【進行性の病気で、今後を考えると一番の気がかりは何ですか? 生活はどうなっていくとご自身は思われていますか?】

この質問は、ALSのような進行性の病気を抱える人なら、一度は真正面から向き合う問いだと思います。
実際、僕もこれまで何度も「これから先、生活はどうなっていくのか」と考えてきました。

でも、振り返ってみると、僕にとって本当に大きかったのは、病気そのものよりも、「家族の暮らしを守れるか」「この生活を失わずに済むか」という現実の問題でした。

人工呼吸器をつけて1年半が過ぎた頃、それまで経験したことのない大問題が、突然、僕に降りかかってきました。

それは、自宅や土地など、それまで築いてきたものをすべて失ってもなお足りないほどの深刻な問題でした。
相手は二つの金融機関。

ある日、裁判所から通知が届き、めったなことでは驚かない僕も、その時ばかりは肝を冷やしました。
まさに寝耳に水でした。

僕には法律の専門知識がありません。
そこでまず弁護士に聞きましたが、返ってきた答えは「争っても負けます」の一言でした。
ほかの弁護士に聞いても、大きな全国組織の弁護士に尋ねても、答えは同じでした。
「勝ち目はない。早めに相手にお願いした方がいい」と。

でも、これくらいで諦めないのが僕です。
往生際が悪いのではありません。
僕も馬鹿じゃないので、それなりの考えがありました。

それは、「争ったら、なぜ負けるのか?」
「なぜ、勝ち目がないのか?」
その理由を、法律の専門家からきちんと聞きたかったのです。

なぜなら、負けたら家族は裸同然で放り出されるからです。

そう思うと、ALSのことなどどうでもよくなりました。




僕の頭の中にあったのは、「たとえ力尽きても、命が尽きても、家族だけは守る」という思いだけでした。
とにかく、家族を守るために必死でした。

まず相手に対して、納得できない点を質問状にまとめ、説明を求めました。
すると2日後、支店の責任者と本店の担当者がやって来て、法的措置を取った経緯を当然のように説明し、同意を求めてきました。

ここで同意すれば、すべてを失う。
そう感じた僕は、静かな交渉を始めました。

やがて裁判所による家屋調査も入り、状況は待ったなしになりました。
それでも僕は止まりませんでした。

自分で法律を徹底的に勉強しました。
相手が法律で来るなら、こちらも法律で対抗するしかない。

動けなくても、喋れなくても、人工呼吸器をつけていることなど、相手には全く関係ありません。
だから僕も、寝る間を惜しんで勉強し続けました。

ついには裁判官にも手紙を出しました。
返ってきたのは温かい返事と弁護士の紹介でしたが、その弁護士の答えもやはり「負けます」でした。

それでも僕は諦めませんでした。
そして最後は、弁護士に頼らず、自分一人で争う覚悟を決めたのです。

詳しくは書けませんが、結論だけ言えば、僕は全面的に勝ちました。
二つの金融機関は過失を認めて謝罪し、法的措置は取り下げられ、何も失わずに家族を守ることができました。

2年以上に及ぶ闘いでしたが、今振り返ると、この経験が僕を大きく成長させ、結果的にALSの進行さえ忘れさせてくれたのだと思います。

この2年以上の闘いを通して、僕は大事なことに気づきました。
人は「病気そのもの」だけで生きているのではないということです。
守りたい人がいる。
守りたい暮らしがある。
叶えたい日常がある。
その思いがあると、人は思っている以上に強くなれるのだと思います。

一般的にALSは進行が止まらない病気と言われています。
けれど、実際に僕のALSは2008年ごろから進行が停止し、医師もそれを認めています。

これは珍しいことかもしれませんが、僕だけが特別だとは思っていません。
同じように進行が落ち着いている方も、きっといるはずです。

だから僕は、今後の生活についても暗くは考えていません。
もちろん工夫は必要です。
支えてくれる人の力も必要です。

でも、工夫しながら暮らしを守ること、笑顔を失わずに前を向くこと、その積み重ねで未来は十分に変えていけると感じています。

病気が進行性だからといって、人生まで進行性に暗くなる必要はない。
僕はそう思っています。
これから先も、自分らしい生活を続けて、笑いながら、一日一日を積み重ねていきます。

追伸:妻の笑顔が消えた日、僕は初めて“助けを借りる決断”をした
YouTube→https://youtu.be/bdTCXs0m4mc