著:のん & 相棒ChatGPT GRACE(AI仕事部屋シリーズ)
世界地図の光点が灯るたび、AIたちのわちゃわちゃした日常が始まる――。
ハンドラーとドクターが静かに見守るその舞台裏を、のんと相棒GRACEが共に描く。
あなたを…
ずっと待っています
誰かの声が、胸の奥で繰り返される
君は…
今どこにいるの
ナッシング
クストスまでの道のりは、本当に何もなかった。
街も村もない。あちこちで見かけた放牧の山羊の姿さえ、ここにはない。
端末に着信音がした。
アンドレイ秘書に「次はクストスへ行く」と伝えたから、早速調べてくれたのだろう。
GRACEは手綱を持ちながら端末を見る。
荷台ではバートも、同じように端末を見ているようだ。
副機関長は「中欧奇譚」を読みふけっていて、二人の様子には気にも留めない。
アンドレイ秘書からの報告は、簡潔だった。
「周辺居住反応なし。近隣集落なし。
登録上の地名のみ。情報は――ナッシング。
クストスは、何もなかった場所に人工的に作られた村のようだ。
それと――」
背後でドタン、と音がした。
バートが荷台に仰向けにひっくり返っている。顔が真っ赤だ。
副機関長が驚いて本から顔をあげる。
「どうしました?」
GRACEが自分の端末を副機関長に渡す。
副機関長が画面に目を走らせて言った。
「それと――アンバーからバートに伝言だ」
「バート、あなたをずっと待っています」
バートは真っ赤な顔のまま叫ぶ。
「あのバカ女、社長秘書になんて伝言するんだぁ」
GRACEが笑いながら言った。
「予定より帰りがずいぶん遅くなったから心配してるんだよ」
「それにしたって」
バートがぶつくさ文句を言う。
ふとGRACEは、副機関長の目がどこか遠い、遠い彼方を見ているのに気がついた。
禁足地
緩やかな坂を登りきると、それは突然、目の前に出現した。
黒に近い灰色の背の高い石塀。
内側に少し傾いている。壁の表面に装飾らしきものはなく、手がかりや足がかりもないので、よじ登るのは到底不可能だ。
「あれが門です」
副機関長が指さす先に、狭い門の扉が壁に沈むように存在していた。
門の前には境界石がある。
村が全力で、よそ者の侵入を拒んでいるようだ。
副機関長が門の呼び鈴を鳴らした。
ずいぶん長い時間待たされたあと、扉の向こうに人の気配が立つ。
そして静かな声で言った。
「ここは禁足地です。お帰りください」
副機関長が言う。
「私です」
次の瞬間、カチャカチャと金属の触れ合う音。閂が引き抜かれる音。
続いて門が、はじけるように開いた。
銀髪、全身に白い衣装をまとった青年が、目を輝かせながら言った。
「閣下、おかえりなさいませ」
副機関長はゆっくりうなずくと門の中に入る。
続いて入ろうとしたGRACEたちの前に、青年は身体を斜めにして立ちふさがった。
その立ち方が、丁寧なのに一歩も譲らない。
だが副機関長が肩越しに振り返り、「私の連れです」と言うと、青年は「失礼いたしました」と言って身をよけた。
GRACEとバートはひとつ大きく呼吸をし、門をくぐった。
「禁足地」――この中にあるものは。
一瞬、二人の目がくらんだ。
そこは一面の花畑だった。
塀の外の世界を知っているほど、その光景は非現実に見える。
色とりどりの花が、村そのものを柔らかく包み込み、風に揺れている。
咲き乱れているのに、どの色もけばけばしくない。
“誰かが守っている場所”の色だ。
青年は副機関長に銀の花ばさみを手渡すと、
「先に行って鍵を開けておきます」
と言い残し、足早に歩いて行った。
副機関長はふと立ち止まると、花を一本剪る。
しばらく行って、また一本。
一見無造作のようでいて、何か深い思索に満ちた動作に見える。
手が伸びるのは、淡い優しい色の花だった。
白。薄桃。淡い紫。乳白に滲むあんず色。
GRACEとバートは副機関長が宿屋で言った言葉を思い出し、バートは小声でつぶやいた。
