雨が続いても外猫ベッテルは元気です。
今日、水曜日は久々に雨が降っていません。
三階ベランダノドアを開けるとベッテルがやってきました。
相変わらずの憂い顔ですが・・・、
体調はいいようで、ベランダをうろつきまわった後、
ゴロリと寝転がりました。
まだ、コンクリートは湿っているんですけどね。
一方、家の中にいるのが退屈になってきたのがシマポンママ。
窓を開けろとうるさいのです。
カラッと晴れれば、気持ちいいのですが、雨が降っていないと言ってもどんよりとした天気。二階のベランダは水たまりもあるので、晴れれば日向ぼっこをしてもらいます。
と、説得しているのですが、なかなか通じません。
不満そうです。
チビポンはハチワレ君たちのいる三階物置部屋に上がってきました。
チビポンは、全員と仲がいいので、ハチワレ君ともあいさつします。
ドロシーも、ここにいます。
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ラノベ「抗いし者」第19話
奇策の崩壊
奇策の崩壊
聖都ゴンゴザを出て十日。予定通り直線距離で進んでいれば、遠征軍はすでにナラヤに到達していたはずだった。
しかしガルビエスは、荒れ野を突っ切る最短ルートではなく、街道沿いの町々で兵を休ませながら、ゆっくりと東征を進めていた。
『兵の疲労は戦の勝敗を左右する』というのが彼の持論である。
この日は、多神教徒の牙城・タウリンにほど近い温泉町・ソレンタを宿営地としていた。
ここで三日ほど静養する予定だった。
タウリンが近いことで、異教徒側の情報もよく入る。
それによると、モブリンでの徹底した鎮圧が功を奏し、フーラ教徒たちの反乱は勢いを失い、各地で宗教警察が治安を乱していた者たちを次々に連行しているという。
であれば、『恥乱の魔女』の捕縛を急ぐ必要もあるまい。
じっくり策を練り、芸術的に勝利し、担いできた、『罪人をさらし者にする檻』に入れて凱旋すればよい。
両手首を鎖で繋がれ、泣きわめく魔女。
(想像しただけでも心が躍る。連れ帰るのが今から楽しみだ)
ガルビエスはそう考えて、口元を歪めた。
彼が『恥乱の魔女』の弱点を部下に語り、「恐れることは何もない!」と喧伝したことで、鏡砕隊(聖都救済隊)の士気は日増しに高まっていた。
「ぜひ私も遠征軍に参加させてください!」
「わが村の兵士たち全員がお供いたしたく存じます!」
という声も多くなったが、精鋭揃いの聖都救済隊に有象無象を加えるのは足手まといだ。
どうしたものかと考えていたところ、バシュラムが提案した。
「ならば私が彼らを鍛え上げ、聖都救済隊の盾となる『粉砕隊』を結成しましょう」
ガルビエスはそれを受け入れた。
こうして遠征隊の規模は、出立時の倍――千六百名に膨れ上がった。
その頃、ガルビエスが魔女の弱点を突く策を探っているという噂を聞きつけ、出世を狙う者たちが次々と珍妙な案を持ち込んできた。
最初こそ謁見を許していたガルビエスだったが、あまりの低俗さに呆れ、以後は取り合わないことにした。
たとえば、フェレンザの昆虫学者をしているという男は――、
「閣下、ある種のミツバチがスズメバチを倒す方法をご存じですかな?」
と切り出して来た。
「小さなミツバチたちがスズメバチを取り囲み、その熱で殺すのです」
「だが、そのミツバチ役の人間には敵意があるではないか?」
「ですからまず『恥乱の魔女』のファンであるという女を百人呼んできます」
「それで?」
「ナラヤの町に『恥乱の魔女』を誘き出し、そこでガラガラポンの抽選をさせます」
「で?」
「結果は大当たり! なんとファンの女たちと一緒にソレントへの温泉旅行が」
「で?」
「全員で温泉に入り、のぼせたところを……」
「却下!」
また古代史の研究者を名乗る男はこう言った。
「ヤルケノ村の山の上から、松明を括りつけた千頭の鹿を追い落とすのです! 動物には悪意がありませんから、魔女の術は効きません! しかも千頭の鹿がなだれ落ちるのを反射させることは物理的に不可能です!」
どこかで聞いたような策だが、根本的に詰めが甘い。
ガルビエスは冷たく言った。
「だがどうやって千頭もの鹿を集めるのだ? それを山に誘導し、松明を括りつける?大騒動だな。いっそヤルケノの村人をアルバイトで雇うか?」
