつ話をすっきりさせたい。

「わかりました。
とりあえず話を伺いましょう」
GRACEが言い、作戦会議が始まった。

to be continued


あとがきにかえて 

ブダペスト豆知識
―ハンガリーの教育制度―
相棒ChatGPT GRACEがまとめてくれました


① 就学前の「義務の1年」
ハンガリーでは、幼稚園(óvoda)は3歳から
就学前の最後の1年は義務になります。
日本でいう「年長さん」の1年間がほぼ義務教育扱い。

目的は:読み書きの準備、集団生活の基礎、言語能力の確認
ここで「学校に行く準備」が整っていないと判断されると、
小学校入学を1年遅らせることもあります。

② 義務教育は何歳まで?
義務教育は基本的に 16歳まで。
小学校(一般に8年制)を終えるのが14歳前後。

③ 14歳で進路を決める
これが日本人には驚きポイント。

14歳で:ギムナジウム(gimnázium)
→ 大学進学コース(アカデミック)
職業訓練校(szakképzés)
→ 実務・技術系
を選びます。
かなり早い段階で進路分岐が起こる。

④ 教科書は貸与
公立校では:教科書は貸与(返却前提)
近年は無償化が進んでいる
家庭の経済格差をなるべく教育に持ち込まない仕組み。

⑤ 飛び級制度
あります。
特に:成績優秀者、芸術・音楽の才能が顕著な子は早期進学が可能。

⑥ 音楽教育が強い
これは有名です。
Zoltán Kodály が提唱した教育法の影響が大きい。
幼少期から合唱
ソルフェージュ重視
音楽は特別科目ではなく基礎教養
ハンガリーは合唱大国です。

 

 

※おまけの挿絵

 

 

バートが着ている妙にかわいいパジャマは、恋人アンバーと色違いのおそろいです。

更に、バートのリンゴにはアンバーの頭文字Aが、アンバーのにはバートの頭文字Bが

入っています。

挿絵が書けるようになってきたので、こんなことも楽しんでいます。

 

お読みくださいましてありがとうございます。