絶対音感と言葉3 絶対音感ホルダーの苦悩 | ことのはを、ひろいに。

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絶対音感のお話、パート3です!
>絶対音感と言葉1
>絶対音感と言葉2

私は楽器の音が「ドレミファソラシド」に聞こえます。

この「ドレミファソラシド」はイタリア語です。
(日本語の音名は、「ハニホヘトイロハ」。)
この音名に聞こえるのは、ピアノを始めた4歳くらいから小学生までの間に散々イタリア音名で音をインプットしていた結果、
それぞれの音とイタリア音名の結びつきが強くなったからだと思います。

この刺激の繰り返しにより、脳が「この情報は重要らしい」と判断し、
音のラベリング機能(この場合は、音と音名を結びつける能力)がオンになった
と考えられます。

人の脳には、いろいろな機能が育つ土壌があります。
周りの環境からの刺激が「種」となって蒔かれ、
その刺激が一定以上繰り返されることによって機能が開花する=オンになると考えられています。

ある機能がオンになるかどうかは、だいたい12才くらいまでの刺激で決まると言われています。
一般的に「臨界期」(the critical period)と呼ばれているものです。
ある言語の「ネイティブ」になることや、絶対音感を身につけるには、
この時期までに一定量(かなり多く)の刺激(インプット+アウトプット)が必要ということになります。

でも、「もう大人だから絶対音感も外国語も無理なのか・・・」とガッカリすることはありません。
外国語に関しては、私は日本人が「英語の完璧なネイティブ」になる必要はないと思っていますし、
音楽をやるには絶対音感よりも相対音感を持っていた方が良いと思います。


絶対音感には、これまでに悩まされたことが多々あります。

周りの音が全て音名に聞こえるから煩わしい、ということはほとんどありません。
聞こうと思えば聞けますが、みなさんが雑踏の中で他人の会話をいちいち意味を理解していないのと同じで、
音が鳴っていても気にせずスルーできます。
(特に私は楽器以外の音は音名で聞こえにくいので)

悩みは、音楽をする時にあります。
それは、音楽の世界を1つのフィルターでしか感じられなくなってしまうということです。

絶対音感の「絶対」とは、世界共通で常に変わらない「絶対」ではなく、とても限られた世界での話です。

世界には、西洋のピアノの音律とは違った様々な音律が存在していたり、
また、音程を重視しない音楽も存在します。

そういった音楽を"絶対音感フィルター"を通して聞くと、
「音が外れている」「音程が悪い」
というように聞こえてしまったりするのです。

「太陽は赤色で描くものだ」という頭になった人が、
赤以外の色で描かれた太陽を見て違和感を感じるような感じかな・・

これでは、多様な音楽のそれぞれの良さや価値観を純粋に受け入れるのが難しい、と私は感じています。

私は幸い様々な音楽との出会いがあり、
「音程はどの音楽でも"絶対"なわけではないんだ」と気づくことができ、

意識的に他種の音楽の価値観を受け入れるようになれました。
しかし、もし絶対音感がなかったら、それをもっと素直に受け入れることができていただろうと思います。
これが、私が感じる1つ目の弊害。


もっと大きな問題は、チューニングが違う時の演奏が非常に困難ということです。

一般的に、クラシック音楽ではA(ラ)の音を440~442Hz(ヘルツ)に合わせます。
ほとんどの絶対音感の人の頭の中も、このチューニングの時の音が入っていると思います。

では、チューニングの基準が違ったらどうなるでしょう?

例えば、バロック音楽を演奏するグループはAを415Hzにチューニングするところが多いです。
また、クラシック音楽のオーケストラの中には、半音高いくらいのチューニングのところもあるそうです。
そんな中で演奏することになったら・・・

楽譜には「ファ」と書いてあるのに、「ミ」の音で歌わなくてはならない。
これはもう、非常に混乱するのです。

日本語の50音を一個ズラして読むことを想像してみてください。

「あした、はれたらいいな」
     
「いすち、ひろちりううに」


・・・どうでしょう?
結構難しいですよね(笑)。
私の場合、この感覚とほぼ同じです。

頭の中で外国語を翻訳しながら話している、そんな感じにも近いかもしれません。


相対音感であれば、こんな混乱をすることなく多様な音楽に対応できるのだろうな~と思います。


そんなわけでしばらく440以外のチューニングで自分が演奏することはかなり難しいと思っていましたが、
最近はだいぶ絶対音感スイッチのオンオフができるようになってきて、
415でも違和感なく演奏できるようになってきました。
これも慣れなのですね~



そんなわけで(どんなわけかは聞かないで!)、
絶対音感のお話はこれにてひとまず閉幕します~