足が痛い…
少し体を動かすだけで、激痛が走る。

何故、僕は歩けないの?
何故、僕の足は痛いの?
何故、僕は此処でうずくまっているの?

何故…

何故…、誰も僕を助けてくれないの?


僕は、数日前に凄い勢いで走ってきたバイクに撥ねられた。

驚いて、逃げた。
いや…逃げたつもりだった。

実際は、道路の端に這ってこれただけで、僕は体中が痛くて動けなかった。

車は、何事も無かったかのように、走り去った。

僕は、数日間痛みに耐えながら動けないでいた。

お水も無い、ご飯も無い。毛布も暖かい手も無い。

僕は、冷たいアスファルトに蹲ったままで、朝が来て、寒い夜が来て、また朝が来る。
そうして、ただじっとしているしかなく、自分がどうなるのかも分からなかった。

朝が来た…
あれっ?女の子が僕を見ている。
近づいて来た。僕は痛くて逃げる事も動くことも出来ない。
もう、どうなっても良いと思った。
だって、僕は此処でこのまま死んでしまうのだから。
でも、心のどこかでは、誰かに助けて貰えるかもしれない…いや、助けて欲しいと、わずかな望みも持っていたのかも…。

女の子は、僕を抱き上げ、そして歩き始めた。
僕は、激痛に耐えながらも、身をゆだねるしか無かった。
気を失いかけながらも、「もしかしたら、この女の子は僕を助けてくれるのかな?」と思った。


「ただいま!お母さん!大変なの。子猫が怪我をしているの。お母さん助けて!」

夕飯の支度をしていた女の子のお母さんは、抱えられた僕を見て驚いた。
それと同時に、少しだけ困ったような表情をした。

「子供の純真な動物愛護精神、弱い立場の命を守ろうとしている優しさを、大人の都合で踏みにじってはいけないわね」そう言うと、僕の為に空き箱にタオルを敷いて、僕をそっと入れてくれた。

「さて、どうしたら良いのかしら?」
「お母さん、この子を助けてあげて。お願い」
お母さんと、女の子は僕の事で話し合っている。
女の子は、僕を助けようと、色々と何かを調べている。

ごめんね、迷惑をかけてしまって。僕は心の中でお詫びを言った。
そして、ただただ、箱の中でもうずくまって、激痛に耐えていた。
このまま、優しい女の子の近くで、猫生を終えるかもしれないな…。


また朝が来た、女の子は「モチモチ!行って来るね。早く元気になってね」
そういうと、学校へ行った。
女の子は、死にかけている僕にも名前をつけてくれたんだ。
「モチモチ」って。ありがとう。


お母さんが、僕の箱を覗き込みながら、電話で誰かと話している。
「はい。娘が…はい…。ええ。はい…」

暫くすると、女の人が2名で籠を持ってやってきた。

「こんにちは。中学生の娘さんからメールを頂きました、ボランティアのNPO法人ねこけんです!」

何だろう?僕の苦しみを無くしてくれる人達かな?

2人の女性は、お母さんと「僕の事」で話をしている。

お母さんは、「娘の優しい心を大人の都合で踏みにじることは出来ないけど、どうこの子猫を助けたら良いのか分からない。でも、何とか治療費の一部を出しますので、助けてあげてください。」

2人の女性は「純粋な子供の優しさの見本になるように、娘さんの気持ちに私達も答えたいんです。」と言った。

僕は、数日耐えていた痛みが強くなり、ついには気を失った。
僕、このまま死んでしまうのかな…。最後に優しさをありがとう。
薄れていく記憶の中で、「モチモチ、元気になってね」と、女の子の聞こえた気がする。

気が付くと、僕は箱ごと病院の診察台に居た。
先生や看護士さんが、入れ替わり立ち代り僕を覗き込む。
あっ!僕はまだ生きているんだ。

そして、レントゲンだの何だの、点滴だのと、僕の周りは慌しかった。

そして、腕にチクッと痛みが走り、僕はまた気を失った。


僕は、今、動物病院に入院しています。

僕の足は、動きません。
靭帯が切れているって、先生が言っていました。
手術で治るかもしれないし、治らなくても歩きにくいだけで、命には別状は無いだろうって言われました。

ボランティアさんは、手術費用を聞いた途端「足が悪くても、愛情があれば関係ないよね…」と言いながらも、「いつ手術が出来ますか?一日でも早くお願いします。で、早くていつ?」と聞いていた。
僕の足を治そうとしてくれているんだ。

そうか、僕は、足の靭帯が切れてしまったから動けなかったんだ。横たわりながら、痛くて痛くて、このまま死んでしまうのかな?とも思ったけど、あの女の子が助けてくれたんだ。そして、その後ボランティアさんが、僕を救ってくれようとしている。

生きよう!僕は、元気になって、生きよう!
もし、足が治ってもとのように走り回れても、もしも足が悪いままでも、生きよう!

だって、「モチモチ、早く元気になってね」って、あの女の子の声が聞こえるんだもん。


僕、生きる!元気になる!決めたよ。
ありがとう。生きる勇気をありがとう。

元気になって、僕を助けてくれた女の子にお礼を言わなくちゃ!元の僕の姿を見せなくちゃ。


僕は、体力の回復を待って、手術をする事になりました。

ありがとう!皆さん!僕、生きる!
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