雑誌社の女編集長から電話があった。今月締め切りの原稿のテーマの相談だ。いつも1週間前くらいに確認電話があるのだが、野人は翌日には綺麗サッパリと忘れてしまうので必ず締め切り当日の朝9時頃に催促電話がかかる。「テーマ・・何だ?」と聞き返すのが恒例になっている。それから二時間で1200文字きっちり仕上げて11時には送る。2時間もあれば書き上げてしまう。出張中なら携帯メールでも構わない。それがもう9年続いているのだ。「凪」は県内誌で年に4回発行、創刊号からエッセイを書き続けている。エッセイストは他にも数人いたのだが、だいたい2年くらいで入れ替わった。野人が9年もやっているのはネタが尽きないのと、雑誌の企画に合わせてどんなテーマの依頼でも「ハイハイ」と軽く引き受け、断ったことがないからだろう。水だろうが塩だろうが何でも書いてしまう。誰も信じてはくれないが曲も作ったし楽譜だって書ける。政治経済でも構わないが、エッセイ名は「野人の食卓」だ。「野人エッセイす」もこの名を拝借した。
年に6回発行の別の雑誌とエッセイの掛け持ちしていたこともある。他には朝日新聞のコラム、マップルの図鑑、県の小冊子など色々書いたが、本業は漁師、副業は会社経営(笑)、研究は植物と農業だ。発行人も編集長も派手なタイトルが好きで、地味なものは塗り替えられ、野人はいつも野獣にされてしまうのだ。ある日、編集長が野人の靴下を嗅ぎ、臭わないので「不思議~!」と言うから、「世の中には不思議なものなどない、君の顔だって成るべくして成ったんだ、重力に反してそのように・・」。しばらく考え込んでいたが難しく考えるほどわからないものだ。
凪は中高年からのライフワークをこだわりと多彩な視点から捉えた雑誌で、大切に保管したくなるようだ。県外などの遠方からバックナンバーの注文が多いらしく編集長は苦笑いしていた。つまり、記事が色あせる事がないと言うことなのだろう。関心ある人は「月兎舎」で検索すると良い。今月は久しぶりに締め切り前に書くかな・・・春だから海藻が良いとか、沖縄の長寿食の秘密を書けとか言っていたがよくは覚えていない。適当で良いのだ。気に入らなかったらまた書けば良い。元々頭にないものは書けない。

