「灯台からの響き」宮本輝 2020年
あらすじ
中華そば店を営む康平はある日
亡き妻宛てに30年前に届いたハガキを見つけた。
そこに描かれていたのは
海岸線と灯台のように見える線画。
妻はなぜそれをとっておいたのか。
そして、差出人との関係は…?
亡き妻の知られざる過去を追い夫は旅に出る。



謎の灯台のような線画。
何もヒントがなく
思い当たりそうな灯台を次々訪れていく。
そして、亡き妻の過去にたどり着く。
ハガキを取っておいた理由。
夫にも話さなかった理由も。
差出人との関係には妻の優しさが溢れていた。

妻に隠された秘密?
ドキドキしながらページをめくっていった。
最愛の妻を亡くし
店を存続する気力も失われていた康平が
旅をするうちに少しずつ心がほぐれていく様子が温かかった。

いくつもの灯台を訪れていくうち
康平は灯台を前にして…
「動かず、語らず、感情を表さず
海を行く人々の生死を見つめてきた灯台が、
そのとき康平には
何物にも動じないひとりの人間そのものに
見えていた。
空の色と霧の色によって
灯台はみずからの色を
消してしまったかに見えるが
びくともせずに
日が落ちると点灯して航路を照らし続ける。
多くの労苦に耐えて生きる
無名の人間そのものではないか。」
(一部抜粋)

偉大な灯台。
そんな灯台のようにどっしり地に足をつけて
歩みたい。
ささやかな幸福の数々。
温かさに溢れた物語だった。