架空の人物でしかないのに・・・・・・事件の精神的ショックが大きくて被害者意識が強くなってしまうのを抑えられない。
10月31日、ママは必ず一緒にいてくれた。
そのママは、冬樹パパと一緒にアメリカにいる。
「ここは高層マンションなんだから大丈夫っ!前の一軒家じゃないんだから」
自分に言い聞かせるものの、心の底に嫌な感覚が芽生える。
「ただいま」
考え込んでいた杏梨は、突然の雪哉の声に飛び上るほど驚いた。
「ひゃっ!」
「どうした?そんなにびっくりして?」
「ゆきちゃん・・・・・・ううん 玄関が開く音に気付かなかったからびっくりしただけ」
ソファーから立ち上がって雪哉の腰に腕を回す。
「おかえりなさい」
すぐに離してキッチンに向かう。
「今日はね、ビーフシチューとマリネと、ゆきちゃんの好きなバゲットだよ」
「おいしそうだ 着替えてくるよ」
嬉しそうに言って、リビングからいなくなった。
* * * * * *
「おいしいよ」
雪哉はビーフシチューを一口食べてから杏梨に言った。
「良かった♪今日は寒かったから」
「あぁ 急に冷え込んできたね つい最近までは暖かかったのに」
杏梨は明日、早く帰ってきてくれるように頼もうとバゲットをちぎりながら考えていた。
「杏梨」
「なあに?」
「明日から1泊でグラビア撮影に行ってくるよ」
「えっ・・・・・・」
1泊・・・・・・ってことは帰ってこない・・・・・・の?
「紅葉バックにグラビア撮影なんだよ」
「い、1泊もかかるの・・・・・・?」
「スケジュールではそうなっているみたいだね」
「ゆきちゃんじゃないとダメなの・・・・・・?」
表情を変えないように杏梨は聞いてみた。
ゆきちゃんは仕事なんだから、無理言っちゃだめだ・・・・・・。
「そういう契約になっているからね どうかしたのかい?」
様子がおかしい杏梨に雪哉は眉根を寄せた。
「・・・・・・なんでもないよ お土産何買ってきてもらおうかな」
仕事をキャンセルして欲しい・・・・・・という言葉と無理やり飲み込んだ杏梨だった。
続く