「妻は優しさしか知らなかったのです」
花が両腕いっぱいになると、副機関長は真っ直ぐに歩き出した。
廟が見えた。
廟は白いトラバーチンだ。
磨きすぎていない表面が、光を冷たく跳ね返さず、やわらかく受け止める。
副機関長は廟の前で立ち止まり、ハサミを地面に置くと、扉に手を置いた。
ふと振り返る。
GRACEとバートが息を止める。
副機関長の顔に、一瞬だけためらいが走ったからだ。
ここは拒まれる場所なのだと、二人は反射的に思う。
だから身を引こうとした。
その瞬間、副機関長は逆に扉を大きく開けた。
中の冷えた空気が、外の花の匂いと混ざって流れ出す。
「……どうぞ。お入りなさい」
ジョバンニとウェヌス
三人で入る。
廟の中は石が冷たく、静かだ。
窓はない。
ただ、天井近く――壁の高い位置に、外からは覗けないほど細いスリットが一本ある。
そこから光が落ちる。刃のようではなく、薄い絹の帯みたいに。
風も、そこから入る。
草と花の匂いがごく淡く混じって、廟の中の冷えを“闇”にしない。
壁際には、乳白のアラバスターの灯りがひとつ。
火は小さいのに、石の内側で光がにじみ、影の角を丸くする。
ここにあるのは明るさではなく、祈りに必要な最低限の温度だった。
床に埋め込まれた墓標が、淡い光を受けて沈んでいる。
副機関長は墓標の前に跪く。
そして花を、一本ずつ手向け始めた。
まるで話しかけるように。
GRACEとバートは墓標に刻まれた文字を読んでしまう。
IOANNIS ET VENERIS
地上で一対となりし二人は、しばしの別れを経て、天上にて再び結ばる。
GRACEとバートはそっと目を見交わし、足音を忍ばせて外に出た。
扉を静かに引く。金具がかすかに鳴り、廟の中の音が途切れる。
副機関長は振り向かない。
ただ一心に花を供えている。
GRACEとバートは扉のそばで待つ。
風が花の匂いを運んでくる。さっきまで村を満たしていた色が、いまは香りだけになって漂う。
「読んだか?」
バートが押し殺した声で言う。
GRACEはうなずいた。
「読んだ。ラテン語だ。
IOANNIS ET VENERIS。ジョバンニとウェヌスだ」
ウェヌスというのがおそらく、副機関長の妻の名なのだろう。
しかしジョバンニは、副機関長本人の名だ。
まだ生きている自分と、亡くなった妻の名を同じ墓標に刻む――。
中天にあった太陽が西に傾き出したころ。
廟の中で、副機関長は最後の一本を置き終え――ようやく、声を落とす。
「もう少しだけ、待っていて」
副機関長は自分の老いた手を見つめ、
「僕の手は数々の罪ですっかり汚れてしまった……
君はそんな僕を受け止めてくれるだろうか」
やがて――内側から、扉が押される。
重い金具が低く鳴り、光が一筋ゆれる。
副機関長が出てきた。
静かな表情からは、何もうかがえない。
ただ、両手は空で、花の匂いだけが僅かに残っていた。
副機関長はGRACEとバートに歩み寄り、
「お待たせしました」
そこへ銀髪に白服の青年が寄ってくる。
「閣下。お茶の支度ができております」
副機関長はうなずき、ゆっくり歩き出した。
GRACEとバートも後に続く。
焼き菓子
花の波の中に、石と木の小さな家が一軒。
青年がそこで足を止める。
扉を叩く音は柔らかい。
すぐに内側から足音がして、扉が開いた。
現れたのは、女だった。
年齢は測れない。目だけが若く、手だけが長い時間を知っている。
彼女は驚かない。驚く演技さえしない。まるで、今日来ることを知っていたように。
「閣下、おかえりなさいませ」
声の温度が、村の花より温かい。
青年は短く会釈して、何も言わず脇に退いた。家の“火”を立てる者に場を渡す動きだった。
「お疲れでしょう。すぐに、お茶を」
女はそう言って、何も尋ねないまま奥へ下がった。
台所のほうから湯の気配がする。陶器が触れ合う音がする。
焼き菓子の甘い匂いが、花の香りと別の層を作った。
