『婦人公論』にはまだ続きがある。

大人の次は子ども、というわけで、次なる特集は「子どものSOSを見逃さないで!」だ。そこには、北海道大学大学院教授傳田健三氏が登場している。

 傳田氏は、小学生の7.8%、中学生の22.8パーセントが抑うつを訴えているという文科省の調査結果を紹介し、その背後にある社会状況などを分析しつつ、二つの治療例を挙げている。


 一つめは、小学5年の女子。学校へ行くのを嫌がり、食欲減退、好きなゲームもしなくなって、イライラと家族に当たり散らす日が10日ほど続いたため、母親が精神科を受診させた。

 医師は、母親の話からアスペルガー症候群とADHDの混合型を疑い、うつ状態にあったためSSRIのフルボキサミンを処方した。

 フルボキサミンだから、おそらくデプロメールかルボックスだろうが、その医薬品添付文書には、どちらも以下のような注意書きがある。

<効能・効果に関連する使用上の注意>

(1)抗うつ剤の投与により、24歳以下の患者で、自殺念慮、自殺

企図のリスクが増加するとの報告があるため、本剤の投与に

あたっては、リスクとベネフィットを考慮すること。

(「その他の注意」の項参照)


 女の子は最初の一週間は25㎎1錠を投与され、二週目からは倍の2錠、そして四週目には3錠と、薬の量が増えていった。

「効果が出てきたからといって、薬の量を減らすと、治療が不完全になって再発しやすく長引いてしまうからです。」

 と、またしてもお決まりの脅迫だ。そして、

「症状が完全によくなってから、さらに6ヵ月間、薬物療法を続け、最後は徐々に量を減らしていって……治療を終了。その後、再発もせず、元気に学校生活を送ることができています。」

 めでたしめでたし、といったいかにも作り物っぽい感じの終わり方がどうも気になる。

 これって、本当の話だろうか?



 もう一つの例は、中学2年の男子。部活のキャプテンに抜擢されたのを期に、最初ははりきっていたものの腹痛を訴えるようになり、登校できなくなってしまった。かかりつけの小児科でははっきりしないので、精神科を紹介されて受診した。

 その精神科医によって、うつ病という診断名がつけられた。最初はSSRIが処方されたが、吐き気が強いためSNRIのミルナシプランに変更。25㎎1錠を1ヵ月と2週間飲まされ、腹痛はなくなったものの薬の量は3倍の75㎎に増量。症状が完全になくなってからもさらに6ヵ月は薬を飲み続けた。

そして、「安定した状態が続いていることを十分に確認してから抗うつ薬を1ヵ月かけて徐々に減らして、最終的には完全にやめてしまっても再発はみられませんでした。」

なんかできすぎ。

ちなみにミルナシプランの添付文書にも、次のような注意書きがある。

〈効能・効果に関連する使用上の注意〉

抗うつ剤の投与により、24歳以下の患者で、自殺念慮、自殺企図のリスクが増加するとの報告があるため、本剤の投与にあたっては、リスクとベネフィットを考慮すること。



 ここに登場した精神科医(これが実際にあった例としての話だが)は、もし自分の子どもが同じような状態になったとき、はたしてこうした抗うつ薬を投与するだろうか?

絶対にしないはずだ。

 添付文書をじっくり読めば、とてもじゃないが、11歳や14歳の子どもに飲ませられる代物ではない。

 私だって(私には子どもはいないが)断固反対する。友人の子どもに対しても、断固反対する。もし、その子に処方されているのを知ったら、夜中でも飛んで行って、すべてトレイに流してやる。



 そもそも、この例は、本当にあったケースなのだろうか。こんな絵に描いたような回復の仕方があるのだろうか。

まるで抗生物質を投与して、細菌をやっつけるがごとくの例である。

しかし、これを読んだ人(母親)は、きっと「抗うつ薬って、すごい!」と思うだろう。そして、自分の子どもがちょっとうつ気味だと感じたら、すぐに精神科を受診させ、抗うつ薬を飲ませることだろう。それがどんなに恐ろしい薬物か、添付文書に書かれている副作用の説明は一切されないまま、盲信し、せっせと子どもに薬を飲ませ続けることだろう。

 そして、その子どもは一生、薬の世話にならなければ生きていけないカラダや脳になってしまうかもしれない。

 その責任はどこにある? 飲ませ続けた母親か? それとも担当の精神科医か? あるいはこの記事を監修した(おそらく)傳田氏か? 『婦人公論』か? それとも国・厚生労働省か? 製薬会社か?

 いずれにしろ、子どもの人生が台無しにされたことに変わりはない。

(ちなみに、このうつ特集の最後には、精神科のある病院、施設、心療内科、メンタルクリニックの広告が3ページにわたって掲載されている。だから、こういう記事になったわけか。)

 

シミを消すにはどうすればいいか、冷え性対策は何が一番か、そんな記事なら、多少の誇張、医学的曖昧さがあっても許されるかもしれない。しかし、これは女性誌といえども、いや母親を対象とした女性誌だからこそ、絶対に看過することのできない記事だ。美容やファッションや芸能人の内輪話とはわけが違うのである。


 子どもに向精神薬を飲ませ続けたら、その国はきっと滅びてしまう。