台風の爪痕
台風6号は水曜日未明、和歌山県南部に上陸し、近畿地方を後にしました。
朝、見に行くと、やっぱりだいぶ風が吹いた痕跡があります。
心配なのは、ここで住んでいる外猫のベッテルですが、雨除けのスダレを支えるオレンジ色の台(右上)もここまで移動していたため、ベッドも濡れていました。
これではしばらく帰ってこないかと思っていたら・・・、
どこからか、帰ってきました。
無事だったみたいですね。外猫は大変です。
若干、情けなそうな顔をしていますが、ベッドの壊れた箱は取り替えますからね。
台風などは大丈夫なシマポンママと・・・、
チビポンは何事もなく・・・、
台風が通り過ぎるのを待っていました。
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扇風機が大好きになったハッチ君
このところ、扇風機を付けると、その前にやって来るハッチ君。
そよ風がお気に入りのようです。
扇風機を嫌う子は多いんですが、ハッチ君は大好きなようです。
風邪を引かないようにね・・・。
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連載ラノベ「抗いし者」第2話
第2話 ナラヤの町の下水道
混乱が広がる広場で、どこにも行けずに立っていた私の手を引っ張る者がいた。
オークの衣とかいう物を着た小柄な人物――。
さっきからずっと、私を熱い視線で追いかけていた、あの視線の主。
「早くこっちへ。あいつらが体制を立て直す前に……」
女の子の声だった。少し息が上がっているけれど、芯の強い響きがある。
私は考えるより先にその手に引かれ、黒衣だらけの人混みの隙間を縫うように走り出した。
背後ではまだ隊長が「狭い! 暑い! むせる! 臭い! 誰か助けろ!」
と悲痛な叫び声を上げ続けていた。
私は彼女に付いて広場を脱出した。
路地裏へ滑り込むと、途端に日差しが遮られ、ひんやりとした影が落ちる。
でもそこは腐った食べ物の臭いと、獣の糞の臭いが漂っている場所だった。
それでも、市場の喧騒から離れられただけで、少しホッとした。
「さあ早く。ここを下へ降りるの!」
小柄な影は路地の奥にある、鉄の蓋を力いっぱい持ち上げた。
下から冷たく湿った風と、強烈なメタン臭が吹き上がってくる。
下水道だ。
「え、ちょっと待って……マジで入るの?」
「迷ってる暇なんてないわよ!」
(確かにそうだ)
私は鼻を押さえながらも、彼女に続いて梯子を降りた。
スニーカーがズブリと汚水に沈む感触に、背筋がぞわっとした。
制服の白ソックスが一瞬でぐっしょりと濡れて、足先から冷たくなっていく。
それに暗い。お化けが出そうなほど暗い。
時折、天井の隙間から僅かに地上の光が漏れてくるだけで、ほとんど何も見えない。
足元はニチャ、ニチャと粘つく感触で、時々何か柔らかいものが踵に当たる。
うわぁ……これ、絶対に後で拭き取る時にゾゾッとするやつだ……。
「異国の人? いきなり驚いたでしょう?」
前方から、くすくすと笑う声が響いた。
彼女はオークの衣の頭部分を少しだけめくり、顔だけを出していた。
薄明かりの中で見えるその顔は、私と同じくらいの年頃――
十五、六歳くらいの少女だった。
大きな瞳と、少し跳ねた前髪が印象的だ。
「あっ、これ? 拘束の衣がなんで自分で脱げるのかって思った? 実は中から簡単に脱げるように、縫い目を改造してあるの」
そう言って縫い目の部分を私に見せた。
「村の女の子たちでこっそり加工してるのよ」
彼女は得意げに胸を張った。
暗い下水道の中で、そんな仕草をするのがなんだか可愛くて、笑ってしまった。
「マイラっていうの。あなたは?」
「私は……川瀬千草(かわせちぐさ)。チグサって呼んで」
「チグサ? 変な名前ね。どこから来たの? タウリン?