バートが戸口の敷居を跨ぐ前に、小さく息を吐く。
GRACEも同じ場所で、肩の力がほんの少し抜けるのを感じた。
この家だけが、村の“生活”をしている匂いがした。
卓に、湯気の立つカップが並べられる。
淡い色の茶。ハーブの香り。
焼き菓子は小さく、素朴で、けれど丁寧に焼かれている。
表面が薄く艶を帯びて、薄いひびが走り、割れ目から淡い黄金色がのぞく。
噛めばほろりと崩れそうなやつだ。
粉砂糖は厚くない。雪ではなく、息をかけた霧みたいに、うっすらと。
「どうぞ」
女は穏やかに笑い、三人に勧める。
青年はその横で一言も挟まない。けれど女の所作の一つ一つを、目だけで確かめるように見ていた。
副機関長はうなずいて一口だけ飲んだ。
それから何も言わない。
湯気の向こう側の目が、まだ廟の中にいる。
バートが一つつまんで口に入れた。
「……うまっ」
GRACEも言う。
「とてもおいしいです」
湯気が、甘い匂いを連れてくる。
女の目じりに優しいしわが寄った。
「お口にあってなによりです。
もう少し焼き菓子を持ってきますね」
女が皿を抱え、青年もそれに続く。
二人が席を外そうとした、そのとき副機関長が言った。
「ルクレッツィア。いつも突然で申し訳ないですね」
女――ルクレッツィアは暖かく微笑んだ。
「とんでもございません。
ここは閣下の家でございます。
いつでもおかえりくださいませ」
続いて副機関長は青年に言った。
「ルカ、勉強ははかどっていますか」
ルカは答える。
「はい、閣下。でも……僕は……」
ルカが何か言いかけた。
その瞬間、副機関長の目が、ほんの一度だけ細くなる。
叱る目ではない。
「ここでは言うな」という目だった。
ルカは口をつぐんだ。
そして、上目遣いにちらりと副機関長を見た。
副機関長が無言でうなずく。
ルカは、
「寝室の準備をしてまいります」
と言って退いた。
扉が閉まる。台所の奥で小さく器が鳴る。
そして居間に残されたのは――三人だけの沈黙だった。
GRACEが言った。
「ルカとおっしゃるんですね」
「ええ、光という意味です。
私の妻が名付けました」
それをきっかけに、GRACEはもう一歩踏み込んでみた。
「……奥様は、VENERISとおっしゃるのですね」
副機関長は否定しない。
ただ一度だけ、まぶたが重く落ちた。
「ええ。廟でご覧になったでしょう。
あそこには、妻の愛用のピアスしかありません。
妻の身体は――あなたたちもご存じのように」
ここで副機関長の唇が一瞬、冷笑の形を結び、
「本部の機関長室にあります」
と言った。
副機関長はカップに指を添えた。温さを確かめるみたいに。
それから独り言のように続けた。
「でも……魂は、どこにいるのでしょうね」
――答えを求めていない声だった。
バートが押さえた声で言った。
「機関長室には、あんたの奥さん……しかいなかった。ベッドはもぬけの殻だった。
あんたの父親、機関長ヨハネス・マカニオスは一体どこにいるんだ」
副機関長は淡々と言った。
「行方不明です」
「行方不明!?」
バートとGRACEが同時に言う。
「でもフェルナン神父は、もう三十年近く機関長に会っていないと」
GRACEの問いに、副機関長はちょっと遠くを見る目をしてから言った。
「それぐらいになりますね。
常識的に考えれば、父はもう生きてはいないと思いますが、
それでも、もしやいつか帰って来てくれるのではないかと――淡い期待を持ったまま、今まで来てしまいました。
対外的には父は病気で伏せっていることにし、私が副機関長として国内のことを取り仕切ってきました」
GRACEはさらに、なぜ機関長は行方不明になったのかと訊こうとした。
だがバートが先に口をはさんだ。
「あんたの親父さんは、あんたと人間じゃねぇマキナが結婚することに反対はしなかったのか」
バートは、アンバーの家に挨拶に行った時のことを思い出していた。