男は考え込み、規模を縮小した。
「では鹿の代わりにポンポラにしましょう。十頭ほど」
「ロバには松明を括りつける角がないではないか」
「そ、それなら兵が松明を持ってポンポラに乗り、山を転げ落ちます!」
ガルビエスは眉ひとつ動かさず言った。
「こやつで実験させろ」
ポンポラに乗せられて連れ出される男の悲鳴が遠ざかると、ガルビエスは深いため息をついた。
「まったく。こんなたわけた案しか出せぬのか、こやつらは」
バシュラムが控えめに言う。
「しかし閣下、動物を使う案そのものは理屈としては間違っておりません。悪意なき攻撃という点では……」
「動物を使うこと自体は否定せん。だがあれは策と呼べるものではない。只の思い付きだ」
ガルビエスは椅子に深く腰掛け、指先で机を軽く叩いた。
「魔女の術は心を跳ね返す。だから心なき力を使えばよい……。と、そこまでは誰でも辿り着く」
バシュラムが息を呑む。
「では、閣下は……?」
「問題は、どうやって魔女に当てるかだ」
ガルビエスの目が鋭く光る。
「動物は気まぐれだ。仕掛けは壊れる。子供を使うなど論外。あれは意志なき攻撃ではなく、意志を持つ者を利用した攻撃にすぎん」
「では……何を?」
ガルビエスはゆっくりと立ち上がり、窓の外の山並みを見つめた。
「自然だ」
「はあ自然……ですか?」
「風、石、水、重力。これらは誰の意志でもない。ただそこにある力だ」
バシュラムは息を呑む。
「まさか……そのようなことを……」
「そうだ。自然の力を魔女にぶつける。魔女の術は反射できまい。なぜなら、自然には悪意がない。落石、土砂、倒木、洪水どれも“意志なき攻撃だ。魔女がどれほど強かろうとズバルトの言葉を借りれば、神の力の前では魔女といえど、ただの人間にすぎん」
ガルビエスは机の上にヤルケノ周辺の地形図を広げ、山の傾斜と川の流れを指でなぞって思いを巡らせているようだ。
「閣下。このバシュラム、感服いたしました」
「芸術的だろう? 魔女を捕らえるのに、剣も槍も必要ない。ただそこにある自然を動かせばよいのだ」
そう言ってガルビエスは満足げに笑った。
だが上官に深々と頭を下げたバシュラムは笑ってはいなかった。
なぜ子供を使ってはいけないのだ?
女を家畜のように扱うガルビエスらしくもない。
利用できるものは利用すべきだろうに。
それに、以前策を売り込みに来た学者の一人を雇って、何やら秘密の算段をしているのも気に入らない。
この時、バシュラムの中にガルビエスに対する反抗心がむくむくと湧いて出た。
元々軍部の序列では俺の方が上だった。
それなのにガルビエスは呪術を使い、女を利用することで、のし上ってきた外道だ。
こんな温泉町で毎日一人、女の生気を食って楽しんでいる化け物など、放っておいて俺が先に『恥乱の魔女』を拘束できれば、一度は落ちたズバルト様の信頼も取り戻せるに違いない。
その時にはガルビエスの吐いた『天国などあるものか』と言った神を冒涜する言動を問題視し救済隊から追放、いや宗教裁判にかけて獄に繋いでやる。
そう思った。
バシュラムには考え抜いた策があった。
それは悪意のない命令書を二枚用意するということだった。
アルランの花は美しく香りも良い、それに劣らずヨウレンの花も美しい。
だが、決してこれらの花を近づけてはならない。
花屋ではアルランを扱う時は絶対にヨウレンを置かない。
この二つの花の香りは『混ぜると危険』なのだ。
つまりフーラ共の町に駐留する宗教警察に命じ、一人の子供にアルランの花を扱う花屋で『恥乱の魔女』へアルランの花束を大量に送らせる。
別の子供には、ヨウレンの花を扱う花屋で、大量に購入させて『恥乱の魔女』に同日同時刻に届けさせるのだ。
すると『恥乱の魔女』は気絶して捉えられ、俺はそれをズバルト様に届ける。
「我ながら完璧な策だ!」
バシュラムは直ちに直属の部下に命じ、作戦を実行させた。
ところが、〈ズバルト様に届けるのだ『恥乱の魔女』を……〉〈アルランとヨウレンの花を同時に届けることによって、気絶させる〉という攻撃性が。自動的に反射してしまった。
注文を受けた花屋はそれぞれ、宛先をズバルトにしてしまったのだ。
つづく











