8月25日の午前11時~「子宮頸がん(HPV)ワクチン」に関する裁判が東京地裁で開かれ、傍聴に行ってきました。

この日は製薬会社証人に対する原告側の反対尋問でした。

 証人は住谷昌彦氏(東京大学医学部付属病院医師。麻酔科・痛みセンターの診療責任者で、慢性疼痛の専門家。

 この証人は、前回の主尋問で、「原告に現れている多様な症状は……すべて心理・社会的要因による症状である」と主張しています。

 これに対して、原告代理人から、これらの症状は「自己免疫的な機序で生じていることを示す論文が多数ある」ことが示され、故に「心理・社会的要因による症状とは言えないのではないか」と指摘され、それに対する住谷氏の回答。

「これらの論文は質が低い、問題点がある」と。あるいは、「研究の進め方そのものに問題がある、動物実験にすぎない」として、論文そのものを否定しました。

『ランセット(The Lancet)』や、さらに『ネイチャー(Nature)』という世界でも有力な科学雑誌とされている論文を否定したのです(ちなみに、「例のスタップ細胞の論文を掲載したのがネイチャーである」というのも信頼できない一つの理由だそうです)。

 しかし、住谷氏自身の書いた論文には、これらの医学雑誌からの引用が垣間見えると問われると、それには答えませんでした。

 住谷氏の主張を一言でいえば、HPVワクチンの副反応といわれる症状はすべて「心理・社会的な要因によるものである」ということです。

 ワクチン一般においても、ある特定の人には副反応が出現することは科学的に周知の事実であるにもかかわらず、HPVワクチンにおいては、「それら症状はすべてワクチンとは直接関係のないもの」であると、つまり、「HPVワクチンの被害者は存在しない」という、耳を疑うような主張なのです。

 ベンゾの離脱症状時にもよく見られる線維筋痛症様の全身の痛みは、HPVワクチンの副反応としてもよく見られる症状ですが、それも、「心理・社会的要因によって生じる痛み」と断定しました。

 その理由は「痛みがあちこち移動するから」、本物の痛みではないというわけです。

 痛みは心理・社会的要因によって生じているため、患者は痛みに関する「認知が歪んでいる」、故に「認知行動療法」が効果的とのことでした。が、この医師は、心理・社会的要因による症状として、たった5人の患者を診ているにすぎないのです。

 その他の例では、住谷氏によると、当事者が「痛い」と訴えても、「いや、それはあなたの認知がおかしいからです。あるいは、痛いと言えば同情されるし、学校に行かなくてすむかもしれない、そういう疾病利得が根底にあるのかもしれません」と、すべて患者本人の責任にされるわけです。

 これはたまったものではありません。

 

 さらに「羞明」もベンゾの離脱症状としてよく聞きますが、HPVワクチン副反応でも多く現れます。そのため患者の多くはサングラスをかけますが、住谷氏によると「それは視線を見られたくないからサングラスをかけているのではないか」という信じがたい論理が展開されました。要するに心理的な要因があって、患者は医療者と視線を合わせることができない、というわけです。

 もう一点。歩けないから車椅子に乗っているのに、本当に筋力が落ちている患者とは明らかに動きが異なるため、本当に筋力が落ちているわけではない(人前で車椅子に乗って疾病利得を狙っているが、見ていないところでは動くことができているのではないか(だから筋力が落ちない))と、これもまた信じがたい論理です。

 傍聴には車いすの女性も参加していましたが、いったいどんな気持ちでこの医師の言葉を聞いていたのでしょう。胸が痛くなりました。

 反対尋問は11時から休憩をはさんで午後5時まで続きました。

 長丁場の尋問のため、時間稼ぎが目的なのでしょうか、住谷氏の答弁は、イエスかノーで答えられる質問にも、教科書的な説明をダラダラと(しかも早口で)展開し(今何時?という質問に、時計の成り立ちから話し始めるといった感じ)、専門用語を駆使して煙に巻こうとしている態度がありありでした。

 不誠実と感じたのは、私だけではないと思います。

 医学者として、科学者としての良心という言葉を思い浮かべました。

 

 ちなみに、この住谷氏は製薬会社(HPVワクチン製造会社以外も含む)から2021年度だけで、960万円もの謝礼金を受け取っています。(資料に残る2017年から毎年、ほぼこれに近い金額を受け取っている。つまり、アルバイトで副収入が毎年1000万円近くあるということです。)

 HPVワクチン製造会社であるGSKとMSDからは業務委託、あるいは講師謝礼という名目で以下の金額が動いています。
(ちなみにGSK(グラクソ・スミスクライン社は抗うつ薬パキシルの製造販売を行っていますが、多くはアメリカにおいて裁判が多数起こされその和解金の大きさから向精神薬の新規開発からは手を引いた会社です。その代り、ワクチン事業で一儲けというわけです)。)

GSK(ワクチンはサーバリックス)

   2020年度 677,626円 

   2021年度 1,418,853円

   2022年度 1,418,844円  709,422円

   2023年度 608,076円  405,384円

MSD(ワクチンはガーダシル・シルガード)

   2018年度   111,370円

   2021年度 158,804円

   2022年度   555,814円

   2023年度  158,804円

 

 こうした金銭の動きについて被告代理人の言い分。

「住谷医師にはいろいろ相談をしており、その謝礼をGSKが払うのは正当なことである」

 しかし、こんな金まみれ証人の言葉がどこまで「公正」なのか、大いに疑問が残ります。

 

 判決までにはまだ時間がありますが、こうした専門家の証言や利益相反について裁判所がどう判断を下すのか見物です。

 しかし、HPVワクチンは現在も継続中(定期接種・無料で、しかも現在は接種が男子にまで広がっている)であり、テレビCMにも盛んに流れています。そうした中で、裁判所そのものがこれまた「公正」な判断を下すことができるのかどうか、かなり危うさ感じています。

 

 医療はすでに信頼すべきものではなくなってしまったのかもしれません。

 医師まかせにせず、自分で確かめ、自分で決断する。

 じゃ、なんのために医者はいるんだよーと思われるかもしれませんが、まず「医者がカバーできる範囲は、こちらが考えているほど広くはない」ということを肝に銘じておいたほうがよさそうです。