卒業式シーズンですね。
私は子どもの頃、
自分の卒業式で泣いたことがありません。
周りの友達がどうして泣くのか
わかりませんでした。
学校がそれほど好きじゃなかったから
かもしれません。
ところが教員になってみると
自分の担当した学年でなくても、
卒業式は毎年感動します。
この心境の変化たるや。
実のところ、6年生担任だと
スムーズに進行できるかひやひやしていて
逆に感動どころじゃなかったりします。
大きく心が動くのは、いつも式後に教室に戻ってから。
ある年、6年生を担任したときのこと。
私は毎月何冊もの教員向け雑誌を読んでいました。
3月号のテーマは「卒業・進級」。
そこで「かっこいい別れの言葉」を見つけました。
そして、それを実行することにしたのです。
式が無事に終わり、子どもと保護者が教室にやってきました。
泣いている子もいます。
照れたように笑っている子もいます。
ここで最後の学活をして、本当に6年生としての授業は終わりです。
私は、あの「かっこいい別れの言葉」を実行することにしました。
まずは、全員に飴を配って食べるように言いました。
子どもたちは、思わぬおやつに喜びながら
口を動かしています。
そこで私はこう話しました。
「この飴をなめている間だけは、
このクラスの2年間のことを思い出して
そして飴がなくなったら
もうこのクラスのことを忘れて
そこからは、未来に目を向けてください」
決まった…!
と思いました。
しかし、そう話した途端
ある男子が飴をペッと吐き出しました。
「いやだ!絶対にこのクラスを忘れない!」
彼は、そう言ったのです。
5年生の途中で転校してきた、彼。
両親が離婚したときには不安定になって
学校を飛び出したこともありました。
6年生になってから歴史の授業が大好きになり
「先生、ぼく歴史オタクになりそうです」
そんなことを言っていた、彼。
将来はシェフになりたいという夢を持ち、
「先生も店に招待するからね」
そう笑っていた、彼。
普段は大人しくて穏やかで
大きな声など出さない子なのに。
すると、子どもたちが次々と飴を吐き出していきました。
「忘れたくない!」
「絶対に忘れない!」
そう言いながら。
おかしいなあ
かっこよく、さらっと別れるつもりだったのに
こんな予定じゃなかったのに
涙がぼろぼろとあふれてきました。
泣かないで、別れるつもりだったのに
子どもたちも、泣き始めました。
それからはもう、何を話したのか覚えていません。
かっこよく別れる計画、頓挫・・・
こうやって書いていても
鼻の奥がつーんとなってきます。
こんな感動を味わうことのできる仕事に就けて、
本当に幸せだったな。
そんなことをしみじみ思わせてくれる、卒業式の思い出です。



