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理恵と剛くんがこっちを見ている。
理恵が、もうちょっと早く
剛くんと出会っていたら・・・。
あたしは・・・。
いやいや、もう過ぎた事だし。
・・・いやいや、それにしては
ちょっと悔しい。
あたしは思わず、言ってしまった。
『・・・・・・。
もういないし、上野さん知らないだろうし、
誰にもしがらみがなくなったから
言っちゃいますけど。
あたし、前にお店にいた
尾崎さんていう人が好きだったんです。
・・・ 多 分 。
もう、遠くに行っちゃって、
どうしてるかも分からないんですけど。
・・・やっぱり好きなんだって、最近ようやく気がついたんです・・・。
かなり、バカですけどね・・・。』
かなり、理恵に向けて
言ってしまったような部分もある。
理恵が固まっている。
尾崎さんの事を知らない剛くんは、
不思議そうな顔をして
あたしの事を見ていた。
あーあ・・・。
これって八つ当たりじゃん・・・。
最低だな、あたし・・・・。
しかし意外な事に。
今のあたしの発言に、
なぜか上野さんの顔色がみるみる変わっていった。
『尾崎?おまえ、いま、尾崎って言ったのか?』
『え?』
『おまえ・・・・。それ、尾崎に言ったのか?』
『はい?』
な、なに この人?
『言 っ て な い の か ? 』
いー。 Σ(゜д゜;)
いきなり威嚇してきた。
ド至近距離で威嚇され、
別の意味で(←いわゆる怯え)
心臓がバクバクしながら
しどろもどろで答える。
『い、言えるわけないじゃないですか。
尾崎さんが、名古屋のどこへ行ったのかも
教えてもらってないし。
だいたい、あたしが尾崎さんを好きって気がついたの、今ですよ、今。』
『おま・・・。バカじゃねぇのか?』
上野さんのでかい顔がさらに近づいてきた。
うわー。
こわー。
女性に向ける顔じゃないだろ、それ。
なに?この人?
突然、上野さんが立ち上がり、あたしの腕を掴んだ。
理恵と剛くんが
上野さんを止めようとするが、
上野さんはそれを振り払ってあたしを掴んだまま
ドアを開ける。
『ちょ・・・。上野さん!』
『由香。いいから来い。』
あたしは半ば引きずられるように
事務所を後にした。
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