施設に入って
もう筆を持てなくなった母と
もっと話をしておけばよかった。

そう思いながら
母の日本画の絵具を
黙々と整理していた。

同じ絵具がビニール袋に入っていたり
小瓶に入っていたり。

「何で??」

「お母さん、
 整理整頓できんかったんかなぁ??」

日本画の絵具は量り売りで
買う時は小さなビニール袋に入れて
もらっていたよう。

小瓶に入った絵具には
色名、粗さ、母の名前が
書かれている。

母が通っていた教室では
自分の道具を置いておけたことを考えると、
「袋の絵具を
 小瓶に移し替えて持って行ってたのかぁ!」と
途中で気がついた。

小瓶のラベルは
パソコンで印字されたものだった。

「もしかして小瓶のラベルは
 お父さんが作ってあげてたんかなぁ??」

亡くなった父は
60歳を過ぎてからパソコンを始めて
二科会 デザイン部の作品も
パソコンで作っていた。

とにかく手先が器用な人で、
何でもサッと形にしてくれた。

母の日本画のパネルも
父がサッと作ってあげていたんじゃないかと。

二人仲良く
協力してやっていたんだろうなぁ、と。




母が書き残した資料を見ていると、
どうも最初に24色の
水干絵具を買っていたらしい。

箱に入っている
それらしきものを見つけたけれど
3本足りない。

せっかくなら
私も使いたいと
膨大な小瓶の中から発掘することに。



メーカのWebサイトを見ながら
何とか23色まで見つけたけれど、
「焦茶」だけがどうしても見つからない。

でもなぜか
水干絵具の「群青」だけは
2本ある。

母はやはり
整理整頓が苦手だったのかも??


こ、焦茶、どこー??


「焦茶だけ買いに行こうかなぁ??
 筆も買いたいし、、、」

翌日
母が通っていた丹青堂と言う
書道や日本画の道具を扱うお店に行くことに。




私がお店に着いたのは
ちょうどお昼過ぎ。

お店には
高齢の女性のお客さまで混雑していた。

焦茶の絵具を単品で買いたいことを伝えると、
本店でもセットでした販売していないそうで。

これはメーカーのオンラインショップで
買うしかなさそう。

筆のことも全くわからなかったから
店主らしき人に
相談にものってもらった。

毛の質、長さ、太さで
全然違うらしい。

「描くものによって違うから
 習っている先生に
 相談するのが一番ええよ。」

私は店内をキョロキョロ。




しばらくするとお店が空いて
店主らしき人が
「ラッシュが終わったかな?
 お昼に行ってくるわ。」と
お店を出て行った。

なるほど、
お教室帰りの方たちで
お店が混むタイミングだったのか。

母もこうやって
教室帰りに寄っていたんだろうな。

私はとりあえず
面相筆を1本、彩色筆を2本買った。

何と言うか
この店で買うことに意味があるような気がした。


絵具がいっぱい!


胡粉もいっぱい種類があるんだな。


今母の絵具を全部持って帰っても
きっと私は使い切れない。

でもいつか持って帰りたい。

今回は持ち帰らない
ビニール袋に入った絵具は
1箇所にまとめて、
小瓶に入った絵具は
とりあえず箱に入れた。




「実家に
 どの色があるか知っておいた方がいいかな?」

そう思って小瓶に入った絵具を
2つのメーカーの色見本帳を見ながら
チェックし始めたら大変なことになった。

12月から日本画を始めたばかりで
色名もよくわかっていない。

「えーっと、
 天然岩絵具 紅玉末の10番、、、」

「えーっと、
 新岩絵具 小豆茶の8番、、、」

3時間黙々と続けてた。

色の名前は面白い。




でも2つの色見本帳にはない絵具もあって、
どうも別のメーカーの絵具もあるようで。

箱から全部取り出して、
色が近そうなものを並べたら
箱のフタがしまった。




持ち帰った絵具も
同じことをしないといけないと思うと
気が遠くなる。

実家の壁には
母の作品がたくさんかけてある。

姉が季節に合ったものに
かけぁえてくれている。

どの色の絵具を使ったのか?

前よりもちょっとだけ
わかる気がした。

そろそろ醍醐の桜の絵がいいかな。