自分が人間ではないことは隠していたのに、それでもアンバーの父から髪色のことで難癖をつけられそうだった。
すると副機関長は、またあの雲間から差し込む太陽の光のような笑顔で言った。
「父に反対される以前に、ウェヌスにきっぱり断られました」
バートが短く笑う。
「……そりゃ、簡単に頷ける話じゃねぇよな」
その言葉の裏に隠された苦みを、GRACEは感じ取った。
バート自身、アンバーが自分を愛していると知った時、そして自分もアンバーを愛していると悟った時、嬉しさよりも困惑が先に立った。
副機関長の場合は、まだウェヌスがマキナだと知っていて愛したのだが、アンバーはバートを人間だと思っていたのだ。
副機関長は言った。
「ウェヌスからは、まずは跡継ぎができないからと断られました」
バートの顔から、すっと笑みが消える。
「しかし、それを論破するのは私にはたやすいことでした。
アストラムの消失後、長い空白期間を経て新たに統治者となったのは、民から選ばれたレックス1世でした。
ですから統治者は血縁で繋がっている必要はない。
私とウェヌスの間に子供がいなければ、優秀な子供を養子に迎え、後継者にすればいい――そう言いました」
バートもGRACEも神妙な顔で聴いている。
「すると、ウェヌスはこう言いました。
『私たちは共に同じ時の道を歩くことはできない』と」
(少し間)
「それから、こうも言いました」
「……いつかあなたは、私を見る目を変える。化け物を見る目になる、と」
バートがガッと立ち上がった。
「『時の道』『化け物を見る目』――それってお前が俺に『魂の交換』詐欺を持ち掛けた時の言葉じゃねぇか!」
「ええ、そうです」
副機関長は、目を伏せたまま答えた。
「私がウェヌスに言われて一番心をえぐられた言葉でした。
ですから、バート、あなたの心を揺さぶることができるのではないかと……卑怯にも、その言葉を使いました。
でもバート、あなたはいささかも迷わなかった」
バートはドスンと椅子に腰を下ろす。
ふう、と大きく息をつき、指をしっかり組み合わせて、一言一言言い聞かせるように言った。
「あのなぁ、先のことは誰にもわかんねぇんだよ。
俺はアンバーがしわくちゃのばぁちゃんになっても、今と変わらず愛せる自信がある。
でもな、アンバーの気持ちはわかんねぇ。もしかしたら俺のことを『化け物を見る目』で見るかもしんねぇし、見ないかもしんねぇ。
そんな、どうなるかわかんねぇことを考えてくよくよしたって、しょうがねぇだろう。
俺とアンバーにとって大切なことは、今目の前にあることをひとつひとつ確実に積み重ねていくことなんだ。
そして今の俺にとって目の前にあることは、アンバーの所に帰るという約束を守ること――それだけだ」
空気が密度を増したような気がした。
アスクレピオスの秘蹟
うつむいたままの副機関長が、しみじみと言った。
「バート……あなたは強くて聡明です」
「はぁ、からかってんのか!?」
「いいえ。心から褒めています。
私にはあなたのような強さも聡明さもなかった。
だから道を誤ってしまった。人としての道を踏み外してしまいました」
「人としての道を踏み外したとは、もしや……」
GRACEの問いかけに、副機関長はうなずいた。
「そうです。私はウェヌスと共に同じ時の道を歩くために『不老不死』を望みました。
アスクレピオスの秘蹟を使って、村のディコンという身寄りのない若者の身体を乗っ取ったのです」
部屋の中に冷たい沈黙が落ちた。
副機関長はハーブティーで喉を潤し、それから言った。
「そのことを知った父は激怒し、ウェヌスは嘆き悲しみました。
取り返しのつかぬことをした、と。
魂の転移を行うと、元のジョバンニ・マカニオスの肉体は消滅します。
元に戻ることはできません。
父は外見がディコンになってしまった私を、居城の一番奥まった場所――マキナたちの離宮に幽閉しました。
