「正しい治療と薬の情報」2004年 Vol.19 №12 に浜六郎氏(医薬ビジランス研究所)の、パキシルの承認試験における興味深い論文が掲載されているので紹介する。



2例中2例死亡の結果を隠ぺい

 浜氏が取り上げているのは、パロキセチンの製造元、スミスクライン・ビーチャム製薬(この論文の書かれた平成12年当時はまだ合併の前である)の新薬承認情報集№47における実験結果についてである。つまり、この結果は製薬会社が行った実験結果ということだ。



 パロキセチンをサルへ4週間投与。

雌雄1匹ずつで3群。それぞれ体重1kgあたり4㎎、8㎎、20㎎を与えた。

結果、「4㎎/㎏群で雌雄各1例が投与24日目に突然死亡した」のである。

これは事実であり、実験結果をまとめた論文にもそれが一応は書かれているが、メーカー側がこの結果を問題視することはなかった。

実験は最初の2匹が死亡してしまったので、再現性を確認するため新たに雌雄各1例を追加して投与し、結果を示す表には、この新たに投与した雌雄の例だけが示されているのである。


これは明らかに、実験結果の意図的な操作であり、虚偽である。



 最初の「4㎎/㎏群」では2例中2例が死亡、100%の死亡であるはずだ。浜氏も、「これは完全なルール違反であり、追加をしたとしても、それなら「4例中2例死亡」と公表すべきである」と書いている。

 しかも、死亡した2例は解剖されることもなく、死因の究明もまったく行われていないのだ。



常用量で死亡

 さらに、この実験で深刻なのは、「4㎎/㎏」をヒトに換算した場合、20㎎前後に相当するということである。当然、これは常用量である。

 死亡のほか、

4㎎/㎏群(ヒト換算20㎎/日)では、投与2、3日から4週まで、興奮、神経質、攻撃性、後肢振戦が観察されている。

 8㎎/㎏群(ヒト換算40㎎/日)では、初日から神経質、興奮、後肢振戦(以上2匹とも)、攻撃性(オス)が現れ、初日から3週目まで、2匹とも協調性欠如が現れている。メスには流涎も見られた。

 20㎎/㎏(ヒト換算100㎎㎏/日)では、3日目に投与後から過敏、鎮静、衰弱、振戦、痙攣など重篤な兆候を呈し、オスは投与2時間後に死亡、メスは投与7時間後に切迫屠殺された。

 したがって、この用量でも2例中2例が死亡したことになる。

 剖検では、胃腸粘膜のうっ血が雌雄ともに認められたが、死因に直結する変化はとらえられていない。

 なんといういい加減な実験だろう。


 

身体依存試験の不可解

 依存性の試験においても、不可解なことがなされている。

身体依存の試験において、メーカー側が使った拮抗剤は「フルマゼニル」であるが、これはベンゾジアゼピン受容体拮抗剤なのだ。

 にもかかわらず、「投与期間中にジアゼパム拮抗薬であるフルマゼニルを負荷しても、一般状態に顕著な変化は認められなかったことから、塩酸パロキセチンは身体依存を形成しない」と結論づけているのである。

浜氏

「パロキセチンがベンゾジアゼピン受容体を介して作用するならフルマゼニルで離脱症状が出現しないことをもって依存性なしと判断してよいが、そうならば、パロキセチンはSSRIではなくベンゾジアゼピン剤である。SSRIの依存性はセロトニン拮抗剤で拮抗させなければならにない。それを実施しない限りは「身体依存無し」と結論づけることはできない。」


 しかも、実験において、休薬2期目には、投与中にはなかった攻撃性が4匹中2匹に出ているのだ。



 ところが審査報告書にはこうある。

「依存性試験では、サルを用いて経口投与により身体依存性、交叉依存性および精神依存性試験が実施され、本薬は依存性形成能を有しないものと考えられた」

 これが審査の段階でまかり通ってしまう不可解さ。


 さらに、パロキセチンの小児、青年期うつ病を対象にした臨床試験では、自殺関連有害事象がプラシーボ群に比し、パロキセチン群に有意に多かっただけでなく、6か月めでの再発率は、プラシーボ群が23%に対して、パロキセチン群は36%。これは耐性が出現していることを強く示唆する現象であり、耐性の形成は依存につながるものである。

 一方、離脱症状の出現は、患者からの報告の多くで認められており、イギリス当局も当初離脱症状は0.2%で軽症としていたが、2003年7月、25%に訂正せざるを得ない状況となったのである。


 にもかかわらず、パキシルの添付文書にはいまだに次のような文言がある。

「投与中止により知覚障害、睡眠障害、不安、焦燥、興奮……等があるが、……これまで得られた情報からはこれらの症状は薬物依存によるものではないと考えられている。」

 では、これらの症状はいったい何が原因で起こったものだというのだろう。メーカーは説明する義務がある。



暴かれつつある事実を見よ

実験結果を捻じ曲げ、死亡例なしとし、実験のやり方そのものを捻じ曲げ、依存性はなしとする。そのような経過を経て承認された抗うつ薬パキシルである。承認試験の段階から科学的に、統計的に、方法論的にあやしい薬ということだ。


 さらに新たな研究では、SSRIそのものがセロトニンを枯渇させる可能性があるとする指摘もある。

http://schizophrenia725.blog2.fc2.com/blog-entry-95.html


 軽、中程度のうつに抗うつ薬は効果なし、という結果もある。

 抗うつ薬が有効なのは、5人に1人、という報告もある。


 つまり、承認試験の操作、結果の隠ぺいが、数々の「人体実験」を経て、暴かれつつあるということだ。

日本において発売10年、その間にどれほどの「取り返しのつかない結果」を生みだしてしまったか。しかも、その犠牲が生かされることもないままに、「うつ」といえばほぼイコールでSSRIを処方し、結果として生じた離脱症状さえ認めない精神科医のなんと多いことだろう。

目の前で起こっていることを両の眼を見開いて見てほしい。

SSRIは捏造された神話である。それを謙虚に認める知性と人間性を持ってほしい。