それとももっと遠い海の向こう?」
「日本っていうところ……でも、そんな国、知らないよね?」
マイラは少し首を傾げて少し考えた後、
「知らないわ」とあっさり答えた。
その瞬間、胸の奥がヒュンッと冷えた。
(そうだろうと覚悟はしてたけど、私は本当に一人なんだ……)
下水道は迷路のように枝分かれしていた。
壁には古い数字のような記号が刻まれていて、マイラはそれを指でなぞりながら、迷わずに進んで行く。完全に地図を把握しているようだった。
感心していると彼女はさも得意そうに――、
「私は女だけど、数字が読めるのよ。やつらに見つかった大変だけどね」と、口に指をあてて、秘密だという表現をした。
ここでは女性が数字を読むことさえダメなのかと、唖然としていると……、
彼女は勘違いしたのか――
「実は私、足し算もできるの。村の男たちはみんな『女が数字を知ると魔女になる』なんて言うけど、だったら私はもう立派な魔女ね!」
とイタズラっぽく笑った。
こんな世界では、うかつに、
「私だってね、二次方程式くらいだったら解けるんだよ」
なんて言ったら、本当に火あぶりにされかねない。
走り続けてどれくらい経っただろうか。
冷えと疲労で足がつりそうになって来て、息も上がってきた頃、ようやく前方から明るい光が見えてきた。
「ここよ!」
と、彼女がうれしそうに言った。でも……、
出口は小さな鉄格子で塞がれていた。
それをマイラが器用に外すと、そこから小川へと繋がっていた。
私たちは冷たい水に足を浸しながら、格子をくぐって地上に出た。
外の空気が、こんなに美味しく感じるなんて……。
陽の光が眩しい!
下水道の悪臭から解放された途端、肺が喜んでいるのが分かった。
周囲は里山の裾野だった。
私は下水道で汚れたスニーカーと靴下を脱いで小川で洗い、絞った。
周りを見渡すと、緩やかな斜面に低木が生い茂り、ところどころに赤や黄色の野花が咲いている。
「ここから三タバーンほど行ったところに、ヤルケノ村があるの。ダルーガ教徒たちが吐き捨てるように言う、異教徒の村よ」
「三タバーンって……どのくらい?」
「タバーンが三つってこと。タバーン、タバーン、タバーン。分かる?」
全然分からないけど、彼女が一生懸命説明してくれているので、私は素直に頷いた。
道中、マイラは時々立ち止まっては周囲を警戒しながらも、
「この辺りはナラヤ地方と言って農業や林業が盛んなところなのよ」と、観光ガイドのように話してくれた。
林道を避けながら、けもの道を進む。
ちょっと、というか大分きつかったけど、山道を上りきると、視界が一気に開けた。
ヤルケノ村は里山を一つ越えたところにあって、山の頂上部から見ると、ヨーロッパの寒村といった感じ?
少し違うのは円形の城壁で囲われている点で、そこは中世のお城みたいだった。
(お城は無いけどね。物見やぐらは二つあるみたい……)
村の周りには水を満たした堀まであった。
「ちょっとここで待っていて。防備隊をやってる兄さんにあなたのことを話してくる」
マイラが村の城門から中に入り鎖帷子に身を包んだ男に、
私を指さして何か話し込んでいた。
途端にビシッという音が聞こえ、マイラが張り倒されていた!
男の怒鳴り声と、負けじと言い返すマイラの声が聞こえる。
私は歓迎されていないことを知って、めっちゃ不安になった。
しばらくすると、マイラが鎖帷子の男を伴ってこちらにやって来た。
「マイラが連れて来た異邦人と言うのはお前だな」
そう言いながら鎖帷子の男は、漫画に出てくるセクハラ親父のように私の姿を上から下まで舐めるように見た。
「なるほど。やつらが、節操のない恥知らずの、淫らでバカな露出女と言うのも分かる……タウリンの酒場の踊り子のようだな」
(宗教警察もそこまで言ってません! そんなにウチの制服って変?)
「悪いが、村長に留めても良いか聞くまでは拘束させてもらおう」
鎖帷子の男はそう言いながら、自分で自分の腕を縛り上げた。
「ボルク兄さん、何を……。チグサの呪術が発動したってこと?」
マイラが驚いて声を上げた。
私もびっくりして手を口に当てた。
つづく










