診察が終わって。
医師の矢吹壮一(やぶきそういち)、
「祐里ちゃんの、旦那さんか~~。確か、Webデザイナー。…で…???…あのお嬢さんが、芙美花さん。」
看護師の九季紘奈(くきひろな)、ニッコリと。
「えぇ。はい。」
矢吹、
「思い出すね~~。祐里ちゃんの看護師姿。かかかかか。」
会計を済ませて、病院のエントランスで。
耀司、
「かかかかか。それにしても、早い。あっと言う間に。」
芙美花も、
「うんうんうん。」
「師長だよね~~。」
「うん。宮さんだよね~~。」
薬局で薬も受け取って、耀司、
「師長、出るかな~~。」
スマホの画面でタップ。
「二晩連続での夜勤って言ってたから。おっと出た。もしもし。耀司です。師長…???」
スマホから宮前の声。
「あん、耀司~~。芙美花の具合。」
すぐさま耀司、
「あ、はい。今、薬局で処方された薬もらって、これから家に帰るところです。」
「あ~~、そう~~。じゃ、芙美花、受診出来たのね~~。」
耀司、隣で歩くニット帽子にダウンジャケット、しっかりとマスクをしての芙美花を見ながら、
「えぇ。お蔭様で。」
そして、
「いやいや、何々、受付したら10分もしないで診察。診察室に入ったと思ったら、先生と看護師さんから立ってお辞儀までされてびっくりしました。高井戸君の旦那様。そしてお嬢さんって。」
「はははは。」
宮前の声。
「帰る時に受付に、高井戸祐里子の旦那と娘が来るからお願い。娘がインフルで。昨日から熱が出て学校休んで、今日あたり受診に来ると思うからって。それでだね~~。多分、先生は矢吹先生だと思うから~~。」
耀司、スマホに、
「俺と、そんなに変わらない年齢…???」
「バカね~~。50代の先生よ~~。」
「うそ。俺より年上…???…そんな風には。」
「ははは。まぁねぇ~~。…でも、安心した。芙美花、受診出来て~~。…でも、まだ熱は…。」
「あ、はい。」
ふたり、車のドアを。
「まだ、熱は37度。」
「あ、そぅ~~。とにかく、帰ったら温かくして、休むのよ~~。」
耀司、助手席の芙美花にスマホを。
芙美花、
「もしもし、宮さん。」
その声に宮前、
「あん。しっかりと風邪声ねぇ~~~。もぅ~~。大丈夫なの~~???」
そんな宮前の声に芙美花、上体を屈めるように、
「意識はあるけど、まだだるい。」
「当然よ~~。インフルエンザ。…それに、芙美花、あなた、生まれてこの方、病気のひとつもしてないから~~。病気に体が慣れてないもの~~。」
芙美花、
「うん。…だから、悔しい。」
その、「だから、悔しい。」の声に宮前、
「うんうん。だよね~~。おかあさんも、病気で勤務、休んだ事、なかったから~~。」
芙美花、コクリと、
「うん。」
そして芙美花、
「あのね、宮さん。」
その声に宮前、
「うん…???」
既に車は走っている。
「夢で、おかあさん、何度も見た。」
宮前の声、
「うん。そっか。」
「高校受験合格した時の事。そして、入学式の事。」
「うんうん。」
「いっぱい、おかあさん、出て来た。」
「うんうん。」
「そしたらね。」
芙美花、そこから声が、枯れた声でも、涙声に。
すぐさま耀司、芙美花を見て、
「うん…???」
芙美花、鼻水を啜る音。
「夢の中でね。おかあさんが、いなくなって…。そしたら…、今度はピアノの音がして…。…そしたら、睦美さんがピアノ、弾いてて。グス。私が、クラリネット、吹いてて。」
宮前、
「……。」
運転しながら耀司、
「芙美花…。」
また、鼻水を啜る音。芙美花の頬が僅かに光る。
涙声で話す芙美花。
「演奏して、終わったら、みんなが拍手してくれて。」
宮前、
「うんうん。」
「みんなが拍手してくれて、バセットが、その中から私に抱き着いて来て。」
宮前、また、
「うんうん。」
芙美花、涙声のままで、掠れながら、
「宮さん。…おかあさん、欲しい。…欲しいよ~~。」
上体を屈ませるように芙美花。
「おかあさん。おかあさん。欲しい。…睦美さんと、一緒にいたい。…睦美さん。ママでいいから、欲しいよ~~。」
宮前、いつの間にか目尻から零れる涙。
「うんうん。うんうん。…そうだね~~。」
芙美花、シートベルトを絞めながらも上体は前屈みに。
そして、手袋をしてスマホを持ちながら、マスクの下で、
「う~~~~。」
耀司、芙美花の手からスマホを。
そして、スピーカーにしてフォルダーに。
「師長。」
スマホから、
「うん…???…耀司。」
その声に耀司、
「はい。」
「あなた。」
運転しながら耀司、
「はい。分かってます。昨日も睦美さん、眞鍋さん。」
「うん。」
「夕食作ってくれて。今日も、レッスン終わったら、ウチに。」
また宮前、
「うん。」
「俺。」
耀司。
「睦美さんに。…これからもよろしくお願いしますって。」
「うん。」
「睦美さんも、これからもよろしくお願いしますって。」
宮前、
「……。」
耀司、
「俺。睦美さんと、結婚します。」
芙美花、父を見て。
宮前の声が、
「そう。…うん。分かった。」
芙美花、
「おとうさん。」
耀司、芙美花に、
「おとうさん、再婚するわ。」

ママでいい…。 vol,315. 芙美花。「おかあさん。おかあさん。欲しい。…睦美さんと、一緒にいたい。」
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