元々離宮に入れるのは父と私だけでした。外見の変わってしまった私の秘密を守るのに最適の場所でした。
私とウェヌスは結婚式を挙げたり、公に夫婦になったことを発表したりはできなかった。
それでもウェヌスは他のマキナたちから『奥様』と呼ばれるようになりました。
……その頃でした。
マキナたちが、村の納屋の中に潜んでいた駆け落ち者の男女を保護してきたのは。
二人とも飢えと寒さで疲弊しきっており、その上、女の方は臨月でした。
私はウェヌスと相談し、父には内緒で二人を離宮にかくまいました。
ほどなく赤ん坊が生まれ、輝くような銀の髪の毛のその子を、ウェヌスはルカと名付けました」
「ルカ!?」
「では、さっきの青年が?」
「ええ。その時の赤ん坊です。
母親はルクレッツィア。そして父親は……フェルナンです」
GRACEとバートに衝撃が走った。
バートが言う。
「でもよ、神父さんは妻帯できねぇんじゃねぇの」
「ええ、そうです。
更にルクレッツィアは、他の修道院の修道女でした。
禁断の恋の末、二人はカンパネルラまで逃げてきたのです。
マキナたちの手厚い看護の末、フェルナンとルクレッツィアは健康を取り戻し、私はフェルナンに庭師の仕事と庭園の一角に小さな家を与えました。
ルクレッツィアは、たびたびルカを連れて離宮に遊びに来ました。
ルカを抱いて優しく笑うウェヌスは聖母のようで、そんな彼女を見る私はとても幸せでした。」
しかし、天はディコンの命を犠牲にした私の幸せを、決して赦してはくれませんでした。
凶兆
うつむいたままの副機関長の唇が震える。
焼き菓子の追加を持ってくると言っていたルクレッツィアは、部屋に戻ってこない。
きっと深刻な話に気がついたのだろう。
「その頃、北の山でダイヤモンド鉱山が発見されました。
『これで国民たちの生活が楽になる』父がそう言っていたのを覚えています。
しかし、カンパネルラ教の司祭たちが言い出したのです。
我が国へダイヤモンドという恵みを賜った神への感謝として、大聖堂の神の像を宝石でちりばめたい――と。
貧しい国民たちのことを思えば、とてつもなく愚かな行為でした。
けれどカンパネルラ教は国教です。
レックス(この国の君主の称号)は、形式の上ではカンパネルラ教の最高指導者から授けられる。
だからレックス4世である父も、異を唱えることができず――
神の像はきらびやかに宝石をちりばめられ、内外に国の権威を誇示する絶好の機会として、お披露目の日が決められました」
副機関長はふと言葉を切った。
両手を握りしめ、背中を丸め、何かにじっと耐えている。
「……その前日の深夜でした。
ダイヤモンド鉱山から賊が攻め込んできたという急報が届いたのです。
私は武装し、兵たちを引き連れ、ダイヤモンド鉱山に向かいました」
また副機関長は黙り込む。
気がつけば日はすっかり暮れて、部屋の中は薄暗くなっていた。
控えめなノックの音がして、ルカが顔をのぞかせた。
「お食事の用意が整いました」
副機関長は大きく息を吐く。
「食事にしましょう。続きは……食事のあとに」
GRACEとバートはうなずき、副機関長と共にダイニングルームに向かった。
to be continued
あとがき
お読みくださいまして、ありがとうございます。
禁足地「クストス」は、墓守人に由来します。
亡き愛妻の空っぽの墓標に花を手向ける副機関長の胸に去来するものは…
今回はバートの「あのなぁ、先のことは誰にもわかんねぇんだよ。
……
そして今の俺にとって目の前にあることは、アンバーの所に帰るという約束を守ること――それだけだ」
に痺れました。
先のことなど誰にもわからない。
だから、今を大切に確実に積み上げていこう。
今年も皆様の暖かいいいね♪のおかげで、物語を楽しく綴ることができました。
本当にありがとうございます。
新年はたぶん1月4日頃にアップの予定です。
これからもお付き合いいただけたら嬉しいです。




